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剣 20

さてもさてさて

精神的に相手を追い詰め始めた大沢美好。
とはいうものの、側から見れば時間稼ぎの悪あがきにも思えます。実力というより場数は圧倒的に相手に利がある。

ここからどうしよう、、なんて思ってなければ良いのですが、、、

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畳み掛ける様に美好は続ける。

「ひとつ聞きたい。何故、俺を仲間に誘ったのだ?」

「死ぬ野郎には関係あるめぇよ!」

「死ぬのであれば教えても構うまい。」

「へっ!それもそうかい。侍を始末したいのさ。
 それも、ちったぁ腕の立つ奴をなあ。」

成程そうか。玉千鳥は奇襲を仕掛ける様だ。
それが効かぬ相手ならば、それ相応の剣であるしかないという訳か。

(いや、、、違う気がする、、、)

玉千鳥の男の目は薄っすらと笑っている。

(ならば、、こうか。)

「嘘だな。」

「決め付けるもんじゃねぇんだろ。」

美好は玉千鳥の目をジッと見据えて離さない。
しばしの時が流れる。夜風も流れる。
風の流れを頬に浴びた玉千鳥の目が揺れた。

「やはり嘘だ。」

「だから、決め付けるなって、、」

「目が泳いだ。」

「なっ、、野郎と見つめ合う趣味なんざねぇだけよ!」

「ならば、何故余裕が無くなった。」

またしても歯軋りの音がした。

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美好はわざと笑顔を見せた。

(ここまでは何とかなった。)

心の内で安堵の息を漏らしていた。

(だけどなぁ、、ここからどうするかなぁ。)

何事にも勢いというものは大事だ。小細工の種が分かっていれば、剣は何物にも劣らない筈。が、しかし、、玉千鳥が相手となれば正攻法では無い。己が見た技だけとも限らない。しかもこの男、察するに口八丁で隙を作り始末するのが、既に技なのではないだろうか?

だから美好は自分なりに対の先を取ったつもりである。相手のやり方を予め予想して、負けない様にやり返してみせた。勢いと思い付きだけで。

だが強ち間違いでもあるまいとも思えた。腕の立つ侍相手では、その隙が作れないではないか。

(ああー分かったぞ!)

美好は頭に浮かんだ考えに賭けようと決めた。

「分からぬとでも思うておったか!」

急に声を張り、上から物を言う。

「玉千鳥、いやお前は相手に隙を生ませて、そこにつけ
 入る。侍相手ではその隙を作り出せぬ故、俺を捨て
 駒にして隙を生む気でおったのだろう!」

玉千鳥の男の身体がピクりと震えた。

(当たりだ!! 良し!)

美好は心の内で握り拳を振り、喜んでいる。

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はいはい、、、大沢美好。やっぱり深くは考えていなかった様です。まあ、しかし、ここまで上手く噛み合えば出たとこ勝負も上々ですよねえ、、、

馬鹿と素直は紙一重と言いますでしょう?

大体周りの意見に無条件に賛同し、後から理屈を捏ねくり回す人ってぇのは、存外素直。素直な分だけ頑なに信じて疑わないから馬鹿。

確かに紙一重でさぁーねぇ!
おっと、お口が悪くなりましたね。

さて天然素直ちゃんだった大沢美好。でも、いつまでも話してるだけじゃあ解決しやしません!
(読者様も怒りますからね!)

さて次の手をそろそろ打ってくれませんか!


つづく


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