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ハードボイルド書店員が「業界未経験の新人」から学んだこと

6年ほど前。

勤めていた書店に女性の契約社員が入りました。業界未経験。しかしビジネス書の担当が辞めた直後だったので、彼女が引き継ぐことに。

当時の私は雑誌と旅行ガイド、そして実用書の一部を任されていました。暇ではない。でも時々はビジネス書の品出しを手伝いました。さすがに新人ひとりでは難しいので。

彼女が出した後の棚は衝撃でした。「なぜこれをここに?」が多すぎる。経営戦略もマーケティングも自己啓発もゴチャゴチャ。

最初は直しました。全部ではないけど。

やがて考えを改めました。この棚ではないと思った場所で見掛けた本がよく自動発注で戻ってくる(=売れた)ことに気づいたから。

本人に「何か狙いがあってやってるの?」と訊ねました。答えは「いえ、何となく」でした。

棚作りを教えないといけない。ただそれはそれとして学びを得ました。まさに西野さんが↑で話している「本来の売り場と一番売れる場所は違うのでは?」という着想を。

推測ですが、彼女の目線がビジネス書の棚であまり買ったことのない人のそれと重なったのでしょう。実際目の肥えたお客さんから苦言を呈された代わりに、若い人に売れるケースが増えました。

本来の売り場ではないからこそ、意外な方向へ可能性を広げられる。買ってもらえたのなら、少なくとも間違いではない。

ゆえに私は↓を文芸書ではなく、思想哲学の棚へ差し続けています。

↓も小説だけど、あえてビジネス書の起業コーナー。

ちなみに「松岡~」は、正社員の意向で文芸書へ移されました。かつての私と同じ杓子定規。売れていたのに。

無論「なぜこれをここに?」のすべてを放置してもいいわけではありません。英検の本を漢検に置くとかはダメです。でもオートマティックに直すのではなく「その発想はなかった」と捉えてみる。そこから新しい何かが始まるかもしれません。

本屋にできること、まだありそうです。

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