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明石わかな | 本
2022年11月18日 23:10
この本は、認知症の方がどう周りを見ているのか、場面場面でどういった感情を抱きやすいか、通常の旅行に出かける感覚に置き換えながら考えさせてくれる本です。今回は、小説の解説ではなく、番外編ということで、認知症になっている方の「行動の理由」を解説しているこの本について、ネタバレ含みつつ考えてみたいと思います。認知症の方に直接インタビューした内容をもとに研究された内容が、直感的にわかりやすいイラス
2022年10月10日 14:13
この作品は、冬の蠅と自分を重ね合わせながら、透明感のある文章で倦怠感を描いた話です。梶井基次郎は『檸檬』という小説が有名ですが、今回は『冬の蠅(はえ)』という檸檬にも通じる小説について、ネタバレ含みつつ考えてみたいと思います。この小説は、患っていた病気と、将来への不安からくる倦怠感や焦りを、部屋にいた冬の蠅に自分を投影し描いた作品です。作者の梶井基次郎は、昭和時代には治らない病気とされ
2022年7月16日 18:53
この本は、過度な教育という車輪の下じきになった、ひとりの少年を描いた話です。ヘッセが書いた別の小説は、わたしが小学校の頃の教科書に載っており読んだ覚えがありますが、今回は『車輪の下』についてネタバレしつつ考えてみます。作者の故郷であるドイツを舞台に、自然豊かな情景描写を絡めつつ、主人公ハンス少年の半生を描いています。主人公ハンスは田舎町で育ち、幼い頃から成績が優秀でした。1890年代の頭の
2022年7月3日 19:51
この本は、若い人が大人の消費世界に飲み込まれていく成功転落物語で、芸能界を中心とした華やかな世界と、主人公の喪失感を描いています。ネットフリックスかどこかで映像化されたことを最近知り、原作の小説を思い出したため、感想を書いてみます。あらすじとしては、チーズのCM出演をきっかけに幼い頃からチャイルドモデルをしていた夕子が、母親の助けも借り大手芸能事務所に所属しブレイクを果たします。ドラマやバ
2022年6月29日 15:54
江國香織の良さはいくつもありますが、漢字で書きそうな箇所をひらがなにする審美眼が独特なので、それについて書いてみます。江國さんは、絵本作家というキャリアもあるからか、ひらがなに対するこだわりというのか、独特の目線を持っています。江國さんの小説である『すいかの匂い』の解説には、「江國さんは漢字とひらがなにも独特の選択眼を持っている。(中略) 文章の中での、言葉の力の入れ方を決めるために、江國さん
2022年6月27日 19:38
熱くなってきたので、涼し気な夏の本を紹介します。この本は、わたしが中学生くらいのときに読んでから何度も読み返している本のひとつです。15ページほどの短編が11本入っています。この本は、きれいな夏の和菓子の詰め合わせを眺めているような気持ちにさせてくれる本です。この本には川上弘美さんの解説も入っていますので、そちらと絡め、感想を書いていきます。川上弘美さんは『センセイの鞄』など興味深い作品を書い
2022年6月24日 18:50
この本は、どこかで読んだ書評の中の「肉食なのに、乾いている」という表現がしっくりくる内容の、不気味でありつつ、どこかからっとしている本です。この前、遠野さんの『改良』を読み、他の本も読んでみようと思い、『破局』を図書館で借りてきました。すごく整理されたきれいさなので、たぶん本名ではないのだと思いますが、遠野遥という名前もなんだか好みです。何がなのかは不明ですが、遠く遥かに、ってことでしょうか。わた