【感想レポート】国立科学博物館の特別展「和食~日本の自然、人々の知恵~」に行ってきました!~日本の食文化と日本人の素晴らしさを再確認した話
こんにちは、水無瀬あずさです。長男の中間テストも無事終わり、ようやく平和が訪れた感のある週末、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
さて、昨日はとても珍しく「家族全員予定がない」一日だったため、私がかねてから行きたがっていた国立科学博物館の特別展「和食~日本の自然、人々の知恵」(以降、「和食展」)へ行ってきました!
科博と言えば、資金難によるクラウドファンディングが話題を集め、先日大成功のうちに終了したことがニュースになりました。我が国の科学力を支える科学博物館の危機に多くの人が心を痛め、少しでも支えになりたいという思いが集まった結果と言えるでしょう。7億円ってふつうにすごい。
でもこのムーブを一過性のものに終わらせてはいけません。研究開発にはとにかく資金が必要なのが常であって、これで「ああ良かった」となっても、また数年後同じような状況に陥る可能性だってあるわけですからね。現に、科博以外の博物館や美術館も同じく資金難に苦しんでいるという現実があります。このような状況で私たちができることは、行ける人は博物館や美術館にちゃんと足を運び、お金を払って展示を見ることだと思います。みんな、もっと博物館や美術館に行こう!
ということで今回は、国立科学博物館「和食展」に行って私が感じたこと、おすすめポイントなどをまとめてみたいと思います。秋深まるこの季節、日本の食文化にじっくりと寄り添い、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
国立科学博物館と「和食展」
「和食展」は、2023年10月28日~2024年2月25日まで、東京・上野の国立科学博物館で開催されている特別展です。
公式サイトを見てみると、「2020年に開催予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止となり、改めて開催するものです。」との記載があります。あのパンデミックで大変な時期に開催予定だったとは・・・日の目を見れて本当に良かったですよね。
概要はこちら。
「和食展」なんて聞くと、「美味しそうなものを見たり食べたりできるイベントかな?」とか思うかもしれませんが、そこはもう我が国を代表する科学博物館として、「食」を科学的見地から掘り下げて掘り下げて掘り下げまくってくれる興味深い展示の数々を鑑賞できます。毎日当たり前のように口にしている日本の「食」、見方を変えてみると「へぇ~」「そうなんだ!」がいっぱい。食べ物という身近なテーマなので、小さなお子さんも楽しく回れると思います。
ちなみに家族で特別展に行くのは、2015年「生命大躍進」、2017年「深海展」、2018年「昆虫展」に続き4回目。ただ今回、「あれ?今までと変わったな」と感じたことがありました。それは、子どもたちが成長したことによって、展示内容の一つ一つをかつてないほどじっくり見れたこと。今までの子どもたちなら、自分の興味のあるコーナー以外はすぐに飽きてしまって「もう帰ろうよ~!」と言ってきたものでしたが、中2・小6になった今回は彼らなりにいろいろなことを考えながら、噛みしめながら展示を見れたようでした。科博で感じる子どもの成長。
「和食展」で感じたこと
実際に「和食展」を見て回り、私が感じたことやおすすめしたいと思ったことをまとめてみたいと思います。これを読んで少しでも多くの人が科博や「和食展」に興味を持ち、実際に足を運んでくれれるきっかけにしてもらえれば嬉しいです。
食材の多様性を育んだ日本の四季
「和食展」の始まりは、和食を作るうえで欠かせない水、キノコ、山菜、野菜、魚介、海藻、酒やしょう油などの発酵物、だしの紹介からでした。
海の幸・山の幸と言われるほど多彩な食材を育む日本の風土、その多様性を生み出しているのは、とにもかくにも四季の存在です。春・夏・秋・冬それぞれの変化に伴って生育する木々や生物、風の動き、海の水温や海流、それらすべてが日本の宝なんだということに改めて気づかされました。
そしてまた、それらを何とかうまく生活に活用しようと試行錯誤を重ねた日本人の知恵と努力も忘れてはいけません。勤勉な日本人だからこそ、一つ一つの素材の風味を生かした調理法や保存法を工夫し、見た目さえ楽しめるよう研鑽を重ねた結果と言えるでしょう。日本人エライ!
つまり「和食」とは、日本の風土と日本人が協働によって育み、より健康で便利で自然にも優しい形へと日々進化させてきた誇るべき文化なのです。だからこそユネスコ無形文化遺産に登録され、世界中の人々に愛されるものになったということなのですね。
軟水だから生きた「だし」の文化
日本の水は、硬度の低い軟水です。そもそも水の硬度とは、「水1000ml中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を表わした数値」のことを言います(引用:硬水と軟水の違い|Evian)。陸水の起源となる雨水の硬度はほぼゼロですが、土壌や岩石との接触によってミネラル成分が付与され、硬度が高まる仕組みです。日本の地形は急峻で、かつ降水量も多いため、ミネラル成分が薄まることで軟水になります。逆に、大陸地域は地形が平たんなため水の滞留時間が長くなり、結果として硬水になるのです。
日本の地形は多様なため、水の硬度にも地域差があるのというのは驚きでした。言われてみれば確かに、横浜で飲む水と名古屋で飲む水の味は全然違うんですよね。その違いも硬度によるものだったんだなあという気づきになりました。あと横浜の水は普通に美味しい。
そしてそんな硬度の低い水と、だしの相性は抜群なんだとか。水に含まれるミネラル成分はだしの抽出を阻害するだけでなく、だしの成分が結合することで灰汁(あく)となってしまうため、ミネラル成分の少ない軟水が適しているというわけです。我が国が誇るだしの文化は、軟水のおかげで培われたものだったんですね。ありがとう日本の大地。
そして、だしのベースとなっているのが「うま味成分」です。うま味成分は、昆布に多く含まれるグルタミン酸というアミノ酸、鰹節に多く含まれるイノシン酸という核酸のことを指し、口に含むと「うま味」を感じます。1908年に旧帝国大学(現東京大学)の池田菊苗博士が昆布だしの味の正体がグルタミン酸であること発見し、「うま味」と名付けたことが始まりとされています。うま味の研究って、意外と最近始まったものだったんですね。
ちなみに、私の尊敬するバズレシピの料理研究家・リュウジさんは、味の素を料理に多用することで知られています。
味の素は科学技術の発達した現代社会でもいまだ論争の絶えない調味料ですが、その主成分はグルタミン酸ナトリウムであり、原材料は天然のさとうきびです。グルタミン酸とイノシン酸を料理において組み合わせ、「うま味の相乗効果」によって料理をおいしくしているというわけなのです。新しい本も発売中です!(私も買いました)
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四季が育む多彩な山の幸
日本には3000種ものキノコが生息していますが、全世界のキノコの種類(既知種数)は約2万なので、その1割強もの種類が日本に生息していることになります。キノコっていろいろな種類があるけど、まさかそこまで多様だとは知りませんでした。
「和食展」では実に多彩なキノコが並んでおり、なぜかキノコに謎に詳しい次男が一つ一つを説明してくれるなどしました。子どもってなぜか毒キノコが好きだよね。
続いて山菜。日本には7500種を超える植物が自生しているのですが、そのうち食べられる植物は1000種類以上。このうち、珍味として利用されている植物を「山菜」と呼ぶのだそうです。次項で紹介する野菜とは異なり、「自生している」ってところがポイント。日本では縄文時代から山菜が食利用されていたと考えられており、約100種類もの植物が山菜として利用されているんだとか。山菜なんて、ワラビとかフキくらいしか知らないけど、そんなにたくさんの種類があるなんてビックリです。
野菜は人間が作ったもの!?
「和食展」で私が一番驚いたことが、野菜に関することでした。野菜とは、野生植物から食材に適して効率的に栽培できる植物を人的に作りだしたものなんです。「え、野菜って人間が作ったの?」って思いませんか?言われてみれば確かに、野菜ってそのへんに自生なんかしていない。ここが山菜とは異なるところです。野菜は、人間が経験と努力を重ねることによって作り出してきた技術だったんです。人間ってすごい!
縄文時代に外国から渡来したとされる野菜が、コンニャク、大豆、小豆、イネ。弥生時代に大根、古墳時代ごろにゴマ、ショウガ、ハスなどが挙げられるそうです。よく料理に使っている野菜たちが、実はすご~く昔から日本人に親しまれていたなんて、なんだか不思議ですね。
大根は、和食の基層食材というべき野菜です。会場では実にたくさんの種類の大根が並べられており、実に圧巻です。全部の味を食べ比べてみたい!
「私たちは野菜のどの部分を食べているんだろう?」というコーナーでの発見。玉ねぎって、肥厚化した葉の部分なんだそうです。私はてっきり実だと思っていました・・・!そのほか、ジャガイモは?サツマイモは?ダイコンは?カブは?などがクイズ形式で見れます。ぜひ現地で答えをチェックしてくださいね。
私の大好きなにんにくも、奈良時代に伝来した歴史ある食材なんですね。昔の人も今のように、元気をつけるためににんにく料理を食べたのかなと想像すると興味深いものがあります。
島国の海流が織りなす海の幸
日本の国土から海へ目を向けてみれば、日本列島の周囲に広がる大陸棚や海流が生み出す多様な水圏環境によって、実にたくさんの生命が宿っていることに気づかされます。山菜や野菜と同じく、数多く生息する海の幸もまた、日本という独特の風土によって息づき、古くから日本人によって活用されてきたものなんですね。
意外だったのが海藻。海藻は世界中に分布しているものの、日本のように食用としている国はそれほど多くないんだそうです。
日本では古代から30種もの海藻が食材として流通していたとされますが、日本の海洋環境が海藻の多様性を高めてくれたとともに、そのなかから美味しい海藻を出現させ、うまく利用した日本人の創意工夫の賜物と言えます。海苔もワカメもコンブもアオサも、和食で美味しい海藻をいただけるのは、ご先祖様たちが自然の恵みを活用して頑張ってくれたものだったんですね。
会場には、20メートルにも及ぶ日本最長のコンブも展示されていました。私も長男も次男も、見ておもわず「ながっ!」と言ってしまうくらいの長さ。ぜひ実際に見て確認してみてくださいね!
「食」から見た日本史も面白い
食材についての長い長い解説を経て、ようやく博物館っぽい展示が始まりました。私は大学で日本史を研究していましたが、「食」の面から見ることなんてなかったので、なかなか新鮮な気持ちで見れました。
弥生時代の「食」。卑弥呼の食卓は思っていたよりずっと豪華。女王でありながら巫女でもあった卑弥呼は畏敬の対象であり、手の込んだ食事がふるまわれていたということでしょうか。
奈良時代の「食」。長屋王(天武天皇の孫)の食卓も彩り豊か。対して当時の庶民の食事があまりにも質素で、思わず「少なっ!」と叫んでしまいました。貧富の差で食べる量も全然違う時代だったんですね。
贈り物に包む熨斗(のし)は、高級食材アワビを薄くそいだものを伸ばして干すことを繰り返して作られた「熨斗あわび」が由来となっているんだそうです。現在でも伊勢神宮の祭祀で奉納されているとのこと。お熨斗の由来があわびだったとは驚きです。
戦国時代の「食」。織田信長の饗応膳は、本膳、二の膳、三の膳、余膳、五膳というフルコース料理だったそうです。フランス料理もびっくり!
美味しそう!食べたい!と思っていたら、今度は精進料理のコーナーになって急に質素になるっていう。なんていうか、極端なんですよね。間はないのか。
江戸時代の「食」では、料理本が登場し、庶民の間でもさまざまなレシピが開発されていたことがわかります。江戸時代にもリュウジさんみたいな料理研究家が居たのかもしれないと思うと、ちょっと面白い。それぞれのパネルにはQRコードが付いていて、まさかのクックパッドで再現レシピを見ることもできます。
江戸時代の料理本の再現レシピってちょっと興味があります。次男くんと、冬休みの自由研究とかでやってみても面白いかもねって話をしていました。もし実現したら、noteでも報告したいと思います!
ラーメンは和食?焼きそば、あんぱんは?
多様な食材と味覚によって至高の存在になった和食ですが、日本の食文化として親しまれながら「これって和食?」と悩んでしまうものも少なくありません。そんなさまざまな食べ物を「これって和食だと考えますか?」とするアンケートがWebサイトで行われています。
具体的な食べ物はこちら。
すき焼き
カレーライス
オムライス
コロッケ
テリヤキバーガー
ナポリタンスパゲッティ
ラーメン
焼き餃子
焼きそば
あんぱん
カステラ
お好み焼き
どれも「うーん・・・」と悩んでしまうものばかりですね。個人的には、テリヤキバーガーが本当にビミョーだと思いました。パンさえ・・・パンさえなければ!って感じ。
ぜひみなさん公式サイトのアンケートに答えて、日本の食文化を考えるきっかけにしてみてください。和食展に足を運んで展示を見てから回答すれば、より楽しめると思います!
結び
この記事、半日くらいかけてめっちゃ調べながら書きましたら6500字を超えました。仕事でもないのに何を頑張っているんだろう私・・・。でも「和食展」、個人的にとても興味深い展示内容だったので、多くの人に楽しんでもらいたいと思います。こういうのが仕事にできたら、いいんだろうけどなあ・・・。
さてさて国立科学博物館は、特別展を見ると常設展示も併せて見れるようになっています。常設展は「地球館」「日本館」それぞれに分かれており、常設展ながらかなりのボリュームの展示を楽しむことができます。和食展に足を運んだら、ぜひ常設展示のほうも覗いてみてはいかがでしょうか?さまざまな映像展示、標本展示を見れて、これぞ日本を代表する科学博物館!という威厳を感じられると思います。
なおこの日は実は、和食展に行ったあとで小鳥カフェに癒やされ、将門の首塚に畏怖しながら手を合わせ、東京駅のカービィカフェで買い物をして、サイゼリヤでワインを飲みまくって帰りました。最近の我が家では珍しく、エンゲル係数高く散財した1日でしたが、たまにはいいよね、仕事頑張ってるしね?と言い訳しながら過ごしました。和食展以外のことは別記事で書く予定ですので、そちらもお楽しみに・・・?
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