「初釜（はつがま）」という言葉をご存じでしょうか。お茶の世界では、新年最初のお茶会のことを「初釜」と呼びます。お茶の新年会といってもいいかも知れません。
表千家(おもてせんけ）の今年の初釜は、1月10日から14日までの間に行われ、約1000人が出席したと聞きました。一方、裏千家（うらせんけ）では、先代お家元の奥さまのお母上、三笠宮妃百合子さまが昨年ご逝去されたため、「初釜」ではなく「稽古はじめ」という形で行われたそうです。
私がお茶のお稽古を始めたのは、先生がお稽古場を開かれてまだ間もない頃でした。お稽古を始めて最初のお正月は「稽古はじめ」といった雰囲気で、2回目のお正月でようやく初めての「初釜」を迎えました。その際、お点前（おてまえ）をすることになり、直前まで特訓を受けて本番に臨みました。
母のお古の着物の中から、どうにか着られそうなものを選んで着て行ったのですが、緊張のあまり、お点前の内容はまったく記憶にないのです。ただ、初釜が終わった後、一旦帰宅して着物を脱ぎ、お稽古場の先輩と夜ご飯を食べに行く約束を楽しみにしていたことだけは覚えています。
あの日、花びら餅をどうやって食べたのか……それさえ思い出せないほど緊張していた自分を、今になって微笑ましく振り返るひとときです。
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