![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172253522/rectangle_large_type_2_1e4e5db083b1495f538f8d4246940572.png?width=1200)
福祉の原点は相手の行動に合わせること|指導員の練習方法を解説
人は年齢に関係なく、自分の考えが正しいと思いながら生きています。その「正しさ」の根拠は人生経験や学び、時代背景など多様です。福祉では「人に寄り添う」考え方が大切とされています。
「寄り添う」とは相手の考え方・体調などを考慮した行動を理解するという意味であり、相手に同調しないと出来ません。理屈だけでなく身体で同調することが重要です。特に知的障がい児は言葉が通じにくい方が多いので、身体を通じた同調がより必要とされます。
福祉における同調の意味
福祉の原点は、〈相手の気持ちに合わせる〉ことではなく、〈行動を同調すること〉です。相手の行動に寄り添うことで、信頼関係を築き、効果的な支援が可能になります。この考え方は、相手が指導員を好きになり、理解し、一緒にいたいと思うことにつながり、それは動物が同じ種を仲間と感じる本能に似ています。
相手に合わせた同調行動を取ることで、次のような変化が見られます。
言葉ではなく身体を通じて素直に理解(同調)するようになる
頭で理解するすることではなく、指導者の意図や方向性を身体で感じ取れるようになります。自分が力を加えられていることに気づかず、自分の意思で動いているように感じる
指導者のサポートを自然に受け入れ、主体的に行動しているという感覚を持てるようになります。自然に指導の方向に導かれ、自分の意思で行っていると思い込む
指導者の意図を押し付けられるのではなく、あたかも自分で選んで行動しているように感じられる環境を作り出します。
これらのアプローチは、一次障害、二次障害のどちらのケースにも当てはまります。特に一次障害の場合は、1秒以下のしつけ指導が有効なことがあります。この際、言葉での注意は時間がかかりすぎるため避け、身体や態度を使った瞬時の指導が求められます。
また、大勢の前で個人を「言葉」で叱ると、他の児童が不安を感じたり怖がる可能性があります。そのため、叱る際には、言葉を使うよりも、目線や態度で示す〈叱る(躾ける)〉ことを心がけることが重要です。
福祉における同調は、相手の気持ちを考慮した行動であることを理解することです。
例えば、「◯◯ちゃんは◯◯くんを叩く」という行動があったとします。
◯◯ちゃんの気持ちはどうでしょうか?◯◯ちゃんは〇〇くんが好きだから叩いたのです。この場合、まずなぜ叩くのかという◯◯ちゃんの気持ちを理解する必要があるのです。
▼こちらの記事も参考にしてみてください
同調は福祉の基本(原点)であり、福祉における手段や方法論の中心となる考え方です。他にも演繹法、帰納法、弁証法といった思考法のように、異なる考え方(例: 唯物論と唯心論※1、形而上と形而下※2)を超えて相手の行動に同調することで、その主張や考えを理解することができます。
つまり、同調を通じて、相手が何をしたいのか、何が好きなのかを理解できるようになります。そして、その理解を基に、療育士として相手を正しい方向へ導くためのスキルを身につけてください。この技術は、相手との信頼関係を深め、効果的な支援を行うために欠かせないものです。
★演繹法、帰納法、弁証法について
演繹法とは、とは、一般的なルールや法則から具体的な結論を導く考え方です。例えば、「すべての人間は死ぬ」というルールから、「太郎も人間だから死ぬ」と結論を出すような方法です。
帰納法とは、具体的な事例や観察から共通点を見つけて、一般的なルールや結論を導く考え方です。
例えば、「このカラスは黒い」「あのカラスも黒い」から、「カラスは黒い」と結論づける方法です。
弁証法とは、対立する意見や考えをぶつけ合い、その矛盾を乗り越えて新しい結論や真理を導く方法です。
例えば、「Aが正しい」という主張と「Aに反対」という主張から、両方を取り入れた「新しい答え」を生み出す考え方です。
※1:唯物論は「物質がすべての基本」と考え、意識や精神も物質から生まれるとする考え方です。
唯心論は「精神や意識がすべての基本」と考え、物質はその表れとする考え方です。
※2:形而上は、目に見えない概念や本質、精神的なものを指します(例: 真理、愛、理念)。
形而下は、目に見える具体的なものや物質的なものを指します(例: 物体、現象、形)。
簡単に言えば、形而上は「心や考え」、形而下は「物や形」と考えると分かりやすいです。
身体で覚える同調の練習方法
療育士として必要なスキルを身につけ、相手を適切に導けるようになりましょう。
相手と同じ動きをする
相手の動きに合わせ、自分の身体で自然に同調する感覚を身につけます。手のつなぎ方
・歩行時には、手を離さないようにしながらも力を入れない。
・相手に手の存在を意識させないように、手のひらをそっと合わせるだけにする。歩行支援の仕方
・歩行が難しい児童には、助けるだけでなく自主的に歩けるようサポート。
・引っ張らずに、手を合わせた状態で上腕や肩で優しくサポートする。立たせるときの誘導
引っ張らずに、相手が自分の力で立てるようにサポートする。学習の支援
「勉強しなさい」と強制するのではなく、自然に学べる環境を整える。
相手が押し付けられていると感じない方法で学びを促す。指導の進め方
無理に従わせるのではなく、相手が自発的に従えるような方法を考える。社交ダンスのリードに学ぶ
社交ダンスのように、相手を力で押さえつけず、手や身体の動きで自然にリードする感覚を身につける。
練習と指導の姿勢
実際に指導員同士で練習
指導員同士で上記の方法を実践し、身体で同調の感覚を覚えましょう。身体で練習した感覚を持って指導に接する
相手に優しく寄り添い、強引さや無理をなくすことで、信頼関係を築きます。相手に「好きになってもらう指導」ができれば、相手も自然に応じてくれるようになり、無理なく理解してもらえるようになります。
無理なく相手に寄り添い、自然な指導を目指すことで、効果的で安心感のある療育が実現します。
まとめ
福祉では「相手の気持ちや行動に寄り添う」ことが重要とされます。福祉の原点は、相手の気持ちに合わせるだけでなく、相手の行動に同調することにあります。同調行動を通じて、相手の考えや行動を理解し、信頼関係を築くことが可能になります。特に言葉の通じにくい知的障がい児の場合、身体を使った同調が必要です。同調することで、相手が自然に行動できる環境を作り出し、自主的な行動や成長を促すことができます。同調は福祉の基本であり、療育士が相手を正しい方向へ導くためのスキルです。相手の気持ちを理解し、適切な支援を行うためには、相手の行動に寄り添いながら経験を積み重ねることが大切です。この姿勢が効果的な支援と信頼関係の構築に繋がります。