アット・アーバン。
「都会は人を駄目にするよ」
確信のたぎる彼の眼差しの先には、下肢を伸ばして尿をする鹿がいる。
「鳩も鹿も、都会に染まると酷いものさ。野生を忘れ、ただあぶれたゴミを貪ることしかできなくなる」
彼は小石を拾い上げて、鹿の尻にぶん投げた。鹿はびっくりして逃げ惑おうとしたが、目の前の柵に思い切りぶつかってしまった。
「都会に行く動物は、敗者だ。バイオームから除外された熊は、都会で良い気になっているだけで、本来の場所で歯が立たなくなっただけだ。都会なんて、そんな場所に過ぎない。浮ついた気持ちを慰撫し合うだけの、社会的な風俗に過ぎない」
僕は何かに憤るということがもうなくなっていたから、彼の視座を面白く思っていた。都会とか田舎とか、そういう二分論が僕にはしっくり来ない。物事は平面ではなく、極めて多面的であり、なおかつ濃淡がある。ベクトルでは物足りない。そこにほ強弱が、変数として存在しなくてはならない(、と感じている)
「……敗者にも敗者ではない部分があるし、都会にも勝者の側面をもつ人がいる」
鹿は遮二無二に立ち上がったが、また柵に激突をした。少なくとも都会の鹿は、自分の命を粗末にしているみたいだ。