Rooted Bouquet.
彼に贈られたスターチスのドライフラワーは、いつまでも枯れなかった。
私が部屋を出ようとすると、彼は首尾良く花瓶からスターチスを抜き取った。
「折角だから、あげるよ」
彼の手慣れた素振りは暗喩的だったけど、その時私はふわふわしていた。初夏に舞うポプラの綿毛みたいに。彼はささやかなブーケを設えて、小さな酒瓶(糊の効いたシャツみたいにパリッと乾いていた)と共にそれを紙袋に入れた。
「ドライフラワーは、手が掛からないから良いんだ」
スターチスは酒瓶の底を抜け、観念的に私の部屋に根ざした。だから、それを捨てることもできない。でも、私はそれを見る度に(手狭な部屋のどこからでもそのブーケは視界に入った)、否応がなく彼の長く細い指を思い出す。深爪で私の肌をなぞる強さが、反芻され疼く。
「綺麗だね」
そのブーケは、私の部屋を訪れる全ての人の視線を奪う。