夢見物語。
まみは他人の夢に侵入することができた。
「昨日、まみが夢に出てきたよ」
あぁ残念、とまみは思う。まみが夢に登場したことを口外すれば、まみは二度とはその人の夢に赴かない。興味がほとほと冷めてしまうのだ。まみは、夢にまみが登場することで生じる心の揺らぎが好きだった。まみはその揺らぎをガレットにしっとりと塗り込んで、朝食として食べることが好きだった。
自分が夢を最後に見たのはいつだろう? まみは寝る前にふと思った。物心がついてから他人の夢に入ってばっかりで、そのことを考えすらしなかった。あるいは、自分の夢に侵入をしてきた人が、本当にまみを思う人なのかもしれない。まみは自分の夢を見ようと試みたが、それを嘲笑うように眼は冴えていき、他人の夢を思った瞬間にそれは叶った。まみはむしゃくしゃして、夢の中でとても淫らに振る舞った。
「ねぇ。こんな幸せ、良いのかな?」
これは夢だ、とまみは思った。これは私自身の夢だ。
「誰の許可が、あなたは欲しいの?」
「世界でたった一人の、マイ・スウィート・マミの」
しかし、それは現実だった! まみはなんて幸せなんだろう!
その日以来、まみは他人の夢に侵入することをやめたが、死ぬまで自分の夢を見ることはなかった。