見出し画像

「ワイン」

ワインが好きだ。

白でも赤でもロゼでも。
スパークリングでもシャンパンでも。

ぶどうが好きなのかもしれない。
あの苦味の混じった大人びた甘さ。

私が言葉を覚え始めの頃、どうしても「ぶどう」と言えなくて、いつも「どぶう」と言っていたと、父と母はいまだに思い出しては笑う。
両親がまだ幸福だった頃の、遠い記憶。

外で飲む時、私が一杯目からワインを頼むと初対面の人は一様に驚く。
「お酒、強いんですね!」と。
最初はビール、というのは、大人の間の暗黙の了解らしい。

でも、それにはちゃんと理由がある。
私は成人してからというもの、日々浴びるようにビールを飲んでいた。
まさに「浴びるように」。
そうして7~8年飲み続けたある日、パッタリとビールを受けつけない体になってしまったのだ。
ビールを飲むと、全身がかゆくなる。
「ビール酵母アレルギー」という言葉を、私はその時初めて知った。

特にビールでなきゃ、というほど好きだったわけでもないので、それ以来私はワインと日本酒を楽しむ日々だ。

昼下がりの野球場で、きんと冷やした少し甘めの白ワインを飲みながら、ひいきのチームを応援するのは、とても素敵。
寒い夜、ぶりかまの塩焼きなんかをつつきながら、好きな人と飲む熱燗は、本当に体に沁み渡る。
でも、「最初の一口は本当はビールが一番おいしいのに」という悔しさは、いまだに心に残るのだけど。

アレルギーというのはある一定量を超えると発症するらしい。
ワインと日本酒を一生ちびちびと楽しむために、私の酒席にはチェイサーが欠かせない。

いいなと思ったら応援しよう!