江口 彰

特定非営利活動法人いきたす 代表理事 /北海道教育大学 非常勤講師 北海道大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。学校から社会への学びについての実践や研究を主な領域に、プロジェクト型の活動を展開。2011年より高校への出前授業「カタリ場」を北海道内で企画運営する。

江口 彰

特定非営利活動法人いきたす 代表理事 /北海道教育大学 非常勤講師 北海道大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。学校から社会への学びについての実践や研究を主な領域に、プロジェクト型の活動を展開。2011年より高校への出前授業「カタリ場」を北海道内で企画運営する。

最近の記事

学校をOSのバージョン別で考えてみる

現在の学校システムは、学校3.X 数年前からソサエティ5.0と聞くようになりました。社会1.0は狩猟民族だった社会、社会2.0は農耕など一次産業が主となる社会、社会3.0は工業化された産業革命以降の社会、社会4.0は情報化社会とされ、社会5.0はサイバー空間とリアル社会の融合などと言われています。この社会の構造から考えますと、今の学校システムは産業革命後の明治時代に基本設計されましたから、3.0バージョンと考えられます。 学校3.0の基本OSはどのようなものでしょうか。あ

    • 「キャリア教育」の問題点と落とし穴

      キャリア、キャリア教育といった言葉が一般用語として定着したのは、だいたい2010年前後です。文部科学省から初めてこの用語が出てきたのは1997年だったと記憶しています。その後、日本の大学でキャリアセンターなどが設立され始めたのが2004年頃で、自分が所属している「日本キャリアデザイン学会」の設立もその頃です。 1990年代から2000年ごろにかけて、終身雇用が見直され、転職が当たり前のようになりつつある中で、転職支援企業も出てきました。派遣労働も法律が整備され、増加しました

      • 成長するための「負荷」とは?

        前回は、成長するために「負荷」をかけることを考え始めました。今回は「負荷とは?」をさらに深掘りして考えてみます。 「負荷」をかけるとは、どのような種類や分類ができるでしょうか。広義で捉えると、「ストレス」や「リスク」も負荷がかかっていると言えます。 ざっくり分類してみると、内面と外面に大きく二分できます。さらに内面は、肉体的負荷とストレスのような精神的負荷に分けられます。外側は、お金や道具などが消耗する、消費する、紛失するなどの物質的負荷と、時間を使う、長時間か短時間かと

        • 成長するとは、どういったメカニズムなのか。

          教育について語る人(特に学校教育)が多いと思いますが、人が成長するメカニズムについて案外関心が向かない傾向があるのではないかと感じます。学校教育では、人が成長するメカニズムについて学習する機会がほとんど見られません。国語、数学、英語などの教科は用意されていますが、どうしたら成長するのだろうか、といった発達や促進に関する授業はどこか置き去りにされています。 例えば、教員養成課程のコアカリキュラムのあり方に関する検討会(文部科学省)が平成29年度に報告を出していますが、扱ってい

          「20代中盤から後半のキャリアの悩み」

          ここのところ、卒業生(学生時代カタリバの授業を担ってきた人たち)から 転職しました。転職したい。転職を考えている。 仕事辞めました。仕事辞めます。 このままでいいのかしら? などなど、立て続けに聞く機会があった。いつくか聞いているなかで印象に残ったのは「自社製品についての疑問」だ。商品販売系のセールス部門で働いている人が中心だが、「自分ではとてもでないけど買おうと思わない商品を、お客さんに勧めるのは気が引ける」という類だ。なるほど…よく聞く話である。こうした理由で転職したい

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          人間は長期的視点を持てない。公共交通の課題から考えてみる。

          バス・タクシーの運転手不足、電車の廃線、新幹線開業に伴う並行在来線の問題など、公共交通の課題は、人口の少子化、都市化と過疎化、といった背景に伴い維持管理がほぼ無理というエリアがたくさんできてきました。自分がよく見ている教育関連でも、小中学校や高校の統廃合に伴い、徒歩で通学できない子たちの足の確保もかなりの負担になっていますし、それが原因で過疎化が加速化されています。さらに、トラック輸送等の物流の課題も出てきています。中長距離輸送で、大型・牽引免許を持って、体力のある労働者層も

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          これが公立高校の最先端エリア!福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校。

          福島県の浜通り、いわき市から電車で20分ぐらい、広野町にある福島県立ふたば未来学園高校。東日本大震災の復興支援の象徴的な高校として、創設段階からカタリバが関わってできたということもあり、いつか訪れてみたいと思って、この度ようやく念願かなって訪問しました。文部科学省指定事業「地域との協働による高等学校教育改革推進事業(グローカル型)」研究成果発表会の開催の情報を得て、公立高校の探究最先端の取り組みを学ぶ目的で、スタッフと一緒に、結局北海道からは我々2名だけの参加となりましたが、

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          札幌西校「探究の授業」を振り返る①

          2021年4月から札幌西高等学校「探究アドバイザー」の委嘱をうけ、教員3人のコアメンバーとタッグを組んで4人で実験を始めました。かれこれ1年半あまりが過ぎ、来年度は3年目の実験に入ります。3年目の計画を練り始めるために、これまでの出来事を振り返ってみることにしました。まず今年度スタート時に「探究に関連して」記述したものを振り返ってみよう。 2022年4月2日記述 カリキュラムマネジメントの相談事 新年度になりました。今年度に切り替わるタイミングの前後で、3つぐらいの北海道

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          NoMaps 2022 開催を終えて

          久しぶりに札幌市内をぐるぐる歩き回った5日間、NoMaps(https://no-maps.jp/2022)のメイン会期(10/19~23)が終わりました。NoMapsとは、アメリカ・テキサス州で行われている大規模イベント「South by Southwest」をモチーフにした札幌版のイベントです。セミナー・セッション、映画祭、実証実験、パーティ・音楽など、分野を超えて集積し、ある意味カオスな空間を濃縮させたような祭典で、今年で7回目になりました。直近の2年間はコロナ禍でオン

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          「カタリ場」の授業について、5者(自治体、高校、企業、大学、NPO)協定を締結しました。

          先日8月22日に、5者間で「カタリ場」を継続するため協定(「標茶町の教育振興、および教育振興を通じた関係人口の創出に関する協定」)を締結しました。本来はもっと早いタイミングの予定でしたが、コロナ禍で延期が続いてようやく締結式を行い、翌日は3年ぶりに「カタリ場」の授業を標茶高校で行いました。 今や日本の教育について少し詳しい人だと誰でも名前ぐらい聞いたことがある「カタリバ」は、そもそも大学生らが立ち上げたプロジェクトで、当時一番最初に開発して注目されたのが「カタリ場」の授業で

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          「地域」を学ぶための3つの基盤づくり

          今週は北海道道東地区を回っています。そのなかで話題になったこととして地域で学ぶカリキュラムのことに触れる機会がありました。ここ数年あまり「地域学」という名の学校設定科目がにわかに広がっています。その学校が立地している周辺地域を学ぶという科目は、そもそも小学校の3年生か4年生あたりに授業があります。自分の住んでいる周辺環境はどのようなものなのか。身近なものに見て触れてという分野は、少し歴史的なことにも含めて授業が各地で開発されています。小学生の時、NHK教育番組「たんけんぼくの

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          田舎の小さな小学校教員はのびのび仕事をしていた

          昨今、ブラックな働く場という報道など先行され、すっかり若者からマイナスのイメージになって教員不足に拍車がかかっているようだが、そうでない世界をチラッと見てきた。仕事柄、高校に出歩くことが多いが、稀に小中学校の訪問もある。この度、北海道道南にある、とある小さな小学校を訪問させてもらい、校長先生と50分ほど意見交換する機会があった。 地元教育委員会の方に案内され、到着した時はちょうどグランドで運動会の練習中だったこともあり、グランドにポツンと児童が集まっていた。全校生徒8名、教

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