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エコビレッジとは?持続可能な暮らしを目指すコミュニティについて東大生が徹底解説!

「エコビレッジ」という言葉をご存知ですか?

SDGsやサステナビリティへの関心が世界的に高まっている昨今、持続可能なライフスタイルや社会モデルのひとつとして注目を集めている、新しい概念です。

この記事では、これまで国内外30ヶ所以上のエコビレッジを訪問した私が、東京大学で”エコビレッジ運動の拡大と持続的な運営”について研究した成果を踏まえて、エコビレッジとは何かを解説していきます。

※エコビレッジに関する書籍・論文・実践例のフィールド調査などをもとに導いた結論ですが、あくまで一研究の域を出ないことはご了承ください。

私の自己紹介はこちらをご覧ください。


エコビレッジとは何か?

エコビレッジとは、
自給自足を中心とした環境にやさしい循環型の生活を、住民のつながりの中でシェアして支え合いながら営む、持続可能な暮らしを追求する地域コミュニティのことです。

スコットランドのFindhorn

昔ながらの田舎の共同体と違うのは、地縁や血縁のつながりではなく、ビジョンに共感する人たちが集まって主体的に作られたコミュニティであるという点です。
環境面で”エコ”なだけではなく、このコミュニティ(人間関係)の面でも持続可能であることを目指しているのがポイントです。

「エコビレッジとは何か」という問いについて、これまでたくさんの実践者や研究者たちによって定義が試みられてきましたが、実は「この条件に当てはまるものがエコビレッジだ!」という明確な基準は存在していません。
多様なプロジェクトが当てはまる、幅広い概念なのです。

1990年代から生まれ始めたエコビレッジは今や世界各地に広がっていますが、その発展を支える国際組織・GEN(Global Ecovillage Network)は、エコビレッジについて「環境・社会・経済・文化の4領域を中心に、それらを統合的に調和させた生き方を実践する取り組み」と説明しています。

ですが、少し抽象的でわかりにくいので、これを踏まえた上で、以下ではエコビレッジとは具体的にどんな特徴を持っているのかについて解説していきます。

エコビレッジの特徴

エコビレッジは、上に挙げた中でも特に「環境」と「コミュニティや人間関係(社会)」の面で持続可能なあり方を目指しています。
多くのエコビレッジに共通して見られる具体的な特徴は、以下の通りです。

環境の持続可能性(自給自足的な暮らし)

パーマカルチャー(人と自然が共生する持続可能なデザイン手法)に基づく有機農業や自然栽培、動物や家畜の飼育などによる、食料の自給

・太陽光・風力・バイオマスなどの再生可能エネルギー、薪ストーブや温水システムなどの利用による、環境負荷の低いエネルギー調達

・環境に優しい素材を使用した建築、タイニーハウスやアースバッグハウスなどのセルフビルド

・生ごみをコンポストで堆肥に返す、コンポストトイレなど循環型の排水システム
etc…

コミュニティや人間関係の持続可能性

・対話を重視したコミュニケーション
・自律分散的な組織運営・意思決定
・子育てや介護などのケア活動をシェアし、互いに支え合う
・地域住民も巻き込んだコミュニティ形成
etc…

その他にも、たとえば「経済」の領域では、地域通貨の使用、地域の資源を活かしたスモールビジネスの実践、「文化」では地域に伝わる伝統文化の継承、などの特徴もあります。

エコビレッジの形

現在日本にあるエコビレッジは、数人から数十人程度が集まって生活を共にするスタイルが一般的ですが、海外では数百人規模のエコビレッジも存在します。

また、特定のエリア内に集まって住む形態だけでなく、街の中にメンバーの住居、畑、コミュニティセンターなどの拠点が点在する形もあります。

鈴鹿市の街中に溶け込むアズワン鈴鹿の「街のはたけ公園」

さらに、メンバーは必ずしもエコビレッジ内に定住している必要はなく、少し離れた場所から通う、二拠点生活をしながら時々滞在する、遠方在住の場合はオンラインで活動に参加するなど、多様な関わり方があるのが近年のエコビレッジの特徴です。

エコビレッジの歴史

こうした特徴を持つエコビレッジは世界各地に存在し、その数は1万とも1万5000とも言われます。エコビレッジはどこで生まれどのように広がってきたのか、簡単に歴史を解説します。

ビジョンに共感する人々が集まって主体的に作られるコミュニティ(インテンショナル・コミュニティ)の歴史は古く、たとえば中世に発展したキリスト教の修道院や、19世紀前半の初期社会主義者たちによる共同体(ロバート・オウエンによるニュー・ハーモニー村など)も、その一部として考えられます。

その後1960年代には、世界的にカウンターカルチャー運動が広がりました。
国家や戦争、資本主義や消費社会などの伝統的な価値観に反発するさまざまな学生運動や市民運動が国を超えて盛り上がったこの時代、ヒッピーコミューンと呼ばれる自給自足的な共同体が世界各地で作られ、多くの若者が農村へと向かいました。
このコミューン運動が、現在のエコビレッジの源流となったとされています。

今もヒッピー的な雰囲気を残すデンマークのChristiania

また、もう一つの流れとして、コレクティブハウジングという住まい方があります。
これは1970年代以降、北欧を中心に広がった集合住宅の一種で、各世帯ごとの住宅のほかにキッチンやガーデンなどの共有スペースがあり、食事など生活の一部を住民が共同で行う暮らし方です。
アメリカではコハウジングという名で広がったこの運動も、現在のエコビレッジにつながっています。

デンマークのPermatopia


これらの流れを受けて、1991年、いくつかの既存の取り組みが持続可能な共同体モデルとして「エコビレッジ」という名前で評価され、エコビレッジ運動がデンマークから始まりました。
1995年には、国際的なネットワークとしてGENが設立され、1998年には国連の選ぶ持続可能なライフスタイルのモデルとして紹介されました。

はじめは欧米を中心に広がったエコビレッジですが、今ではアジアやアフリカでもそうした社会モデルが参考にされており、先進国・発展途上国を問わず世界中で増加しています。

日本でも、以前からこうした共同体は存在しましたが、特に2011年の東日本大震災以降、全国各地でエコビレッジや似たような取り組みが増えてきています。

シェアハウスとの違い

”暮らしをシェアする”という文脈でエコビレッジと近いものとして「シェアハウス」があります。血縁のつながりがない他人同士で、キッチンや水回りなど居住スペースの一部を共有し、生活を部分的にシェアするこの暮らし方は、今ではすっかり一般的な概念になりました。

古民家をシェアする福岡県の「いとしまシェアハウス」

特に最近は古民家をリノベーションした田舎シェアハウスなども増えてきていて、メンバーで一緒に田んぼや畑の作業をし、シェアハウスをベースにした農的暮らしを営む事例も増えてきています。

こうしたプロジェクトとエコビレッジは何が違うのか、とよく聞かれますが、一番の違いは持続可能な新たな社会をつくるというビジョンを持っているかどうかではないかと考えています。

田舎シェアハウスは、自分たちの生活が一番の目的であり、自給自足的な暮らしをコミュニティの中で共有して完結しているのに対し、
エコビレッジは、そうした暮らしや地域のモデルを、社会全体に広げていきたいというビジョンを掲げて、コミュニティを外部に開いて活動しています。
詳しくは、以下の記事を読んでみてください。

おわりに

最近は、日本各地で「エコビレッジ」や「村づくり」「コミュニティづくり」というムーブメントがいっそう広がってきていると感じます。
まだまだ認知度が低いエコビレッジについて、この記事が理解を深める助けとなっていたら嬉しいです!

体験記では、これまで私が訪れた国内外のエコビレッジについて紹介しています。
この記事を読んで「エコビレッジって具体的にどんな感じなの?」と気になった方は、ぜひ読んでみてください!


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