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九段下パルチザン / ビブリオテーク・ド・キノコ・マガジン

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2020年3月の記事一覧

dancing at the end of the world |weekly

dancing at the end of the world |weekly

「では来世で。
ちょうどそんな別れ際の挨拶が流行ったのは30年も前のことだっただろうか。野外のパーティーでたまたま会う人たちは、次にいつ会えるか分からないわけで、とはいえ音楽という繋がりを通してまたどこかで会えるかもしれないという希望と、音楽の持つ普遍性がもたらす陶酔感と一体感から輪廻転生に通じるような運命を感じたのか、自然と来世でまた会おうという挨拶が広まっていった。来世で会うかどうかという以前

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セッション・オブ・オブセッション/そのコストはいつも、後になって支払うことになる|weekly

セッション・オブ・オブセッション/そのコストはいつも、後になって支払うことになる|weekly

今週は、うでパスタが書く。

不慮の事故で家族を失い、「これからも妻と娘の三人で、ずっと幸せに暮らしていくんだと想像していたのに」と悔しげに吐き出すひとを見た。
愛する者の喪失に心を寄せることは難しくない。
しかしその人生観、世界観は私のそれとは相容れない。
私はこれからこの暮らしがずっと死ぬまで続いていくと想像したことが少なくとも過去四半世紀、ない。

人間には、自分が怖れたいと思うものを怖れる

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eat,sleep,speculate,repeat | weekly

eat,sleep,speculate,repeat | weekly

「この先2つ目の信号を超えたところの横断歩道で。
そう伝えたはずなのだけれどもタクシーは一つ手前の信号で停まった。
起点というものは人によって異なるものだということを僕は忘れがちで、つい自分の視点からだけでものを見てしまう。心の広い人というのは自分の中に沢山の他者を住まわせている人だ。独りよがりにならず、常に複数の視点からモノを総合的に判断する。我が強くなければアートシーンではやっていかれないなど

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名、あらための記。|weekly

名、あらための記。|weekly

今週は、うでパスタが書く。

いま、人間の子どもをひとり育てている。
最近になってはようやくしっかりしてきたが、まだようよう記憶も定まらない、大きくなったときには思い出すこともできない日々を生きている人間と暮らすというのは不思議なものだった。

誰も人生は、初回を見逃したドラマシリーズだと思う。
見慣れた街、見慣れたひと、その因果・相関関係、いつの間にか始まっていた物語の続きをこともなげに、あるい

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