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河原 真宙
2021年7月25日 19:56
何を見てもあなたを思い出す世界に独り取り残された。変わらず笑い声に包まれた世界に音だけを失くした。暗闇ではなくただの黒い夜に途方に暮れてあなたの声に似ている音にただ手を伸ばした。何を見ても過去に重ねて時間を止めて。何をしても過去に重ねて今から目を背けて。あなたの居ない世界で光を感じてしまう事がただ怖くて。壊れた夜の隙間に逃げた。あなたの居ない世界で初めての
2021年8月5日 10:48
初めて見たのは泣き顔。ただ光に包まれた小さな生命。抱き締めながら私は自分の強さと弱さを知りました。正しい事への怖さをそれを貫く脆さを闇の中でしか光は射さない事を、奪われた時間が囁いている。最後に見たのは笑顔。ただまっすぐ見つめる幼い生命。抱き締めながら目を背ける私は吐かれた純粋な嘘に憩おう。涙だけでは癒せない傷。死ぬ事でも戻せない時間。概念ではない事実だけが転がる
2021年8月3日 23:16
突き飛ばされた駅のホーム貴方の躊躇いで死なずに済んだ。人混みに紛れた貴方の顔忘れるはずもなかった。他人の靴を履いた様な違和感が私を包む電車の中。他人の視線が捻れてぶつかり熱く私は異物の様に焦げる。駅のホームは今日も人に溢れて私はいつもと同じ最前列で俯く。私の知らない他人が私の事を知っている。貴方を知らないはずの私は貴方をずっとさがしている。いつもの風景なのに貴
2021年8月2日 00:05
目が覚めれば独り切り。朝の光が輪郭を滲ませていた。昨日の残像を思い出すのは夢から覚めた悪夢。瞼の裏に色が継ぎ足されていく。押さえつけながら始まる朝。目を閉じても独り。月の光が熱帯夜を運んでいた。寝言で呟く祈りの言葉。縋り付き引き摺る長い影に怯える。それでも生きている私。もうすぐ会えるから待っていてねと笑う。月の光は太陽だと知らずに。
2021年7月26日 14:48
約束を交わさずに済んだのはせめてもの救いになった。金曜日の夜は月が青かった事思い出せたから救われた。夜に降る雨にだけ濡れる花を見た。悲しく無いのに涙する夜に重ねていた。最後の言葉を呑み込んだのは青い月が雨を呼ぶ事を知っていたから。子供の泣く声が雨によく沁み込んで地面に落ちる前に消える煙草の煙。声のある方に振り返っても、独り。いつかどこかで会えると確信しながら言い聞かせ
2021年7月26日 00:04
優しいだけの別れを贈ろう。明日もなく未来も無い。未練を殺して生きよう。炎に包まれた別れの言葉。灰を集めても風に散らそう。乱れた髪で明日を生きよう。
2021年7月13日 13:51
いつも濡れた町店が始まる前から降っていた。傘を失くした人が歩いてる歩きながら歌っていた。咳込みながら酒を吐く。歌いながら独り笑ってた。いつも濡れた町店が終わっても降っていた。打たれながら雨を見上げてる湿った煙りは臭いが濃い。咥えたまま独り探していた。今日も町には雨が降り奥の席で夜を探していた。あれから誰かが死んだと聞いた。誰かが誰かと知らないが泣いた。今日も誰か
2021年7月12日 14:33
今日を見渡せば、まだ夜が始まらない。激しく降ると言われた雨も、まだ気配を感じはしない。明日を諦めれば、遠雷に気が付かない。潰されて弾けかける太陽が、夜の前に激しく燃え上がる。もう、会えない貴方を思う。記憶にならない様に思い出にならない様に。青く浮かぶ月ならば、誰かが悪口を言う夜。曖昧に浮かぶネオンの隙間からはいつも灰色に揺れて見えた。夜に凍るネオンを辿る。何も思い
2021年6月28日 10:36
笑顔の世界からあのコはやって来た。花の匂いに紛れて少し汗の匂いがした。溢れる光を受け止め目を瞑る様に笑う。大袈裟に打つ手の平が更に笑顔を誘う。修学旅行中に母が死ぬと言われて家を発つ。全てのお寺に祈れば叶うと思い込む。誰も知らない祈りの行方に雨を視る。独り言の世界にあのコは迷い込む。悲しい世界で目を開き確り笑う。蒲公英の首を掴み風に乗せて息を吹く。迷う先で更に風を受けて、笑う
2021年5月7日 16:47
伸ばせば届く小さな赤ん坊限り無く小さくて弱い命がそこにある。手の平を伸ばして繋ぐ手の平を合わせて導ける愛された事しか無い赤ん坊は私の笑顔に安心していた。笑顔を疑わない赤ん坊は私の手の平に応えて、繋ぐ。握りしめなくても導ける添えるだけでも導ける。限り無く小さな命に耳を塞いだ手の平。消えたのは音だけで良かった。