「変えるべきもの」と「変えてはならぬもの」の見極め
長年プロレスを観ていると「今日はこっちが勝つな」という局面が出てきます。外すことすら想定内だったりする。
しかしそんな面倒臭いマニアの私でも「マジかよ!」と唸るケースがあります。先日新日本プロレスで実現した「ボルチン・オレッグ vs KONOSUKE TAKESHITA 」がそうでした。
TAKESHITA選手はキャリア12年。DDT&AEWにダブル所属するトップスターです。日々の闘いで実力を見せつけ、ファンの心を掴んできました。
一方のボルチン選手はデビューして2年弱。アマレスの実績とポテンシャルはともかく、プロとしてはこれからです。
まさかボルチン選手が勝つとは。
驚いたのはそれだけではありません。TAKESHITA選手が拍手を送ったのです。危険な角度で頭から落とされる場面もあり「怪我したらどうするんだ」という感情を出しても不思議ではなかったのに。
推測ですが、TAKESHITA選手は相手の課題をわかったうえで「強さ」を称えたのではないでしょうか。もちろん「頭から落とす=強さ」ではないので、他の点に見出した格闘能力の高さを。
新日本の創始者・アントニオ猪木さんが掲げたプロレスは「ストロングスタイル」です。レスラーはまず強くなければと。
時代が移るとともに、そのあり方も変わってきました。生き残るためのマイナーチェンジはどんなジャンルでも必須。老舗の和菓子屋ですら流行に合わせた改良を繰り返しています。
一方でなくしてはいけない「核」も存在する。
TAKESHITA選手は大会前の会見で「ストロングスタイルのメシアになる」と宣言しました。あれは自身の力を見せるというアピールに留まらず、新日本における価値観の基準を「強さ」へ戻す、そのために身体を張るという覚悟の表れだったのかもしれません。
変えるべきものと変えてはならぬものの見極め。またひとつプロレスから学びました。