「1400字の怪作家」
おはようございます!!! 書評行きます!!!
「133キロ怪速球」 ベースボール・マガジン社 2009年出版
山本昌著 222P
(以下は読書メーターのアカウント https://bookmeter.com/users/49241 に書いたレビューです)
本書に書かれていた「努力の続け方」を長年継続している。たとえば毎日100頁本を読むことに決めたとしよう。体調が悪い忙しいなどの理由で難しい日もある。そこで「今日はいいか」ではなく「じゃあ10頁読もう」に切り替えるのがポイント。著者を大成させたスクリューボールとの出会いも興味深い。ラジコンカーという趣味が身体のメカニックを学ぶきっかけになったことも含め、人間どこにブレークのチャンスが潜んでいるかわからない。だからこそ日々感性のアンテナを伸ばし、即座に反応できる己でいよう。私の小説も133キロ怪速球を目指す。
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故・野村克也さんは著者のピッチングを「剛速球投手のようなフォームで遅い球を投げて打者を幻惑する」と評していました。本書によると、その球速の遅さは実は著者にとってコンプレックスだったようです。
でもそういう自分を受け入れたおかげで「ストレートが133キロ出ている間は現役でやっていける」という独特の投球術を構築し、50歳まで選手生活を続けられたのでしょう。よく言われることですが、劣等感と己だけの武器はコインの裏表だから。
私は毎週日曜日に「ハードボイルド書店員日記」という短い小説を公開しています。原稿用紙でいったら3枚~4枚弱。作家を志す人は「長い話を書けないと厳しい」というのが定石です。私も以前は400枚以上の長編を書いて新人賞へ応募していました。
でも一年近くかけて同じ話を書き続けていると、いつしか創作が作業化し、義務的にこなすノルマみたいになります。推敲時も辻褄合わせにばかり気を取られ、冒険性や独創性が消えてしまう。これでは典型的な「無難に小さくまとまったセミプロ小説」です。まるで面白味がない。書いている本人ですらそう感じていました。
野球のピッチャーも「速い球を投げる先発投手」を目指すのが王道でしょう。しかしそこがムリでも生きる術はあります。コントロールを磨く、球種を増やす。先発で結果が出なければリリーフに転向すればいい。私の場合「長編小説」という「150キロの先発投手」を諦め、「掌編小説」という「133キロの中継ぎ投手」に活路を見出したわけです。
やり方次第で133キロのストレートでも三振を奪えます。実際、著者は97年に最多奪三振のタイトルを獲っています。私ももっと知恵と技を磨き、1400字程度の物語で勝負できる「怪作家」になります。なってみせます。