桂米團治「質屋芝居」

NHK「日本の芸能」にて桂米團治さんの「質屋芝居」を聴く。


久々な人は私の髪が白くなって・・と自分でも述べていたとおり
いつの間にか頭髪は白くなり、マクラで語るには65才になって
介護保険証が送られてきた、とのこと。
若い頃から白髪だったので、ずっと染めてはいたのが
染めなくなって随分楽になり、また落語も肩の力が抜けてきたという。


偉大な父をもった悲哀やら今日のネタの歌舞伎にちなんで
若い頃に、猿翁さん(当時の猿之助さん)の舞台に出たときの
気持ちよさやら失敗談を楽しそうに語る。
「質屋芝居」に出てくる質屋の丁稚さんも、番頭さんも主人も
皆芝居好きが高じて、商いの最中につい素人芝居に熱中する。
そんな噺の内容にあった、マクラである。


語り口は、確かにいい感じに力が抜けて
声の調子は、この人なりの心地いい案配になっている。
噺の中での芝居は、素人が案じるのであまりうまいといけない。
大げさに、かつなかなかの名調子で、朗々と気持ちよく台詞を語る。
大阪の商家は、丁稚さんまで芝居を見に行けるほど文化的で
裕福でもあったということなのか。
蔵の近くの稽古場から聞こえてくる三味線の音、というのも
繁華な町中らしくていい。


歌舞伎に限らず、オーケストラやオペラも好きな米團治さんらしく
楽しそうに演じているのがいい。
やわらかな関西弁も、ふっと観客を我に返らせる
請け出す質草を待っているお客さんのつっこみも絶妙な落差で
笑いを誘う。


米朝さんは、好きな落語家さんの中でも筆頭の一人だけれど
生で見ることはほとんどなかった。
一門は、枝雀さんやざこばさんなど芸達者で個性ある落語家さんを
多く輩出した名門でもある。
それを率いていくのもなかなか大変ではあったろうが。
それも含めて、頭も白くなったので肩の力を抜いてやってます
ということだろうか。


楽しい落語のひととき。
米團治さん、また横浜にきたら聞きに行こうかな。


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