末端書店員が「業界のトップ」に伝えたいこと
ブックエキスポ、サイン会、スタンプラリー、動画配信、木曜日は本曜日。
取り組みは素晴らしい。私もイチ本好きとして、読書の秋を大いに満喫したい。ただ何度も書いていますが、そこじゃないんですよね。わかっていないはずはないから、あえて触れないのだとみなします。
もちろんお客さんがたくさん来てくれて、本屋を楽しく活用してもらえるのは嬉しい。ただそれが必ずしも「書店が消えてゆく現実を何とかしよう」という課題の解決に結びつくわけではない。
必要なのは業界の構造を変えること。大雑把な発注や送りつけを見直し、返品率を下げる。代わりに書店の利益率を上げる。旬の新刊を街の本屋が注文しても大幅に減らされ、逆に大型店では置ききれないみたいなバランスの是正も重要です。
出版社と書店、取次。それぞれの考え方があり、しばしば利害が衝突するのは理解しています。同じ業種でも会社の規模によってスタンスが異なることも。ゆえにパーセンテージを一律に上げたり下げたりするのではなく、各々の状況に見合った基準を設定すべきと考えています。無知で無力なイチ非正規書店員なりに。
紀伊國屋&蔦屋&日販の新会社と↑の動きは、おそらく繋がらない。他の大型書店の見解も伝わってこない。「公」の精神を持ち、フェアな視点で俯瞰し、改革断行を促せる人が業界のトップにいないのでしょうか? 渋沢栄一みたいな。
大型書店の末端で働く従業員は、労働量に見合わぬ低収入で多くの理不尽に耐えています。賃金のわずかな上昇で人手不足が悪化し、ろくに有休も取れない。街の本屋や小さな出版社も似たような、あるいはもっと苦しい状況に置かれているはず。そういう前線の声をスルーし、安全な後方で「文化を守れ」「本屋さんへ行こう」とか言われても。
もっと様々な規模の出版社や書店の現場を見てほしいです。