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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2024年10月の記事一覧

トンネル。

トンネルの空洞に肉体が爆ぜる音が響いた。急ブレーキと並行に車内には慣性の法則が働いたが、…

If.

煙を吐けば君を思い出してしまう。 ウイスキーを見つめている。グラスの中身が何であろうと、…

Rendezvous.

「再会をしてしまって、ごめんね」 出し抜けな冗談かと思ったけれど、彼の表情にそのような綻…

疹恋。

恋煩いが祟って、蕁麻疹ができた。左の脹ら脛にできた蕁麻疹は僕の思考を削ぎ落とし(痒い!)…

映し鏡。

涙の種類だけ、部屋には花がある。僕は人が死んでも泣かないが、恋や愛が絡むと駄目なタイプだ…

作戦No.

飛行機は知らない空港に僕を連れ立った。 「……失礼?」 キャビンアテンダントは僕をまるで…

流転。

神様はビッグバンを起こしたが、余りのエネルギーで爆発が霧散してしまった。5つの宇宙。その中で一番出来の悪い宇宙を、神様は目にかけることにした。他の宇宙は初めから文明があった(ある宇宙ではナメクジが、ある宇宙ではハシブトカラスがその担い手になった)けれども、出来の悪い宇宙には何もなかったからだ。 神様はまずくしゃみをして、天の川を作った。それがたまたま上手くいったので、ビューポイントに展望台を作った。分かりやすく丸い椅子にした。喉が渇いたら困るので、水溜まりをつくった。(神様

金色兎。

飼っていた兎が卵を産んだことがある。それが魂そのものみたいに兎は死んでしまって、僕は訳も…

Ginger Boy.

「僕は結局、添え物に過ぎないんだ」 生姜くんがネガティブなのはしょうがないことだけど、そ…

来世はエイでブギウギ。

大の字で横になる。疲れたよ、パトラッシュ。ラディカルに呟き続ける。 疲れたよ、パトラッシ…

腕。

片腕に喰わせた薔薇が悪さをしている。薔薇の花弁は片腕に自我を、棘は理性を、葉脈は欲望を教…

パレード。

幸せだな、と思った。その瞬間、世界は地獄に立ち替わった。上へ上へと登っていたジェットコー…

ひかりあれ。

はじめにインコは、ヒトに言葉を教えた。 「光あれ」 「いぃあいぃあえ」 インコは思わず鼻…

メリーゴーランド。

僕は石膏でカチカチに固められて、メリーゴーランドの一部になった。石膏に固められてから分かったんだけど、石膏に固められてしまうと言葉のその輪郭がぼやけ(かちかちなのに!)、ある種のシンパシーだけで会話ができる。僕は石膏で固められた白馬に、それを教えてもらった。 「でも、悪くはないんだよ」 (シンパシーの世界では、君付けで呼ぶことがが唯一の戒律だった)白馬君は、まるで自分に言い聞かせるようにそう繰返した。悪くはないんだよ、メリーゴーランドの上で嗚咽する人も慟哭する人もいないか