ハードボイルド書店員が選ぶ「7月のおすすめ本」
「今月のおすすめ本」
いいお店だなあ。私もやりたいです(noteで似たようなことを毎週土曜にやっていますが)。意表を突き、公のためになり、なおかつ売り上げに繋がる一冊を紹介したい。
前の職場が閉店する際に「本当はこういう本を売りたかったフェア」をやりました(ジュンク堂書店・新宿店の真似です)。
私が選んだのはこちら。
作家志望、村上主義者、太宰と漱石を愛する阪神ファン、ジョジョ好きのプロレスマニア。同僚に知られていた属性のどれにも引っ掛からないチョイスなので驚かれました。でもこの絵本ならいい意味で知名度は高くないし(当時の話です)、しかもメッセージ性と普遍性は十分。勝算はありました。
たまには自慢させてください。売れました。閉店までの短い間に3回ほど追加注文したはず。
フェアを始めた直後に本がメディアで取り上げられたので「だからバズッたのか」と言われました。事実そうだったのでしょう。ただ目の付け所に自信を持っていたのもたしかなのです。
いま「今月のおすすめ本」を1冊選ぶなら? すでに月末が近いけど考えてみました。売れている本や話題書、ベストセラーは除外します。
↓とかどうでしょう。
まさかの版元在庫なし。いい本なのに。
掌編が多いです。なのにサクサクとは進まない。不協和音。でもその思考ノイズがクセになる。
私はカフカを読むと否応なしに「己の本音」と向き合います。「建前や理想論はよくわかった。で、本当はどう思ってるの?」ともうひとりの自分に問い詰められる。たぶんカフカ自身が忖度や媚びを創作に持ち込まず、魂の独白を不格好な剥き出しのまま書き綴っているからでしょう。
難解さの中に仄めかしや意味を求めなくていい。ただただ読む。すると何かが内側の奥底からうっすら浮かび上がってきます。
夏といえば楽しい旅行。しかし必ずしも自分探しに旅はいらない。カフカの短編があれば足りるのです。