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剣 2

兄は毎日勘定所に出向き算盤を弾いている。

「情け無い。」

心の中で毎日そう思っている。
武士の中で算盤を押し付けられるなぞ
ひ弱と印を押された様なものだ。

武家とは強さで命運が変わるもの。
強くあらねば価値は無いのだ。

だが兄は父と役に立たぬ自分を喰わさねばならん。
仕事があるだけ有り難いと言ってのけた。

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それではあまりに口惜しいが

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剣 1

人を如何に上手く殺せるか。

これが生きる術であった。
これがあればこそ武士は武士といえた。
この世は生き残った者が拵えたのだ。
ただそれが事実である。

戦というものが無くなって遥かに長い。
であれば武士とは何する者ぞとなる。
退屈を持て余せば詰まらぬ事で市井の者を
ただ無礼だと宣い無礼と斬る。

それは虚勢に過ぎぬ。
辻斬りに走る者なぞも
その様な気風に晒されたに過ぎまい。

さて武士とは

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