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某少年マンガを読み返したら「経済」に関する教訓を得られた

都内某所の本屋で働いています。

だからというわけでもないのですが、様々な書籍を読んできました。

読了した本のなかには二度三度と挑み、ようやく何かを掴めた名著がいくつかあります。海外の古典文学や哲学書など。今年の頭に再読したドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」もそうでした。

以前にも書きましたが、ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」は下巻で挫折したままです。「永劫回帰」という結論をいいとこ取りしてわかった気になりたくない。そういう読み方は他の栄養素を削ぎ落とすと考えているので、いずれまた上巻からチャレンジします。

哲学書だと、キルケゴール「死に至る病」も本がボロボロになるまで読み込みました。しかし情けない話ですが、いまだに咀嚼できていません。宗教、特にキリスト教への理解を深めてからじゃないと難しいのかもしれない。

RPGの裏ボスみたいなもので、何度全滅しても諦めずに修業を積み、リトライするのが楽しい。読書の醍醐味のひとつでしょう。

一方で「一度開けば十分」と思っていた本をたまたま読み返して「あ、俺全然わかってなかった」と痛感することがあるのも事実です。

少し前にそれを認識させてくれた一冊を紹介させてください。

2021年に発売された短編集です。

「aキラ編」に衝撃を受けました。ネタバレはしたくないけど、どうしても必要なので少しだけ。予備知識ゼロで読みたい方はご注意くださいませ。

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「名前を書かれた人間が死ぬノート」を手にした高校生が、それをオークションにかけ、某外国の首脳にとんでもない額で売り、得られた大金を都内に戸籍のある人々へ分配するという流れです。ひとり10億円(!)を100万人に。

初読時はシンプルに羨ましかったです。しかしのちに税金や国債等に関する勉強をしたうえで目にしたら、違う感想が浮かびました。

「実際にこれをやったら、ハイパーインフレになるのでは?」

当たり前だと思いましたか? でも最初に読んだ際は気づかなかったのです。

具体的な程度は想像できませんが、前代未聞の価格上昇に見舞われることはたしかです。あと10億円を得られた100万人とそれ以外の人々の格差が開くはず。

作中では、そういった描写はされません。「マンション買った」「マイホームと車3台現金で」というセリフが出てくるのみ。そんなに散財して大丈夫なの? おそらく贈与税で半分近く持っていかれるのに。まさか非課税? あり得ない。国の経済が崩壊します。

ページ数の都合で触れなかったのか、あるいは少年マンガでそこまで突き詰めなくてもと判断したのか。いずれにしても、ノートをオークションにかけた主人公に対する印象が変わりました。「頭はいいけど、経済はわかってないのかな」と。

学校の成績と実際の賢さはべつ、といわれます。全面同意。だからこそ地頭を過信し、取り組む分野に関する学びを怠ると、こういう事態を招いてしまう。著者の意図とは異なるかもしれませんが、今作からそんな教訓を得ました。

もし「一度読めば十分」という手持ちの本がありましたら、何かの機会に読み返してみてください。前回とはまったく異なる感想を得られるかもしれません。結果的に己の成長を確認することもできるはず。

ぜひ。

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