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「沢木耕太郎」と初めて出会った思い出

沢木耕太郎さんの新刊「夢ノ町本通り―ブック・エッセイ―」が9月29日に発売されました。

作品紹介を見ただけでテンションが上がります。特に「『深夜特急』の直前、26歳の時に書いた単行本未収録のエッセイ『書店という街よ、どこへ?』も初収録」のくだりに燃えました。

訪問販売の営業マンをしていた時代、一度だけ「もう辞めよう」と腹を決めたことがあります。月末まで勤めて終わりにしようと。

でもそんな気持ちで結果を出せるほど甘い世界ではない。

上司から連日のように叱られ、同僚に首を傾げられました。真実を話す勇気もなく、己と他人に嘘をついているのが本当に嫌でした。

ある日、仕事中に見かけた街の本屋へ入り、一冊の本を手に取りました。新潮文庫「深夜特急1」です。いまでも購入したお店でいただいたカバーが掛かっています。

それが沢木さんとの出会いでした。

通勤中に読み耽りました。当時の私と同じ年齢の時に彼は仕事を放り出して旅立ったと知り、ますます夢中になったのを覚えています。

語り手がもうひとりの自分みたいに自由な旅をしている。しかし楽しいだけではなく、嫌な思いも味わっている。世慣れた影響で変な駆け引きを覚え、必要以上に値切った買い物をして喜ぶ己に気づいて愕然とするくだりに「俺と同じじゃないか」と感じました。訪問販売は必ずしもキレイな世界ではないですから。

いつの間にか月が替わり、気づくと初のトップセールスマンになっていました。

たぶん「深夜特急」の語り手が私の代わりに気ままなバックパッカーを満喫し、でも結局は自分と似たような苦悩を抱えている。そのことから何らかの示唆を得たのでしょう。

間違いなく私は「深夜特急」に、そして26歳の沢木さんに救われました。当時の彼が書いたエッセイならぜひ読みたい。読まずにはいられない。

楽しみにしています。

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