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源氏物語 末摘花は自分に似ている…?
源氏物語の感想、今回は第6帖末摘花の巻です。
末摘花といえば、源氏物語に登場する女性の中でいちばん醜い女性として有名です。
今回読んでみて、彼女の容姿に対する描写のえげつなさに衝撃を受けました。
あなかたはと見ゆるものは鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗り物とおぼゆ。あさましう高うのびらかに、先の方すこし垂りて色づきたること、ことのほかにうたてあり。色は雪はづかしく白うて、さ青に、額つきこよなうはれたるに、なほ下がちなる面やうは、おほかたおどろおどろしう長きなるべし。
訳
なんと不格好なと思われるのは鼻なのであった。思わずそこに目がとまる。普賢菩薩の乗り物かと思われる。あきれるばかり高く長く伸びていて、先の方が少し垂れて赤く色づいているのが、ことのほかに見るに堪えない感じである。
顔の色は雪も顔負けするくらいに白くて、青みをおび、額つきはとてつもなく広いうえに、下半分も長い顔だちは、多分おそろしく長顔なのであろう。
すごい酷評ですよね。光源氏が初めて末摘花の顔を見てしまった場面です。しかも、雪あかりの中で。
こういう容姿の評価って同性目線の方が容赦なさそうなイメージがあります。紫式部おそろしい。
末摘花の見た目が酷いのは知っていたけど、興味深かったのはその性格です。
・極度な引っ込み思案
・人付き合いが少ない
・おしゃれが苦手
・ユーモアのセンスがない(和歌を詠めない)
・古風な物を好む
これ、ぜんぶ私だ...。
そもそも源氏物語を読んでいることが古風だよね...。
と思いながら読んでいました。
末摘花は光源氏から手紙をもらっても
あさましうものづつみしたまふ心にて、ひたぶるに見も入れたまはぬなりけり。
訳
姫君はあきれるほど内気なご気性とて、まるで見向きもなさらないのだった。
引っ込み思案でお返事すらしない始末。
しかも、様子がわからないのを良いことに、光源氏は妄想を膨らませて末摘花を勝手に美化してしまう悪循環。
また、内気な性格に加えて、手紙の書き方や歌の読み方がわからなかったのも返事がなかった理由と言えそうです。
2人が初めて逢ったあと、女房たちから責められやっとのことで手紙を書くのですが、
見るかひなううち置きたまふ。
訳
源氏の君は見るかいもなくがっかりして、そのまま下にお置きになる。
紙の選び方、筆跡、文字の配置、ことごとく古めかしくてセンスのない恋文でした。
この場面、光源氏がため息をついて手紙を置く様子が目に浮かんでクスッと笑ってしまいました。
そのような手ほどきをしてあげられる、気の利いた女房も周りにいないようでかわいそう。
他人の事だと思ったら笑えるけど、私も人付き合いが少なくてふだんやり取りするのは親くらいです。
母は「❗️❓」とかの絵文字をかなり多用するのですが、これは「おばさん構文」で若い人は使わないと聞いてびっくりしたことがあります。
世間との関わりが薄いと、知らず知らずのうちに時代遅れになってしまって、いざというときに恥をかくのだなとグサっときました。
光源氏が末摘花に呆れる場面を挙げたらキリがないのですが、それでも彼女の面倒を見ようとするのは自分だけだ、と心を決めていきます。
末摘花の巻では好色者だけど、懐の深さもあるのだなと光源氏の新たな一面がわかりました。
彼女は蓬生の巻で再登場するので楽しみにしておきます。
源氏物語の感想記事です
また次の記事でお会いできますように♪