【短編】things take time
「どうやったら結婚するような、運命の人に出会えるんだろう。」
葉の色が、太陽の光に透けて黄緑色に輝き出した春の終わり頃。私はみっちゃんと一緒に教科書が沢山詰まった重いリュックを背負って帰っていた。
「蕾から花が咲くのと同じだよ。」
「咲かない蕾もあるってやつ?」
「そりゃあ植物だって、千差万別よ。」
「ああー。雑草だって花咲かせてるってのにー」
私は側に生えていた綿毛をちぎり、口の中に入るったけの空気を溜め込んで、思いっきり吹き飛ばした。
「放っておいても咲く花はあるけど、毎日水やって、大事に大事に育てるほど、花は綺麗に咲くよ。愛を注ぐほど、咲かない蕾もまた、愛おしく思える。」
国語が好きなみっちゃん。どこかの小説の引用だろうか。みっちゃんの方を見上げると、私が吹いた小さなタネたちが青空へ羽ばたいて行くのが見えた。
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