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トンネルの空洞に肉体が爆ぜる音が響いた。急ブレーキと並行に車内には慣性の法則が働いたが、…
煙を吐けば君を思い出してしまう。 ウイスキーを見つめている。グラスの中身が何であろうと、…
「再会をしてしまって、ごめんね」 出し抜けな冗談かと思ったけれど、彼の表情にそのような綻…
恋煩いが祟って、蕁麻疹ができた。左の脹ら脛にできた蕁麻疹は僕の思考を削ぎ落とし(痒い!)…
涙の種類だけ、部屋には花がある。僕は人が死んでも泣かないが、恋や愛が絡むと駄目なタイプだ…
飛行機は知らない空港に僕を連れ立った。 「……失礼?」 キャビンアテンダントは僕をまるで…
神様はビッグバンを起こしたが、余りのエネルギーで爆発が霧散してしまった。5つの宇宙。その中で一番出来の悪い宇宙を、神様は目にかけることにした。他の宇宙は初めから文明があった(ある宇宙ではナメクジが、ある宇宙ではハシブトカラスがその担い手になった)けれども、出来の悪い宇宙には何もなかったからだ。 神様はまずくしゃみをして、天の川を作った。それがたまたま上手くいったので、ビューポイントに展望台を作った。分かりやすく丸い椅子にした。喉が渇いたら困るので、水溜まりをつくった。(神様
飼っていた兎が卵を産んだことがある。それが魂そのものみたいに兎は死んでしまって、僕は訳も…
「僕は結局、添え物に過ぎないんだ」 生姜くんがネガティブなのはしょうがないことだけど、そ…
大の字で横になる。疲れたよ、パトラッシュ。ラディカルに呟き続ける。 疲れたよ、パトラッシ…
片腕に喰わせた薔薇が悪さをしている。薔薇の花弁は片腕に自我を、棘は理性を、葉脈は欲望を教…
幸せだな、と思った。その瞬間、世界は地獄に立ち替わった。上へ上へと登っていたジェットコー…
はじめにインコは、ヒトに言葉を教えた。 「光あれ」 「いぃあいぃあえ」 インコは思わず鼻…
僕は石膏でカチカチに固められて、メリーゴーランドの一部になった。石膏に固められてから分かったんだけど、石膏に固められてしまうと言葉のその輪郭がぼやけ(かちかちなのに!)、ある種のシンパシーだけで会話ができる。僕は石膏で固められた白馬に、それを教えてもらった。 「でも、悪くはないんだよ」 (シンパシーの世界では、君付けで呼ぶことがが唯一の戒律だった)白馬君は、まるで自分に言い聞かせるようにそう繰返した。悪くはないんだよ、メリーゴーランドの上で嗚咽する人も慟哭する人もいないか