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週刊ヴェルデ

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短めのエッセイを、週一回を目標に更新。
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#西洋美術史

「ヴェネツィア」を作った男カナレット~『カナレットとヴェネツィアの輝き』展内覧会から

「ヴェネツィア」を作った男カナレット~『カナレットとヴェネツィアの輝き』展内覧会から

SOMPO美術館の『カナレットとヴェネツィアの輝き』展の内覧会を取材。

カナレットは、本文執筆を手がけた『西洋絵画 風景をめぐる12か月』でも3枚ほどの作品について紹介した。

その時は、そこまで思い入れのある画家ではなかったが、今回の展覧会で彼の大きさを思い知った。
カナレットは、一言で言えば、今私たちが思い描く「ヴェネツィア」を作った男だった。

広い青空。
きらめく海の上に浮かぶ建物。

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モネの業~『モネ 睡蓮の時』内覧会

モネの業~『モネ 睡蓮の時』内覧会

国立西洋美術館の『モネ 睡蓮の時』の内覧会に行ってきた。
展示作品全てがモネ作品、という展覧会内容は、昨年の『モネ 連作の情景』以来だ。

が、今回は、連作の中でもモネの究極のモチーフを扱った『睡蓮』をメインに据え、睡蓮以外のモチーフを描いた作品もどこかで、『睡蓮』や大装飾画とのつながりを持っている。全てが、『睡蓮』のためにある、と言っても過言ではないと思う。

水辺の風景は、画業の初期からモネに

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過去の自分を超える

過去の自分を超える

4年前、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展に寄せて書いた、この記事が、私にとってはライターとしての出世作になった。

この記事が、その後の『名画BEST100』を含む紙媒体の案件を連れてきてくれた。
私も、この記事の執筆を通して、ゴッホ、それも理想に燃えていた時分のエネルギーに充ち溢れる彼と、真っ向から組み合い、戦った。
ゴッホに関する展覧会があると、ほぼ毎回書いているが、どうしても〈ひまわり〉の

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もっと早く出会いたかった

もっと早く出会いたかった

「もっと早くこの画家(作品)に出会いたかったな」
先日、SOMPO美術館での『北欧の神秘』展の内覧会の会場を歩きながら、私は何度そう慨嘆したことだろう。
もっと早く、その存在を知っていたなら、本文執筆を手がけ、昨年発売された『西洋絵画 風景をめぐる12か月』にも入れただろうに、と。

確かに、ムンクをはじめ、ソールベリやガッレン=カッレラなど、北欧の画家の作品は何枚か入れていた。

ガッレン=カッ

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新刊『西洋絵画 風景をめぐる 12か月』

新刊『西洋絵画 風景をめぐる 12か月』

本文執筆を担当した、美術本『西洋絵画 風景をめぐる 12か月』が、三才ブックスさんから、明日22日に発売されます。
Amazonさんからは、予約もできます。

本文執筆者として、今回は本名を奥付に記載してもらっています。(一字間違えられていますが💢)
重版かかれば、訂正してもらえるので、ご協力いただけたら嬉しいです。(笑)

未練~ムンク展(2018年)のこと

未練~ムンク展(2018年)のこと

案件をとれなかった、そもそも「やりたい」と手を挙げず、後になって後悔した展覧会は、少なくない。
2018年の『ムンク展』はその一つだ。

世界で最も知られた絵画の一つ(『名画BEST100』(永岡書店)でも5位にランクインした)である<叫び>のバージョンの一つが展示されることで話題になっており、私も見に行った。
昔、美術史に興味を持ち始めたころは、何となく苦手意識の強かった相手であり、2018年に

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国立西洋美術館『自然と人のダイアローグ』から

国立西洋美術館『自然と人のダイアローグ』から

「絵が光っている・・・」

その作品の前で、思わずそんな言葉が口をついて出た。
テオ・ファン・レイセルベルヘの〈ブローニュ=シュル=メールの月光〉だった。

舞台は夜の港。
ヨットの藍色のシルエットの合間に、点々と見える灯り。空のちょうど真ん中に、ぼうっとした光で表された月が、幻想的な雰囲気を醸し出す。
近づいて見れば、それらは全て点状の絵の具によって描き表されているのがわかる。
使われているのは

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モディリアーニ展(大阪・中之島美術館について諸々のこと

モディリアーニ展(大阪・中之島美術館について諸々のこと

 先日、『モディリアーニ展』を見に、大阪の中之島美術館に行ってきた。
 モディリアーニの久しぶりの回顧展ということもあり、楽しみにしていたが、見た結果は、「期待以上」!

 美術館の開館を記念しての開催、ということもあり、大阪でしか見られないのがもったいない、と思ったほど。
 まあ、展覧会の目玉が、中之島美術館がコレクションとして持っている、モディリアーニの裸婦だったから、当然と言えば当然だろうか

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モノクローム・ゴッホ~ゴッホ展内覧会に行ってきた

モノクローム・ゴッホ~ゴッホ展内覧会に行ってきた

今日はゴッホ展内覧会へ。
ゴッホについては、これまでも何回か書いてきたし、作品も見てきたつもりだったが、今回思わぬ角度からフックを食らってしまった。

それが、こちら。

今日はゴッホ展内覧会へ。
ゴッホについては、これまでも何回か書いてきたし、作品も見てきたつもりだったが、今回思わぬ角度からフックを食らってしまった。

二階から始まるゴッホのコーナーの、最初に集められた素描群。
画家を目指すこと

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『教養として知っておきたい名画BEST100』9月10日発売!

『教養として知っておきたい名画BEST100』9月10日発売!

執筆協力させていただいた、『教養として知っておきたい名画BEST100』(永岡書店)の献本が到着!

発売は、9月10日から。

私にとっては初めての紙の本。
何もかも、初めて尽くしと言って良い。
良い仕事をすれば、それが新しい仕事を連れてきてくれる。
どうか、今回の仕事が次の機会につながりますように