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好きなものエッセイ

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「神社」

「神社」

神社が好き。

何でもない日常の中にたたずむ、ひっそりとした神社。

私は時々、どうしようもなく切迫した気持ちで、「神社に行こう」と思う。
「どうしても今、神社に行かなければ」と。
そして、ゆとりのある一日を選び、一人ゆったりと歩いて、行きつけの神社へ向かう。

神社の鳥居をくぐると、すべての色がワントーンもツートーンも鮮やかになったように見えるのは私だけだろうか。
どんな雨の日も曇りの日も、神社

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「パセリ」

「パセリ」

パセリが好き。

野菜の中ではダントツに。

昔、よく通った焼き鳥屋さんで、私は「パセリのお姉さん」と呼ばれていた。

「パセリが好きなんです」と公言し、つけ合わせのパセリをいつでも一つ残らずムシャムシャと食べる私に、お店の大将が「パセリのみのお皿」を出してくれたのが始まり。

あの時の感動といったら…!

山のように盛られた、神々しいばかりに緑輝くあのお皿を、私はきっと一生忘れない。

そしてそ

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「好きなもの」

「好きなもの」

好きなものについて考えるのが好きだ。

人の好きなものについて話を聞くことも。

「好きなもの」は、その人を構成している重要な魂の核だと思うし、ヘタな性格診断よりも、好きなものをどんどん書き連ねていけば、その人ができあがるとすら思っている。

だから自分の好きなものを見つけた時は、本当の自分にまた一歩近づいた気がして、自分が改めて愛おしくなる。
人の好きなものを知った時は、その人にまた一歩近づいた

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「ガーベラ」

「ガーベラ」

ガーベラの花が好き。

小さな頃からずっと。

昔会社の同僚と「相手を花に例えるとしたら何の花か」という話になったことがある。

気が強いのにどこかかわいらしくて、どんな相手とも気軽におしゃべりする上司は「金魚草」
いつも伸びた背筋が素敵な、華やかなおしゃれが得意な同僚は「白い百合」

そして私は即断で「ガーベラ」と言われた。

「すーっと伸びてパッと咲いている感じが、まさにガーベラのよう」なのだ

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「ワイン」

「ワイン」

ワインが好きだ。

白でも赤でもロゼでも。
スパークリングでもシャンパンでも。

ぶどうが好きなのかもしれない。
あの苦味の混じった大人びた甘さ。

私が言葉を覚え始めの頃、どうしても「ぶどう」と言えなくて、いつも「どぶう」と言っていたと、父と母はいまだに思い出しては笑う。
両親がまだ幸福だった頃の、遠い記憶。

外で飲む時、私が一杯目からワインを頼むと初対面の人は一様に驚く。
「お酒、強いんです

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「爪きり」

「爪きり」

爪を切るのが好きだ。

パチン、パチン、とやっていると、夫が「また切ってる!」と言って、こっちを振り向く。

私は小さい頃からピアノを習っていたので、こまめに爪を切るのが癖になってしまったのかもしれない。
最初に出会ったピアノの先生はなにしろとても厳しい人で、爪が少しでも長いと「今日はレッスンはできません」と言うような人だった。

あるいは、私の肌はとても敏感なので、掻いて肌を傷つけないよう、無意

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「夢」

「夢」

夢を見るのが好きだ。

私にとって夢とは、未来ではなく現在。

そう、眠りながら見る夢が好きなのだ。

怠惰も怠惰。これほど怠惰な娯楽があるか、というほどの怠惰。
でも、そうやって夢をたくさん見ながら、私は浅い睡眠をだらだらとむさぼる。

夢を見ている時間が長いせいか、私にとって夢は現実と同じくらいのリアリティを持って存在している。

例えば、現実の私はとても非社交的。親兄弟、友達ともめったに会わ

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「雨」

「雨」

雨の日が好き。

この、世界中が眠っている感じ。

私は、あきれるほど怠惰な人間なので、晴れた日が苦手。
快適な家の中にいるのなら「洗濯をしよう!お布団も干そう!シーツも洗おう!」という気にもなるけれど、晴れた日に外へ遊びに行くだなんて、考えただけで気分が悪くなる。
我ながら不健全だとは思うのだけど、晴れれば晴れるほど外へ出るのが億劫になるのだ。

それに比べて雨の日!

まぶしい太陽がないので、

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「写真」

「写真」

写真を撮るのが好きだ。

日常の中にある「非日常」

被写体にぐぐーっと近寄る。
これは、写真を撮る時の私の癖。

どうしても花の揺れがおさまらなくておかしいなと首をかしげていると、実は自分が近寄りすぎて手が被写体に当たっていた、なんてこともしょっちゅう。
しかもなかなかピントが合わないし、アナログカメラの頃はフィルムを随分無駄にした。

それでも私は近寄る。ぐぐっと。

見慣れたものも、ぐっと近

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「ドライヴ」

「ドライヴ」

ドライブが好き。

一人でするドライブ。

私にとって「ドライブ」といったら、それは「一人でするもの」であり、誰かと一緒であれば、それはもうドライブとは違う別の何かだ。

昔会社の後輩で「昨日のお休み何をしてたんですか?」とよく聞いてくれる子がいて、「ドライブ」と答えると必ず「誰と?」と聞かれた。
その度に「一人」と答えると、彼女は決まって「また一人でドライブしたんですか~??だから私を誘ってくだ

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「水」

「水」

水が好きだ。

水について思いを馳せるとき、私はそのスケールの大きさにほとんど気が遠くなる。

私がよく考えることの一つに、
「地球上の水の量は、地球が生まれた時から変わっていないのではないか」
というのがある。

雨は川となって海へ注ぎ、そして海は水蒸気となって空へ上がり、また雨となって落ちてくる。
宇宙が真空というからには、私の考えもあながち間違ってないのだと思う。

水が形を変えながらぐるぐ

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「ヴァイオリン」

「ヴァイオリン」

ヴァイオリンが好き。

あの、官能的で伸びやかな音色。

もう何年もずっとのお気に入りは、葉加瀬太郎さんの「冷静と情熱のあいだ」

この方のヴァイオリンはどれも素敵だけど、私にとっては今のところこの曲がダントツ。
延々とエンドレスで聞いているのにまったく飽きることなく、それどころか聞けば聞くほど惹かれていくから不思議。

胸の深いところを鷲掴みにされるような、恋に落ちた時のような、甘くて苦いような

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