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思い出すこと

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子供の頃の思い出や、過去の記憶を、随筆風にまとめています。
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2024年8月の記事一覧

川辺の少年

 小学校のお友達と二人で近所の川へ釣りに出かけました。私たちが糸を垂れたのは、街道と東名…

こと
2か月前
2

魔女の贈りもの

 駅前の繁華街をすこし外れたしずかな場所にその施設は建っていました。この施設は創作活動を…

こと
2か月前
6

神様と遊んだ記憶

 山の中腹にある広場で幼い私は地べたにしゃがみ込んで遊んでいました。住んでいる場所からそ…

こと
2か月前
3

シニセのおでん屋

 近所のさびれた商店街に老舗のおでん屋がある。人通りのまばらなシャッター街で、そのおでん…

こと
2か月前

つとむ君

 つとむ君は小学生のとき最もよく遊んだお友達のひとりである。お兄さんがいた影響で、少しや…

こと
2か月前
5

お金のない世界

 Aさんと話しをしていると、お金の話題になりました。A さんは、さいきん聞いたという著名…

こと
2か月前
4

おにぎりバス

 ある初冬の晴れた日でした。私は葬儀に参列するため、見知らぬ町のバスに揺られていました。平日の朝に駅から郊外へ向かうバスへ乗り込んだのは、自分をふくめて数人でした。閑散としたうそ寒い車中に、気だるいエンジン音がひびいています。  目的の停留所までは三十分ほどかかるようです。慣れない礼服に身をつつみ、なじみのない町並みを車窓にながめていると、座っているのに座っていないような、そんなそわそわした気分になりました。  ある停留所で一組の若い男女が乗り込んできました。彼らは一人席に

Hさんのコーヒーカップ

 普段はあまり使わない洒落たコーヒーカップが棚にひとつありました。ソーサーとセットで、ち…

こと
2か月前

菓子折り

 差し入れのために菓子折りをあつらえることになりました。さいきん近所に小さな洋菓子店がで…

こと
2か月前

かえる

 若いころ、柄にもなく、急須で汲んだおいしいお茶をのみたいとおもい立って、近所のさびれた…

こと
3か月前
1

祭りのあと

 子どものころ、近所の小さな神社で秋祭がありました。お祭りの夜は神社のまわりの狭い路地に…

こと
3か月前
2

シシリアの娘

 子どものころ、親につれられてしばしばおとずれた喫茶店がありました。お店のマスターと私の…

こと
3か月前
2

窓際のピエロ

 私のかよった小学校にはバディ制度というものがありました。学年のことなる見知らぬ子とパー…

こと
3か月前

ぜんそく

 ここ二十余年は病気や怪我で病院にかかったことがありません。けっして体は丈夫なほうではありませんが、都度なだめすかして病院の世話にはならずに済んでいます。  子供の頃はちがいました。よく体調を崩しては病院へ点滴を打ちに行きました。夜間外来に駆け込むことも度々ありました。わけても喘息との付き合いは一番親密でした。  喘息の発作はおもに夜中に起こりました。空気がヤスリのように感じられて息を吸うたびに砂を引きずるような音を胸から響かせました。そんなとき母親は起きだしていそいそと吸