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作戦No.

飛行機は知らない空港に僕を連れ立った。

「……失礼?」

キャビンアテンダントは僕をまるで場違いな死神を見るような目で見下し、無視を貫徹した。僕は諦めて文庫本に視線を戻したが、内容が脳に染み込むことはなかった。僕はそれをトマス・ピンチョンのせいにしようとも思ったたけど、明らかに僕に責任があった。僕は辟易をしながら、眼を瞑った。その直前に見た窓際の乗客は、対岸の戦争を覗くように外を凝視していた。

パイロットは自己陶酔的な弁舌を振うことさえなく、山に衝突をした。飛行機は大破して、僕以外全員が命を落とした。パイロットの意図は分からない。自死にしては壮大すぎる実行だし、大義があればそれを表明せざるを得ないのが人間である。あるいは、標的が僕だったのかも知れない。しかし、怪獣がその程度じゃ死なないことは周知の事実だし、やはり真相は闇の中だ。僕は付近の肉を食らいつくし、尿で山火事を消した。

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