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「単行本の復刊」と「天邪鬼の心意気」

驚きました。

村上春樹さんが1983年に出した最初の短編集「中国行きのスロウ・ボート」が単行本で復刊するそうです。値段は1980円。発売日は2月21日とのこと。

文庫版もまだ購入できます。

気になったので、チェーン系書店の在庫状況を調べてみました。多くのお店が文庫版を置いています。今後どうなるかはわかりませんが、当面は併売していくのでしょう。

ぜひ大型店で両方を手に取り、比べてみてください。ちなみに私が最も胸に残った収録作は「午後の最後の芝生」です。

長く売れている文庫本が新装版になるケースはよく見られます。しかし文庫本が新刊書店で普通に買える状況で単行本を復刊するのは珍しい。

最初は「熱心なファンをターゲットにしたコレクターズ・アイテムの位置付けかな?」と考えました。でももしそうなら特典等を充実させ、もっと高価にするはず。「街とその不確かな壁」における著者直筆サイン入り愛蔵版のように。

単行本といえば新刊のイメージ。あるいは「40年前の本であっても、初めて触れる人にとっては新刊」「読み手の心情によっても同じ」「いまこそ真っ新な気持ちで出会い直そう」みたいな意図を含んでいるのかもしれない。

深読みが過ぎるのは重々承知。でもそういうメッセージを勝手に感じ、応援したくなっています。

もうひとつ。一般的には単行本よりもサイズが小さく、安価な文庫本の方が重宝されがちです。読書家の間でも「文庫になったら読もう」「単行本を一度手放し、文庫が出たら買い直す」という声をよく耳にします。

すべてわかったうえで、場所を取り、重くて値段の高い単行本をあえて復刊する。その心意気は悪くない。いや、好きです。出版業界には頑固で天邪鬼な一面もあっていい。

お求めはお近くの書店にて。私も買います。

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