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ただ趣くまま

昼間に借りた
絵本を読んで
パタンと閉じる。



そして
私は気が付いてしまう。



私は
何かを得て何かを覚えるたびに
何かを失い何かを手放していることを。




言葉にして
色にして
音にして

大人の私は
感じたことを表現する。



言葉も
色も
音も
なにも知らない
なににもとらわれない
子どもだった頃の私は

ただ微笑み
ただ涙する。



あの頃の
まっさらな感受性は
もう戻らないのだと
悟ってしまった。

気が付かないうちに
失い手放してしまった。



真夜中の大人の私は
必死に探し求めるように
子どもの思い出を呼び起こす。

その行為すらも
むなしくあわれだと感じる。




社会で生きるには
大人にならざるを得なかった。

言葉にし
色にし
音にして

人と心を通わせる必要があった。



納得はしているけど

大切なものには
ちゃんと
お別れをしたかった。

そんな言葉で
頭がいっぱいになる。




はあっと
大きくため息。



うん。




私は私が愛おしいのだ。

今の私も
子どもの私も。



私にはもう
あの頃の私はいない。



だけど
大人になっても
私は大切にしていきたい。

言葉にならないものを。
色にできないものを。
音にかえられないものを。




なにかに例えなくていい。
なにかを当てはめなくていい。

ただ趣くままに
心を震わせるときを
大切にしていきたい。