見出し画像

財務分析のやり方〜増減率から経営課題を見つける〜

この記事では増減表から経営課題を見つけるやり方について解説しています。

経営課題を探す時は増減額や増減率が「おかしな動きをしていないか」に着目するのですが、その「おかしな動き」には「パターン」があります。
こういうパターンの動きをしていると経営課題がある可能性が高い」といった具合です。

この記事では、このパターンについて解説していきます。
読んでいただいた方の参考になれば嬉しいです。


第1章 増減率をベクトルの傾きと捉える

課題を見つける時は、まず勘定科目ごとの増減率から見ていきます。

増減率をただ眺めるのではなく、増減率を次の表のグラフのように捉えて、直線が伸びる方向と傾き度合いに着目していきます。

直線とその直線が伸びる方向のことを合わせて「ベクトル」と言ったりします。
前期比で当期の金額が増加していればベクトルは斜め上方向、逆に減少していればベクトルは斜め下方向といった具合です。

このベクトルの方向と、ベクトルの傾き度合いを手がかりに課題を見つけていきます。

第2章 関係性がある勘定科目のベクトルを同時に見る

ベクトルに注目して課題を見つけていくのですが、この時に、関係性がある勘定科目のベクトルを同時に見ることがポイントになります。

「関係性がある勘定科目」とはどういうことか、具体例を使って解説します。

例えば広告宣伝費です。
広告宣伝は売上の増加を狙って行うものです。
広告宣伝を行ったら必ず売上が増えるとは限りませんが、広告宣伝自体が売上の増加を狙ってする行為なので、勘定科目の「広告宣伝費、売上高」は相互に関係性があるといえます。

このように、関係性がある勘定科目を見つけて、これらのベクトル(増減率)を同時に見ていきます。

第3章 経営の課題を示唆するベクトルのパターン

関係性がある勘定科目のベクトルを見つけたら、それらのベクトルが次のいずれかのパターンになっていないか見ていきます。

  1. ベクトルの方向が逆

  2. ベクトルの傾き度合いが釣り合っていない

上のどちらかに当てはまる場合は、経営の課題が潜んでいる可能性が高いです。
次からは、先ほど登場した2つパターンについて、広告宣伝費と売上高の例を使って解説していきます。


1.ベクトルの方向が逆

ベクトルの方向が逆というのは、例えば広告宣伝費が増加しているのに売上高が減少しているようなパターンです。

この場合、効果的な広告宣伝ができておらず、広告宣伝に投資したお金が売上として回収できていない可能性があります。




2.ベクトルの傾き度合いが釣り合っていない

ベクトルの傾き度合いが釣り合っていないというのは、例えば前期比で広告宣伝費が80%増加しているのに、売上高が1%しか増加していないようなパターンです。

この場合、売上高も増加しているので、増加させた広告宣伝費の効果があったといえます。
ですが、広告宣伝費が80%も増加している一方で、売上高が1%しか増加していないのは、効果的な広告宣伝が出来ていない可能性があります。

もしかすると、他の広告宣伝にお金を使った方が、売上がもっと増えたかもしれません。

例えば、ラジオCMを増やしたことで広告宣伝費が80%増加していたとします。
増加した80%に相当するお金をラジオCMではなくネット広告に使っていれば、売上高は1%以上増加していたかもしれません。

このような感じで、ベクトルの報告と傾き度合いから、経営の課題を見つけていきます。

経営の課題が見つかれば下のリンクの記事「財務分析のやり方~基本編~」の「第3章 お金で換算できない情報に目を向ける」で解説したやり方で、お金に換算されていないけれど経営において重要な情報に目を向けてさらなる分析をしていきます。


第3章 まとめ

いろいろと書きましたが、経営の課題を見つけるときは、増減率をベクトルと捉えて、そのベクトルの向きと傾きについて考えることがポイントです。

まずは増減表を作ってみて、勘定科目ごとに増減率を見てみるところから始めてみてください。
丁寧に勘定科目ごとの増減率を見ていくと、「あれ?」と引っかかるところか必ず出てくるはずです。

ちなみに、財務分析の基本的なやり方については次の記事で解説していますので、基本的ところから財務分析の全体像が知りたいと言う方は、ぜひ読んでみてください。
基本的なところ抑えるだけで、財務分析がぐっと簡単に感じると思います。


ここからは、少しだけ他の記事の紹介です。

実際に会社経営をしていく場合、投資するかどうかの判断が求められる場面が多々出てくるかと思います。
そういったときには、財務シミュレーションが役に立ちます。
財務シミュレーションをすることで、より最適な選択肢が選べるようになります。
次の記事で財務シミュレーションのやり方について解説しているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
読んでいただいた方の参考になれば嬉しいです。

いいなと思ったら応援しよう!