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晴夫。

晴夫は常識を超えた晴れ男だった。彼が受民票を移した土地は、6月でもたった一滴の雨も降らなくて、その干害の為の訴訟はついに晴夫が敗訴をした。晴夫は法規国家が認めた晴れ男だった。

晴夫の個人情報はネット社会のジャングルに全て共有され、心休まる瞬間はなかった。旅行先ではありがたがられたが、農家からは忌み嫌われた。晴夫が居た堪れなくなる頃合を見計らって、陽光を希求する自治体から要求があって、晴夫はそこに居を移した。晴夫は誰のための人生なのか、いまいちよく分からなくなっていった。

「……入ってくれませんか」

日傘の片側をどんなに開けても、それを言葉にしても、入ってくれる人は誰一人いなかった。晴夫が望んだ相合傘は叶わないのに、雨だけはやはり一度も降らなかった。

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