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「探検」という行為の本質を考える「ダスクランズ」

<文学(27歩目)>
「ヤコブス・クッツェーの物語」から人類の歴史の中の「探検」という行為の本質を考えてみる。

ダスクランズ
J.M. クッツェー (著), J.M. Coetzee (原名), くぼた のぞみ (翻訳)
人文書院

「27歩目」はJ.M.クッツェーさんの記念すべきデビュー作です。こちらは作者も「売れなかった」とされていますが、若さに溢れた意欲作だと感じました。

この本には、「ヴェトナム計画」と「ヤコブス・クッツェーの物語」が収められている。

前者は、なんとなく自分を見ていると感じた。作中にある「いったいだれの落ち度がぼくなのか?」って、若くて未熟な頃の自分を見ている感じです。あ~、学生時代には多くの皆さんにご迷惑をかけた原因がまさにこの思考。申し訳ございませんでした。

これでは社会で生きていけません。(笑)

社会にボコられて、「自分はだれか」まで移行。そして、20代末に「普通の人類の一人」までたどり着いて今に至ります。その意味で、前者は「若さ」の不安程度が伝わる良作だと感じました。

後者の「ヤコブス・クッツェーの物語」は、「探検」という行為の本質に迫ります。

現在、河出書房新社では「世界探検全集(全16巻)」が刊行されています(まだ中途)。
こちらは、数ある探検関連の書籍の中から、文学を得意分野とする河出書房新社の編集部が厳選されたもの。おそらく、あと100年は持つ秀作ぞろいです。

しかし、フィクションとは言え、「ヤコブス・クッツェーの物語」には「探検」という行為の実態があると感じました。河出書房新社の全集に選抜されたものには「ひたむきな、探検魂」と「自然との闘い」「自らの葛藤」がある。

では、数ある「探検記」から漏れたものは。。。と言うと「現代社会ではタブーとされるもの」(現代の価値観だと受け入れがたい行為)であると思います。

実際の「探検」の多くには、「原住民は人間ではない」が色濃く流れている。。。

主人公のヤコブスが生きた時代(18世紀=日本では江戸時代)には、21世紀のアタリマエとは別の観点があって、それが強く示されています。(うげっ となるくらいおぞましい)

この作品には、他者に対しての思考がある。「探検」とは突き詰めると一方からの観点です。

ある集団からの「探検」とは、現地の人々にとっては「闖入」でもある。その意味で、この「ヤコブス・クッツェーの物語」はとても秀逸だと感じました。

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