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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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2024年6月の記事一覧

ノイズ・タイピング。

「すみません」  イヤフォンを外して振り向くと、見知らぬ男性が不服そうに立っていた。半袖…

カプレーゼ・ジャッジ。

「今日は、カプレーゼを作って置いて欲しいんだ」 彼が手料理のオーダーをしてくるのは初めて…

熊仮託。

木彫熊が部屋に来てから、僕の生活はとても規則正しくなった。 木彫熊は僕が実際に購入する前…

万色の空白。

「何も思いつかなかったら、その空白を描けばいいのさ」 先生は確かにそう仰ったが、私の空白…

黄泉。

「正直言ってさ、ここはまさに地獄だよ」 僕はその言葉の意味を推し測るべく、黄泉の国を見渡…

Rooted Bouquet.

彼に贈られたスターチスのドライフラワーは、いつまでも枯れなかった。 私が部屋を出ようとす…

クッキーイニシエーション。

チョコレートクッキーを君のために作った。でも、君はいなくなってしまった。あるいは立ち去ったのが僕の方だとしても、君がいなくなったという現象は変わらない。君は消えてしまった。チョコレートクッキーに背を向けて。それはどんな犯罪よりも悪質で、倫理的な謀反と言わざるを得ない。 僕はチョコレートクッキーを元に戻さなくてはならなかった。遺骨を潰すみたいに、目一杯の力を込めてクッキーを砕いた。死に惑う声が苦しかった! 形を崩すには煮立てるしかない。牛乳をクッキーの残骸に浸して、憎しみを込

テトラポット。

君はテトラポットのひとつになった。でも、頭は死んじゃいない。君は意志を持ったテトラポッド…

夢見物語。

まみは他人の夢に侵入することができた。 「昨日、まみが夢に出てきたよ」 あぁ残念、とまみ…

世界δ。

眠りは別世界への入り口だった。世界Aでくたくたになって眠りにつけば、世界Bへ。世界Bのこ…

晴夫。

晴夫は常識を超えた晴れ男だった。彼が受民票を移した土地は、6月でもたった一滴の雨も降らな…

ネガティブアテンダー。

彼に手筈を整えられた人は、文句が言えないくらいに私に適合した人物だった。 「結論から言う…

問答N.o.

noQ.人は孤独か? A.孤独な領域もあれば、孤独ではない領域もあるし、両方が混ざりあっている…

アット・アーバン。

「都会は人を駄目にするよ」 確信のたぎる彼の眼差しの先には、下肢を伸ばして尿をする鹿がいる。 「鳩も鹿も、都会に染まると酷いものさ。野生を忘れ、ただあぶれたゴミを貪ることしかできなくなる」 彼は小石を拾い上げて、鹿の尻にぶん投げた。鹿はびっくりして逃げ惑おうとしたが、目の前の柵に思い切りぶつかってしまった。 「都会に行く動物は、敗者だ。バイオームから除外された熊は、都会で良い気になっているだけで、本来の場所で歯が立たなくなっただけだ。都会なんて、そんな場所に過ぎない。