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短編文学的エッセイ 【PSPと、時を経た僕】

PSPを買うなんて、少し前の自分には想像もできなかった。大人になってからは、ゲームに対する情熱も次第に薄れていくものだと思っていた。だけど、ある日、何かが突然動き始めた。衝動的にPSPを手に入れた。Amazonで注文をクリックする時、ふと僕は、昔の自分に戻っていたような気がした。懐かしさと、手に届く範囲にあるものへの欲望。それが入り交じり、僕はこの一瞬の決断をした。

PSPは、僕の中高生時代の象徴だった。あのシルバーのPSP2000シリーズ、ゲオで中古で買ったそれは、僕の日々を彩っていた。そして今、同じようにシルバーのPSPが僕の手元に戻ってきた。巡り合わせだろうか。色や形、そして手に感じる重み。それらはすべて過去の記憶を鮮やかに呼び起こす。PSPのロード中の「ジー、ザー」という音、それすらも当時の僕にとっては、何か特別なものだった。それはあの頃の生活、感覚、そしてあの瞬間瞬間を僕に再び取り戻させる。

夜遅くまでモンハンセカンドGをプレイしていた記憶が蘇る。学校の宿題を適当に済ませて、布団にくるまりながらPSPの画面に夢中になっていた自分。クエストをクリアする喜び、モンスターに敗北する悔しさ。それらはすべてあの小さなスクリーンの中で展開されていた。時間を忘れて、ただただゲームに没頭していた。その感覚は、今でも僕の中に残っている。大人になって、多くのことが変わったけれど、あの瞬間の情熱は変わらずそこにある。

そして、今回手にしたのは3000シリーズのシルバーカラーのPSPだ。かつて持っていた2000シリーズよりも薄く、軽く、本体も小さく感じる。それはまるで、あの頃の自分からアップデートされた今の僕自身を映し出しているかのようだ。大人になると、物事が次第に選択肢の多いものになっていく。金銭的な余裕が生まれ、欲しいものを手に入れることができるようになる。それでも、不思議なことに、僕は再びこの小さなゲーム機に戻ってきた。あの頃の思い出を抱えつつも、今の自分にふさわしい形で、それを手にしている。

このPSPは、僕がかつて持っていたものと似ているけれど、確かに違う。それは、僕が過去の自分と同じでありながら、同じではないことを象徴しているのかもしれない。過去に対して感じる懐かしさと、今だからこそ感じる新鮮さ。まるで大人になった自分を確かめるように、PSPを手にしている。

PSPを手にして、再びゲームをやりたいという強烈な欲望が戻ってきた。ゲームというのは、ただの娯楽ではない。僕にとっては、それが生きるための小さなモチベーションだった。仕事を終えて家に帰り、PSPを起動する。その音ですら僕にとっては愛おしいものだ。日常の中にあるささやかな楽しみ、それは人生を生きるための潤いだ。

大人になると、何かを「楽しむ」という感覚が薄れてしまうことがある。それでも、時にはこうして過去の断片を拾い集め、それを再び楽しむことで、自分の中にある何かが復活する。PSPを買ったのは、まさにそのきっかけだったのかもしれない。そして僕は、これを手にしたことで、もう一度あの頃の自分に出会うことができたのだ。

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