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戯曲(たわみ)ノベルの創作ノート

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主に〜10分程度の創作台本を並べています。
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記事一覧

始まりの日に戻れたら?【ショートショート】

始まりの日に戻れたら?【ショートショート】

もしも、始まりの日に戻れたら何をするか。
その試みは無駄だと止めるだろうか。
少しでもうまくいくように託すだろうか。
それとも--。

結末結論から言うと、私は失敗した。
タイムマシンを作ることはできた。
しかしながら、時空連続体を維持しながらソレを運用する手段を見つけ出すことはできず、あえなく、その発明は凍結された。
秘密裏の計画続行が懸念された故に、幾星霜、寝食を共にした研究仲間とも、散り散り

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ひと会話

ひと会話

廃墟の庭。少年と少女。

「ここ、君の場所?」
「私の……じゃないけど、私以外がいるのはじめて見た」
「なら、君のだ。お邪魔します」

「遠くから来たの?」
「遠く、ってほどじゃないかな。君は?」
「私?私も……遠くってほどじゃないよ」
「そう。なら、ご近所さんだ」

「なにか、話を聞かせてよ」
「んー、じゃあ……この塀の向こうの通りの向こうの丘の向こうの森の向こうの、山の向こうの街の向こうの海の

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高校演劇部合宿のレクリエーション用台本

高校演劇部合宿のレクリエーション用台本

そういうお題をお題箱にもらったので。
今(6/7 16:19)から30分で書きます。

それでは『高校演劇部の合宿。夜のレクリエーション。』どうぞ。

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高校演劇部の合宿。夜のレクリエーション。

先輩 いや、企画の趣旨分かってる?これインプロなんだから、
   アドリブが見たいんだよ皆。台本持ち込んじゃダメでしょ

部員A すいませんでした……
部員B でも先輩、こんな

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短編『窓際の姫君』

短編『窓際の姫君』

とある大学の、とある部室。

「……なるほど。この“おさげの子”には、実在するモデルがいるの?」

思わず『“姫君”です』と言い返しそうになったが、ぐっとこらえる。

「そうです。ただ、実際には話したこともないので、モデルと言っていいのか……」

「ふんふん。じゃあ、これは一種の私小説なんだな」

「そう……ですね。いや、やりとりは全部脚色っていうか、創作なんですけど……」

「面白い」
「……え

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金属質のやさしさ

ぴろぴろぴろろ。
ぴぴぴぴろろろ。

頭の中で、色が弾ける。光が心を打ち付けて、0時で止まった時計の針が、つむじをまっすぐに抜けていく。

音、に反応して生きている。
光、に反応して生きている。

それ以上はないし、それ以下にはならない。
反応すべき刺激の数々を、美しさとして感じとれる私は幸福だ。

たたたたたたた。
たたたたたたた‥

しん、と街から光が消える。
ふっ、と静寂が訪れる。

秩序が

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【小説】ゲット・ザ・シュガーライフ(1)

【小説】ゲット・ザ・シュガーライフ(1)

よくよく見てみるとかわいいな、こいつ。
塗装が剥げたDSの中で、たぬきの店主が甲斐甲斐しく歩き回っている。その顔は、少し同居人に似ている。

「たぬきち顔だ」
「え?」

側で寝転がっていた彼が起き上がる。聞き取れなかったみたいだけど、無視してゲームを続ける。

「……今日は何もないんだっけ?」

疑問形は、珍しい。

「ん」
「……そ」

私たちの毎日は、いつもこんな感じだ。一間の部屋に二人でこ

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『黙って読ませろ!』

『黙って読ませろ!』

(A,B,Cの3人が順番に入ってくる。それぞれ手に別の種類の漫画を数冊持っている)

A ……

B ……

C 漫画喫茶で相部屋って、バカみたいですよね

A ……

C そう思いません?友達ん家じゃないんだから

A ……

C 友達ん家でジャンプ読んでたら追い出されたことあるんですけどね、小学生の時

A ……

B あの、ちょっと

C あっ、もしかしてお兄さんもありました?

B えっと

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『お約束には乗れない僕ら』 その1

『お約束には乗れない僕ら』 その1

一話: 「いっけなーい!遅刻遅刻!」僕、原稔(はら みのる)の人生にはドラマがない。
顔も、体も、頭も冴えない。おまけに名前だってパッとしない。
何よりそれを苦にも思っていないものだから、そんな自分を変えることさえ諦めてしまっている。
おかげで多感と言われる高校二年生のこの時期に似つかわしくない、無感動で不感症な毎日。
今が好きなわけでもなければ、嫌いなわけでもない。何もかもが中途半端だ。せめてこ

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三本小説

三本小説

【登場人物】
冒険小説
恋愛小説
推理小説

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冒険小説 鬱蒼とした林を抜けると視界一面に海が拓けた
恋愛小説 鬱々とした顔の少女が、公園のベンチで蹲っていた
推理小説 撃ったのは被害者自身だと、硝煙反応が告げていた

冒険小説 宝が眠る洞窟への入り口は、この崖の壁面に空いているらしい
恋愛小説 宝物のように彼女が握りしめていたのは、ぼろぼろのカセットだ
推理小説 宝塚のスターだったという

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五分で書いた芝居

五分で書いた芝居

【登場人物】



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赤 赤は強い色だから疲れるね
青 青は弱い色だから疲れるね
赤 赤は主役だから疲れるね
青 青は引き立て役だから疲れるね
赤 赤はホットだから疲れるよ
青 青はクールだから疲れるよ
赤 なんで張り合おうとするのさ
青 青は赤に張り合うものだからさ
赤 君は所詮二番手だ
青 僕は君の良心だよ
赤 青よ、僕は君なしでも活躍できるんだ
青 たとえば?
赤 白なんてどうだ

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『Disqualification』

『Disqualification』

「ハイツギー!!!」(和訳:はい、次)

図書館の入り口では、無愛想な小男が待っていた。
乱雑な手つき、品性に欠ける声。

「ココは叡智の楽園ヨ」

無数の本だけではない。デッサン・彫刻・人体図。楽譜や蓄音機の類まで、ここには全てがあった。
男の言う通り、ここは叡智の楽園。
しかし、訛りの強い言葉を話す彼は、お世辞にもこの“叡智の楽園”の番人には相応しくないように思える。

「目的ハ?」

しかし

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『ドラ○もん』エクストラシーン

『ドラ○もん』エクストラシーン

※これは『某漫画作品をパロディした舞台作品のカーテンコール後の小芝居』という設定で創作された架空のシーンの台本です

【登場人物】
伸哉(のぶや):大学生になって、ひょんなことから役者を始めた少年。どんくさくて下手くそ、と言われていたが、ドラマもんとの邂逅を通じて……?
ドラマもん:伸哉の部屋の引き出しから現れた謎すぎるタイツ男。俳優として成長するための色々な道具やアドバイスをくれる万能なお助けキ

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『フォーフロント・カスタムキャスト』

『フォーフロント・カスタムキャスト』

答えは簡単だった。
もし、人の体が好きにデザインできるものだったとしたら、その造形を神様に委ねる人間なんていはしないだろう。
デザイナーズ・ベイビー。人は人を設計する術を身につけた。
髪の色も、顔の形も、腕の長さも腰の位置も。
全てを好きに決められる世界に生を受けた私は、もちろん全てを好きに決められてこの世界に生まれ落ちた。
父と母が思いつく限り優れた人間としてデザインされた。

一方。父と母より

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