灰色猫

日々の生活の中で気づいたことをまとめていきます。 守備範囲は、各種芸術(美術、落語、そ…

灰色猫

日々の生活の中で気づいたことをまとめていきます。 守備範囲は、各種芸術(美術、落語、その他)など。 社会課題の解決などにも関心があります。

最近の記事

辻村深月『傲慢と善良』

この本が映画化され、もうじき公開らしいというのは 読み終わったあとに作品をネットで調べていて知った。 作中で触れられている通り この小説はジェイン・オースチンの『高邁と偏見』を 下敷きにしていると思われる。 18世紀末から19世紀初めのイギリスの田舎、 そこでの女性の結婚事情を背景に、身分の違う男女の 偏見に基づくすれ違いの恋愛模様を描いた作品ということらしく。 本作でも、東京またはその近郊に生まれ育った人からすると 今の時代にまだそんなことが、という地方での若い女性の息

    • 森見登美彦「シャーロックホームズの凱旋」

      森見登美彦は好きな作家の一人だが どうやら長くスランプだったという。 自らのスランプをシャーロックホームズのシリーズが中断したあと再開したように、彼がスランプだったという話に置き換えて、 森見自身が復活を遂げた、という体裁なのがこの作品らしい。 舞台は、京都。 時は、ビクトリア女王の時代。 シャーロックホームズの物語を、森見ワールドの京都の町に移し替えた というところだが、 作中でワトソンは不調のホームズを有馬温泉に湯治につれていき 青竹踏み健康法を勧め、と違和感なく2つの

      • 街とその不確かな壁

        村上春樹は、かつて好きな作家だった。 それが『神の子どもたちはみな踊る』や (ノンフィクションだが)『アンダーグラウンド』のあとくらいから、 どうも好きではなくなっていて ただ、好きな作家ではなくなった、といえる程度には読んでいる という中途半端な位置づけ。 『騎士団長殺し』が久々に面白かったので 新刊が出るならまた読もうかと思っていた。 春樹作品で最も好きな『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の ”世界の終り”のほうの物語の元になったものを書き直した ということ

        • 小川哲『君のゲーム』

          友人から面白いよ、といわれて少しだけ違和感があった。 いままで勧められた本に外れはないのだが、「面白い」ってなによ、と。 その語彙、何も表現していない。 目にしたらあまりに薄い。 『地図と拳』の厚さからして、またレンガ本(レンガほどの厚さの本)かと 思っていたものだから、これは1時間コースと思い定めて読む。 面白い。 いやそんな表現はどうかと思うが、この言葉が一番的確だとわかる。 タイトルもこれ以外にないくらいはまっている。 こういう本は(すぐ読める厚さでもあるし)、面白

        辻村深月『傲慢と善良』

          図書館という場所

          図書館に通い始めたのは大学生になった頃だった。 普通は受験勉強などで地元の図書館などに通うのだろうが 文字通り入り浸る、足しげく通うということはなかったと思う。 入学した大学は、校歌に「原野をひらき」と大げさな歌詞のあるとおり 広大なキャンパスに3つの図書館を持っていた。 ひとつは医学の専門図書館だったのであまり訪れることはなかったが あとの2つは、隅々まで探訪し、それぞれにお気に入りの場所を見つけ 夜10時まで開館していたこともあってよく訪れた。 それぞれの図書館は、特徴

          図書館という場所

          女性初の抜擢真打ちと女性目線の落語

          抜擢真打ちとは、自分より芸歴の長い先輩を追い越して先に真打ちになることを指す。 何人抜いたか、で期待度が知れるものらしく、本人の重圧もそれとして 話題になることもあるようだ。 その抜擢真打ちかつ女性落語家では初、という枕詞がつき さらには古典落語の「芝浜」では、あまり語られないおかみさんの心情を 入れ込んで話題、ということで、林家つる子さんを一度聞いてみたい と思っていた。 地元でつる子さんの講演会があるというので出かける。 主催は女性参画推進センター。はあ、なるほどと思う

          女性初の抜擢真打ちと女性目線の落語

          帰ってきた橋本治展

          神奈川近代文学館の橋本治展にいく。 元町中華街駅の、元町方面改札からでてエスカレーターで延々登ってゆき かなりの高さになって外に出ると港の見える丘公園まではあと少し。 長く急な階段を登らなくてすむため、楽をしているなあと思いながら ついこのルートをたどる。 外に出ると、そこはアメリカ山公園で、 こちらも見晴らしのよい気持ちのよい庭園。 そこをでて外人墓地脇を抜けると、港の見える丘公園の イングリッシュガーデンがあり、ちょうどバラの季節でもあり、 大変な賑わいとなっていた。 そ

          帰ってきた橋本治展

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          JAXA講演会場にて

          JAXA講演会場にて

          番外編:JAXA講演会場でSORA-Qを見てくる

          今回はいつもと違うテーマ。番外編と言うことで。 地元でJAXA講演会があり、でかける。 春先に、SLIMという小型月着陸実証機(正確に名付けたのだろうが・・小型月着陸機でいい気がする)の月面着陸成功にあわせたイベントにもいったので、内容は多少かぶるかな、と思いながらも参加。 結論からするといってよかった。 会場では、小型探査機(野球ボールくらいの大きさの球体で、探査の際は真ん中が割れて展開し両サイドが車輪なるもの)SORA-Qの簡易ヴァージョンが操作できるブースがあり、実物

          番外編:JAXA講演会場でSORA-Qを見てくる

          「笑点」新メンバーに晴の輔さんとは

          「笑点」というTVの長寿番組をご存じだろうか。 この番組は故立川談志さん発案によるものということだが、その談志さん(初代司会者)以来、立川流から初めてメンバーになったのが志の輔さんの総領弟子、晴の輔さんである。 聞いたときには、あ、そうきたか、へえ、と驚いた。 まずは、笑点メンバーにこれでようやく東京での落語会派の4団体が出そろったということ。 加えて、立川流にとっても談志さんの孫弟子世代からTVで名前と顔を売る落語家が出てきた、ということ。 立川流の家元・立川談志さん没後

          「笑点」新メンバーに晴の輔さんとは

          青森県美術館にて「奈良美智: The Beginning Place ここから」

          青森県立美術館は、十和田、弘前の美術館とあわせて巡るつもりだった。なかなか実現しなかったのは、どういうルートを組んでも電車とバスではまわりにくいから。そして結局、今回、弘前の訪問を断念することで実現した。 青森県立美術館を訪問したのは昨年の秋。 奈良美智の大規模な個展が催されていた。 奈良美智は、横浜美術館での大規模な個展(2016)を観ているが、その頃も人気作家で、関連グッズの売れ行きが尋常ではなかったと聞いた。 今回は氏の出身地、「ホーム」ともいえる青森県美での大規模な

          青森県美術館にて「奈良美智: The Beginning Place ここから」

          落語「紺屋高尾」の解題

          トルーマン・カポーティの「クリスマスの思い出」という小説をご存じだろうか。あるコラムで、年の離れた(祖母と孫くらいの)バディものという紹介に惹かれて手にした本だったのだが。 凝った装丁と挿絵の本である。ごく短い小説なのに、この一編しか収録されておらず、独立した一冊になっている。 紙の質感は、挿絵の版画に見合った手触りと厚さで大変趣味がいい。 切れのよい文章。作家自身が愛し、よく自作の朗読に選び、そして多くの聴衆の涙を誘ったという作品世界。それに見合う装丁をと、この作品を愛

          落語「紺屋高尾」の解題