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「ドライヴ」

ドライブが好き。

一人でするドライブ。

私にとって「ドライブ」といったら、それは「一人でするもの」であり、誰かと一緒であれば、それはもうドライブとは違う別の何かだ。

昔会社の後輩で「昨日のお休み何をしてたんですか?」とよく聞いてくれる子がいて、「ドライブ」と答えると必ず「誰と?」と聞かれた。
その度に「一人」と答えると、彼女は決まって「また一人でドライブしたんですか~??だから私を誘ってくださいよ~!」と私を叱り、
でもなんだか私は、そんな彼女がやけにまぶしく見えた。

一人は寂しいと心から思える、その素直さ。純粋さ。

そして本当に私とのドライブをセッティングする、私の後輩。

私は特に雨の日が好きで、雨が降ると嬉々として車に乗り込む。
一人で。
当てもなく。

今は「カーナビ」という便利なものがあり、そのおかげで私は最高に気ままに、思う存分知らない道を試してみることができる。
カーナビは、どんな所にいても必ず家に帰るための道を探してくれるから。
私の気まぐれに翻弄されるカーナビを観察するのも、また楽しい。

そうして気まぐれに決めた道を、しとしと降る雨の中、ただぼんやりと走る。

お腹が空けば何か食べるものを買い、退屈になれば音楽に合わせて大きな声で歌う。

ひとつ道をそれた先にこんな景色が広がっていたのか~、と一人感慨にふけったり、
過去の切ない場面がふと思い出されて、涙で視界が滲んだりもする。
そして、きれいな景色を見つければ車を降り、しばしカメラを手に歩き回る。

私はもう充分に大人で、一人でもちゃんと生きていける。
そう確認して、私は心の底から安心する。

一人、気ままに車を走らせながら。

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