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独裁者が認知症を患ったら?「ウラジーミルPの老年時代」
<文学(175歩目)>
とても笑える。そしてとても興味深い。でも、想像を広げていくとものすごいブラックな世界が見えてくる。「認知症」の不幸は本人だけに終わらない。
ウラジーミルPの老年時代 (世界浪曼派)
マイケル・ホーニグ (著), 梅村 博昭 (翻訳)
共和国
「175歩目」は、イギリスのマイケル・ホーニグさんの作品。表題の通り、ロシアのP大統領が10年後くらいに、認知症を患ったら?にかかわるフィクションです。
徹底的な強権で「皇帝」と揶揄される人間でも、認知症を患うことは可能性としてある。
そして、ロシアの近未来を描く分析も鋭い(2016年刊行で、現在のウクライナ紛争前ですが、2030年代にはウクライナ東部やベラルーシ北部はロシア領)。
その意味で、ロシアを見てきている人にはとても興味深い作品でもあり。
とても対称的な、悪の権化で認知症で引退を余儀なくされたウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・P(プーチン)元大統領と、純朴なロシア人の代表でもある介護士のコンスタン・ミハイロヴィッチ・(シェレメーチェフ)さんの日々。
時に面白く、時にもの悲しく、時に残酷に描かれている。
その意味で、ロシアに関心を持たれる方々、現代政治に関心を持たれる方々に好評のようです。
これに追加して、人間の本質を考えると認知症による問題が深く刺さる。
独裁者の常として、強権・全体主義でメタメタにされた人物ほど、引退が無くなる傾向あり。
引退すると、自分がしてきたことに対して、次の権力者たちが断罪するから。
それで、歴史の中では、終身にわたり、「権力」を手放さない人物がわりと多く登場する。そして、この「認知症」は権力者でも発症することがある。
誰もが違和感を感じるときが来れば、時代のリーダーにより追われるとは思う。しかし、その手前の「認知症『気味』」の期間が長く生じるであろうこと。これが人類の悲劇だと思う。
日本でも「老害」等の言葉があるが、「独裁者」の「認知症」の問題は、その組織の構成員。あるいは国民にとって不幸。そして組織の規模が大きければ、関係する近隣の国々の国民にとっても不幸中の不幸。
この「引退」にかかわる仕組みを確保していくことがとても大切だと思いました。
「認知症」であることは、一般的な老人であっても「隠す」と思う。
歴史上の「終身」の「独裁者」のうち、どれくらいの割合で「認知症」が存在したのか?よくはわからないが、いたのだと思う。
この「不幸」は想像を絶しますね。。。
とても、考えさせられる作品です。
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