【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】肩こりと鍼灸
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
肩が硬くて重くて、まるで石がのっているようにツライ、パソコン作業が多いため肩がこってしかたがない、曇りや雨など天気が悪くなるとかならず肩が重くつらくなる。
こうした、肩こりの症状は、日本人の多くが普段から感じている、不定愁訴のひとつとなっています。
今回は、このような肩こりがどうしておこるのか、症状ごとのタイプや原因、治療方法についてみていきましょう。
なお、本編の中では、肩こりに対する鍼灸によるアプローチについてもご紹介していきます。
1.肩こりとは
肩こりとは、首すじ、首のつけ根から、肩または背中にかけての緊張感(こり感)、重圧感、および鈍痛などのことをいい、ひどい場合には、頭痛や吐き気を伴うことがあります。
現代医学上における定義では、「肩こりとは、僧帽筋を中心とした肩甲帯筋群のうっ血・浮腫により生じた同部のこり、はり、こわばり、重圧感、痛みなどの総称」とされています。
2.肩こりの原因
肩こりの原因は何ですか?と鍼灸院にきた患者様に質問をすると、パソコンやスマホのつかい過ぎという答えが返ってくることが多いのですが、日常生活の中においては、意外にも多くの事柄が肩こりを引き起こす原因となっています。
肩こりの原因の代表的なものとしては、次のようなものがあります。
・首や背中が緊張するような姿勢での長時間作業
・眼の酷使
・姿勢の悪さ(猫背・前かがみ)
・運動不足
・精神的ストレス
・体型(なで肩)
・肩掛け鞄や重い荷物による負担
・冷房や雨による冷え
・風邪の引き始め
・飲食の乱れ
・内臓の疾患
3.現代医学によるアプローチ
現代医学(西洋医学)では、肩こりの症状に対して、問診や神経学的診察、特に触診で僧帽筋の圧痛と筋緊張、肩関節可動域や頚椎疾患のチェックなどが診断として行われます。
また、その症状の裏側に器質的な異常や内臓疾患(例えば、頚椎疾患、頭蓋内疾患、高血圧症、眼疾患、耳鼻咽喉疾患、肩関節疾患など)が疑われる場合には、X線(レントゲン)撮影、MRI、筋電図、血圧測定などの検査が必要に応じて行われます。
その結果、原因となる特定疾患がみつかった場合には、個々の病気に対する治療が行われこととなります。
一方、特定疾患は無く、いわゆる肩こりであると診断される場合には、患部のこりの症状を和らげるために消炎鎮痛剤(湿布薬)が処方されるほか、日常生活で筋肉の緊張をやわらげるためのマッサージや自分自身で行えるストレッチ体操などの指導が行われるほか、局所の筋肉の緊張を一時的にとるための治療として患部へ直接薬物を投与する、注射療法が行われることもあります。
さらに、肩こりにうつ病などの精神的な疾患が深く関与していると診断される場合もあり、その場合には肩こり自体を改善する治療にあわせて、抗うつ薬や気持ちを安定される抗不安薬などが処方されることもあります。
4.鍼灸によるアプローチ
「肩こりは筋肉のコリをほぐすマッサージではなく、鍼灸による治療も可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、肩こりの症状も鍼灸によるアプローチが対応可能な症状の一つです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
一般的な治療では、肩こりのつらい症状を筋緊張を緩和するためのマッサージ、湿布などの外用薬により抑えます。
しかし、それらの治療を受けている方の中には、『マッサージは一時的には良くなるが、だんだん効果を感じなくなってきた』、『マッサージを受けるともみ返しがおこりやすく、翌日かえってつらくなるので苦手だ』、『湿布は皮膚がかぶれて痒みがでるので使用することができない』『長期間、肩こりの症状を抱えているので、対処療法ではなく根本から治したい』と考えていらっしゃる方も多いかもしれません。
また、あちらこちらの病院や民間療法を渡り歩き、現代医学的に様々な検査を行っても原因が明らかにならならず、自分にあった治療法がみつからないために、症状を抱えながら日々を生活している、という方も中にはいるかもしれません。
一方、鍼灸施術による肩こりの治し方は「症状が起こっている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって、肩こりの症状を取り除くとともに、肩こりをおこさない身体づくりをしていきます。
東洋医学的には、「季候、食事、疲労、ストレスなど、何らかの原因で、体内循環が停滞、または身体を十分に栄養することができないために、肩こりの症状がひきおこされる」と考えて治療にあたります。
5.東洋医学における肩こりとは
では次に、肩こりの東洋医学的分類について、その原因を探っていくことにします。
5-1.感冒によるもの(風寒邪型)
朝起きた時から、ゾクゾクした寒気や背骨のこわばりを感じて、同時に肩のこりが悪化した。
こうした急な肩こりの悪化は、風邪の引き始めの症状である可能性があります。
東洋医学では、身体の上のほうから風邪は身体に侵入してくると考えられています。
風邪により、身体の気血の巡りが阻害されて体内循環が停滞することから、肩こりの症状が急激に悪化します。
このタイプの特徴として、急激な発症、発症と同時に寒気や喉の痛み、鼻づまり、鼻水、咳などの風邪症状を伴うことが多くあります。
5-2.身体の冷えが原因でおこるもの(寒湿型)
梅雨時や雨降りの時に、身体の冷えとともに肩こりが悪化した。
このタイプの肩こりは、自然界の湿気と寒さが人体に影響を及ぼすことから、身体を温める作用が低下し体内の循環が停滞して肩こりを発症します。
特徴としては、寒い季節や天候時に悪化をすることが多く、患部は冷たく重い感じがします。
5-3.ストレスが原因となるもの(気滞、肝鬱気滞型)
精神的プレッシャーや焦ることが多い、あるいは、デスクワーク作業などで同じ姿勢を長時間続けることが多い。仕事や勉強に集中している時は症状は気にならないが、緊張から解放された後、一日の終わりや繁忙期が終わった頃に肩こりが辛くってきたのを感じる。
こういったタイプは、精神的・肉体的なストレスが原因となって肩こりを発症していることが多いです。
これらのストレスは、知らず知らずに身体の過緊張を生み出し、体内の気血水の循環が停滞することから肩こりを発症します。
5-4.イライラをため込むことによるもの(肝気逆、肝火上炎型)
イライラからカーッしやすく顔が熱くなりやすい、頭がポーッとなってのぼせやすい、頭痛やめまいがしやすい。
肩こりの症状にこういった悩みを伴う場合、精神的ストレスにより上半身の緊張が強まったことで肩こりの症状をひきおこしていることが多いです。
東洋医学では、怒りや悩みなどの精神的ストレスは、身体の上半身を中心にした過緊張状態を作り出して、心身の過剰な興奮とともに過剰な熱(東洋医学では火と呼びます)を発生させやすくなります。
そのため、肩こりの悪化に伴い、上半身の様々な症状(頭痛、めまい、のぼせ、目の充血、吐き気、不眠)が出やすくなるのが、このタイプの特徴です。
5-5.筋肉の栄養(血)不足によるもの(肝血虚型)
肩こりを長期間にわたり患っているうちに、マッサージをしてもすぐに戻ってしまうようになった。今では、肩が硬すぎで凝っているかどうかもわからない。
こういった慢性化した肩こりの場合、筋肉の栄養不足により肩こりがおこっている可能性があります。
口から摂取した食べ物が体内に吸収され、取り込まれた栄養の一部(東洋医学では血と呼びます)により筋肉は栄養されます。
しかし、食生活の乱れにより内臓に負担をかけたり、疲労により内臓の働きが弱まったりすることで血を体内で充分に作ることができなくなります。
また、精神的なストレスにより身体が緊張することで体内の循環が停滞してしまい、血を身体の隅々まで行き渡らせることができなくなります。
さらに、パソコンやスマートフォンを見続け眼を酷使しすぎることは、眼の乾きや疲労を感じやすくなり、東洋医学的には血の消耗につながります。
結果、筋肉は栄養不足となり、潤いを失って硬くなることなら、肩こりの症状をひきおこします。
このタイプの特徴として、よく夜中に筋肉がつることがある、眼のかすみや乾燥が目立つ、最近月経量が減少してきた、などを伴うことがあります。
5-6.暴飲暴食の繰り返しによるもの(湿痰阻絡型)
食べすぎや飲みすぎの繰り返しているうちに、肩こりがひどくなった。
このタイプは、暴飲暴食、夜間の飲食を繰り返して胃腸への負担が積み重なることから胃腸の働きが弱まり、体内で老廃物が作られやすくなり、それが体内循環を邪魔するようになることから、肩こりを悪化させます。
このタイプの特徴として、肩こりを感じる部位が冷たく鈍く重たい感じがする、痺れたような感じがする、頭重感や全身のだるさを伴う、痰がからみやすいなどの症状を伴うことがあります。
5-7.血液の停滞が原因となっておこるもの(気滞血瘀、瘀血気滞型)
肩こりの痛みで夜中に刺すような激しい痛みがする、過去に患部に打撲や強打などの外傷をしたことがある。
このタイプは、過去の怪我等の影響や体内の循環停滞が慢性化した結果、血液の流れが滞ることにより、肩こりを発症していることが多いです。
このタイプの特徴として、夜の時間帯に肩こりの症状が悪化することが多く、痛みが激しいため患部をさすると痛みが改善することがあります。
5-8.身体のエネルギー不足によるもの(腎虚型)
過労や加齢などにより体力が衰えると、身体の正常に機能させるために必要となるエネルギーが不足して、肩こりを発症します。
このタイプの特徴は、頭のふらつき、めまいが慢性的にある、疲労感、忘れっぽい、耳鳴り、目のかすみ、腰のだるさ、無気力などの症状を伴うことがあります。
5-9.身体の潤い不足によるもの(邪熱傷津型)
先にご紹介済みの、東洋医学的な過剰な熱(火)が生み出される状態が長期に渡ることで、体内の水分は蒸発することから、身体に必要な水分が不足することで肩こりを悪化させることがあります。
6.肩こりに対する鍼灸の施術例
次に、鍼灸による肩こりの施術例をご紹介したいと思います。
一度の施術で使うツボは1つです。施術時間は休憩含めておおよそ1時間程度です。
なお、鍼をする前には、あらかじめ詳しく問診をする必要があり、肩こりの症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼をします。
そのため、肩こりの症状、原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。
では、以下に肩こりに対する施術の一例をご紹介します。
【患者】20代女性、身長160cm、体重53g
【初診】202X年9月X日
【主訴】肩こり
【問診】発症は高校3年生の頃、大学受験の時にはすでに肩こりがあったと記憶している。
家族は、父、母、自分、姉の4人家族。母のすすめで、マッサージ店でマッサージを受け、肩こりは改善した。その後、1か月に1回程度、マッサージを受けるようになった。運動は得意でなく、小さいころから屋内で遊ぶことが多く、小中高ともに運動歴はなし。高校3年、受験期には勉強時間が増えて座っている時間が増えたことから、肩こりの辛さを感じる頻度が増えた。その後、大学に進学、大学在学中は肩こりで悩んだ記憶はなく、もしかしたら、肩こりは改善していたのかもしれない。
大学を卒業後、銀行に勤務する。就職した直後、新人研修が始まる頃から、再度、肩こりを徐々に感じるようになり、またマッサージを受けるようになるが、直後は楽になるが、翌日には症状が戻ってしまい、マッサージが効きにくくなったと感じはじめた。さらに、窓口業務で緊張する場面が増えると精神的な緊張感からか倦怠感が増して、さらに肩こりの悪化を感じるようになった。
このままでは、根本解決にならないとい思い、インターネットで治療方法を探し、鍼灸での治療を試してみたいと来院をした。
【初診時の症状】
・頸から肩にかけて張っている感じがする。右は左よりも症状がきつい。
・肩こりが悪化すると、背中も痛くなる。
・入浴をすると症状は楽になる。
・就職直後は、毎日、一日中緊張感を感じていた。
・性格は、緊張しやすく、神経質なところがあり、真面目である。
・仕事では、一日中椅子に座ってパソコンを使って過ごすことが多い。
・休みの日は、仕事の日に比べると症状は楽に感じる。
・月経の前になると肩こりが悪化する。
・眼の疲れが目立つ。
【特記事項】
・食欲はあり、食事量は普通。
・月経痛が激しく、月経前のイライラが激しい。
・月経前に肩こりが悪化する。
・前回月経があったが、量が普段よりも少なかった。
・仕事をはじめてから便がやや硬めで、排便は2~3日に1回と便秘がち。
【診断と治療方針】
精神的なストレスと身体の動かさないことにより、心身ともに過緊張状態となり、体内循環が停滞したことにより、肩こりが悪化したと診断。
従って、心身の緊張を緩めることを中心にした処置を行う。
【日常生活での注意点】
・適度に運動する。
【経過】
初診 施術直後、肩のこりがゆるみ、身体が軽くなったことを実感。その場で、来院時にあった張っている感じがほとんど気にならなくなる。
2診 鍼を受けた後はだるさもなく、肩こりは改善して調子はよい。
3診~ 予防を含めたさらなる治療の継続を本人が希望しており、現在も治療を継続中。
7.まとめ
今回は肩こりについて、症状ごとのタイプや原因、治療方法をとりあげました。
東洋医学においても、肩こりに対して鍼灸でのアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。今回はここまでとなります。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
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