窓際のピエロ
私のかよった小学校にはバディ制度というものがありました。学年のことなる見知らぬ子とパートナーを組まされて、なにか行事があるとバディ単位で行動するしきたりでした。
一年生のときのバディは六年生の子でした。バディの六年生はずいぶん大人に見えました。そして小学校に上がったばかりの右も左もわからないぼんやりな私をよく面倒見てくれました。もうバディの顔も名前も思い出せないけれど、その子が私のために作ってくれたピエロの小さなお人形は、大人になるまでずっと持っていました。いつも窓際にくたっと座らせてありました。
簡単な作りだったので長い間には古びてきて、今にも糸が切れて崩れそうになりました。動かすときは両手にすくうように持ちました。手のひらの上でピエロはくたっと寝転んでいました。
成長につれてピエロはいつしか押入れに仕舞われました。けれど捨てる気にはなりませんでした。ときどき箱をあけてみると、よれよれのピエロがくたっと眠っていました。
そんなピエロも今は手元にありません。家業が傾いて家を引き払ったときに処分してしまったようです。
いろいろ捨てて、大人になりました。
今は心の窓際に、たくさんの思い出の品にまぎれて、微笑むピエロがくたっと座っています。
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