ハードボイルド書店員が気になる「2024年本屋大賞ノミネート作」
本屋大賞のノミネート10作品が決まりました。
スイマセン、恥ずかしながらどれも未読です。現場の書店員の感覚だと、最も売れているのは川上未映子さんの「黄色い家」でしょうか。
あらすじを見ると、なかなか重そう。目の当たりにしたくない人間の一面を覗いてしまいそうな怖さを覚えました。一方で彼女たちの背負った業は決して創作の産物ではなく、いつだって己も当事者になり得る。その事実から目を逸らしたくない気持ちもあります。ぜひ読みたい。
ただ「全国書店員が選んだいちばん売りたい本」という本屋大賞のコンセプトを忠実に守るのであれば、すでに売れている本よりもまださほど動いていない名著に光を当てたい。少なくとも私はそう考えています。
もっと売りたい。あらすじやレビューを読み、率直にそう思えた作品は↓でした。
津村記久子さんの「水車小屋のネネ」です。
厳しい環境でたくましく生きる18歳と8歳。ある意味では「黄色い家」に近いかもしれない。でも描かれる世界の色がなんとなく真逆かなと感じました(もちろん、どちらがいいとか悪いという話ではなく)。
川上さんは2008年に「乳と卵」で、津村さんは2009年に「ポトスライムの舟」で芥川賞を受賞しています。奇しくも私のなかで「芥川賞 vs 芥川賞」の構図が生まれました。昨年「地図と拳」で直木賞を獲った小川哲さんの「君が手にするはずだった黄金について」もノミネートされていて気になるから「芥川 vs 芥川 vs 直木」かもしれない。
お三方の芥川&直木賞受賞作はすべて読んでいます。どれがいちばん好きかと問われたら小川さん、いちばんインパクトが頭に残ったのは川上さん、そしていちばん身近に感じられたのは津村さん。優等生的な回答かもしれませんが、本音を言葉へ落とし込んだらこうなりました。
本屋大賞発表は4月10日。楽しみにしています。