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加速主義

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2023年7月の記事一覧

山本七平『空気の研究』読んだ

山本七平『空気の研究』読んだ

日本における空気支配についての有名な著作、いまごろ読んだ。

空気支配について有名な例は、戦艦大和による海上特攻であろう。制空権も十分な燃料も訓練もなく突っ込んでいったらどうなるか、当時の幕僚たちは百も承知であったろうが決行され、多くの命と艦艇、技術の粋を尽くした戦艦大和が失われた。
これについて戦後、当時軍令部次長であった小沢治三郎は「全般の空気よりして、その当時も今日も当然と思う」と述べた。

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貞包英之ほか『自殺の歴史社会学 「意志」のゆくえ』読んだ

貞包英之ほか『自殺の歴史社会学 「意志」のゆくえ』読んだ

久しぶりに自決シリーズだ。

しかもみんな大好き社会学だよ。

タイトルのとおり意志を手がかりに近現代日本における自殺の捉えられ方の変遷を考察したもの。

デュルケームが意志の存在をいったん無視して統計的に自殺を考察したのに対して、本書では自殺における「意志」を社会がどのように扱ってきたかを問う。
こう書くとありきたりだが、けっこうラディカルな内容であった。

ひとが自由に意志することは近代におけ

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西部邁『学者 この喜劇的なるもの』読んだ

西部邁『学者 この喜劇的なるもの』読んだ

西部邁は中沢新一の人事を巡るゴタゴタに嫌気がさして1988年3月に東大教養学部教授を辞任しているのだが、その顛末を記したのが本書である。

西部らは東大教養学部の慣習に従い中沢新一の招聘を決めたのだが、ドタキャンをくらってしまう。

おそらくは当時の中沢の学者にしてはチャラチャラした雰囲気を一部教授たちが嫌がりひっくり返したもので、西部は中沢とその師である山口昌男への義理立てから最後まで奔走するの

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成田悠輔『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』読んだ

成田悠輔『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』読んだ

読んだっつーか聴いた。たまたまAudibleの聴き放題に入っていたので爆速で聴いたのである。

爆速で聴くとけっこう内容を忘れてしまうのだが、さいしょに要約がついているのがありがたい。最初と最後に聞けば内容を忘れにくくなる。

内容は民主主義がそもそもオワコンになりつつある、選挙制度の改革は対症療法ですらない、ビッグデータを用いて民主主義の形をそもそも変えてしまうことが重要である、、、といった感じ

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納富信留『プラトン哲学への旅 エロースとは何者か』読んだ

納富信留『プラトン哲学への旅 エロースとは何者か』読んだ

納富信留大先生の新書がKinle unlimitedだったので読んだ。読みやすかった。

著者がプラトン『饗宴』の舞台にタイムスリップするという設定で、臨場感を大事にしている。

アカデメイア遠足の後、宴会場であるアガトン邸に移動する。時代背景や登場人物の説明から始まり、本題である愛とはなにかみたいなことへと進展していく。

前座の人々(といっても歴史に名を残す人々)の演説が終わると、ソクラテスの

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檜垣立哉・平井靖史ほか『ベルクソン哲学の現在』読んだ

日本の主要なベルクソン研究者の対談を集めたもの。

対談なので気楽に読めるのだが、気楽に読みすぎてあまり頭に残らなかった。まあいいか。

4つの主著『時間と自由』、『物質と記憶』、『創造的進化』、『道徳と宗教の二源泉』を順に解説していく流れなのだが、前半2つはともかく、後半の2つはちょっとついていけなかった。

後期のベルクソンはオカルト的というか俺ジナルな感じで、こういうことだからドゥルーズが取

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