「構造主義?お前の顔についてんじゃんw」ー哲学初心者が『寝ながら学べる構造主義』を読んでみたー
『構造主義を知らないということは〇〇しているのと一緒だ』
高校レベルの哲学知識しか持たない大学生が哲学の入門書、『寝ながら学べる構造主義』を読んでみました。難解な思想と悪戦苦闘しながら、駄文8割奇文2割で、構造主義のキホンに触れていきます。
『寝ながら学べる構造主義』を読んだ。
「哲学王に俺はなる!」
白昼堂々路上でそう叫んだ僕は、気づけばkindleでこの本を買っていた。誰もが一度は夢に見た哲学王。ルフィもシャンクスに出会っていなかったら、おそらく同じフレーズを叫んだあと、二度とフーシャ村を出ずに思索にふけっていただろう。
しかし、体は村を出ずとも、頭はじっとはしてられない。大きな野望を抱いた未だ名もない哲学者の卵は、知性の大海原へと小舟を漕ぎ始めたのである。
とまあ、のっけから陳腐な比喩を書いてしまったが、実際はもちろんそんな大層な野望は抱いていない。
なんか哲学書ってかっけ~、それぐらいの思いで、何となく知ってる哲学用語である『構造主義』(無論、意味は不明。)を検索欄に入力し、一番上に出てきたものを買った、それだけである。だいたい哲学王なんて言葉は、この世に存在しない。
本記事は書評ではない
『寝ながら学べる構造主義』(内田樹著、文春新書)。この本は2002年に初版が発行された、哲学の入門書である。発行以降何度も入試問題に使われ、こと『構造主義』の入門書としては、本書に比肩するものはないとまで言わているとか、いないとか。いずれにせよ、初学者に長年愛される名著である(もちろん、買ってから知りました)。
したがって哲学徒でもなく、哲学書と言えば高校生の頃に『方法序説』(ルネ・デカルト著)と『ソクラテスの弁明』(プラトン著)※を読んだ程度である僕にとっては、うってつけの本である。(注1)
ゆえに本記事では、哲学知識のほとんどない大学生の僕が、背伸びして読んでみた哲学書の内容とその感想について、駄文8割奇文2割で、書き連ねていこうと思う。だから、間違っても書評などという大それたものではないことは頭に入れておいてほしい。
※ちなみに、先の二冊は一日で読み切れるほど分量が少ない。それ故「哲学書を読破した」という実績を得るにはかなりコスパが良く、オススメだ。
はじめての構造主義
構造主義は現代の常識である
この本を手に取った時の僕、そしてこの記事を読んでいるあなた方に共通する疑問。それは間違いなく、
構造主義って何や。
である。まあ言葉くらいは聞いたことあるかもしれない。僕も昔倫理の教科書で見た。確か太字で書かれていたので、「テストに出る単語」ということは間違いないだろう。でも、それだけだ。
Wikipedia曰く、構造主義とは1960年代にフランスで生まれたらしい。フランス語で“structuralisme”。なんかそのまんまっぽいな。
具体的な思想を見てみよう。本書には何と書かれているだろう?筆者がズバリ”構造主義とは”について書いている部分があるので、そこを引用してみる。
長くなってしまったが、どうだろう。少しわかりづらいと感じた人もいるだろうか。そういう人のため、というわけではないが一応僕なりに平易な口語体でまとめてみた。もし完璧に理解した人がいれば、猫の写真でも眺めながら少し待っていてほしい。(注2)
つまるところ、こうではないだろうか。
「私たちの考え方とか世界の見方とかは、自分たちのいる時代・地域にめちゃめちゃ影響されてるよね。だから別の時代・地域に属する人ごとに世界の見え方って全然違うよね。」
…何か、当たり前のこと言ってないか…?
そう思った人も多いだろう。そうなのである。実は、構造主義とは、もうすでに僕たちの常識に浸透してしまっている。僕たちは知らず知らずのうちに、構造主義の方法を使って何かを考え、感じている。「構造主義は現代の常識である」。これこそが筆者が本書で初めに指摘する大きなポイントである。(注3)
筆者曰く50年ほど前、つまり構造主義が現代の常識ではなかった頃は「時代や地域の価値観の違いに、どちらが正しいとかはない」なんて考え方はなかったという。
生まれて20年とそこらの僕からしたら俄には信じ難いが、どうやらそうらしい。
筆者はベトナム戦争の例を挙げて、その当時の常識の違いを説明している。なるほど。筆者は今年で御年73歳。紛れもなくその時代を生きた彼が言うのなら、まあ間違いないだろう。
歴史の教科書には確か、ベトナム戦争に対してアメリカで大規模な反戦運動が巻き起こった、と書いてあった。しかしあれは、『ベトナムとアメリカの双方の価値観の違いを理解すべきだ』ということではなくて、基本的には『アメリカは間違っている』という主張がメインであったということか。
まあ兎にも角にも、僕たちが、異なる社会に異なる価値観があるのを当たり前、と思うようになったのは実は結構最近のことらしいのだ。そしてそういった考え方を常識たらしめたものが、紛れもなく構造主義だというわけである。
だから僕らの常識ってのは歴史全体を貫く強い普遍性を持っているわけではなく、構造主義が世界で流行った時に形づくられたものに過ぎない、ということである。
なるほどね。しかし何というか、僕たちは、構造主義があまりにも常識として浸透しすぎたせいで、もはやそれ自体がなんであるかを忘れてしまったということだ。本末転倒、あるいは灯台下暗しである。それでは先ほど「構造主義って何や?」などとぬかしてしまった僕(たち)は、何だかマヌケである。まるで顔に眼鏡をかけたまま、眼鏡を探すおっちょこちょいののようだ。
いや、これからは言ってやろう。「構造主義って何?」と聞かれたら、
「いや、お前の顔についてんじゃんw」
と。
まあこれが構造主義のだいたいの基本、というわけだ。たぶん100%正確に理解できてはいないだろうが、僕は初学者。多めに見てほしい。間違ってたら教えて。
まとめ
構造主義とは、「私たちの考え方とか世界の見方とかは、自分たちのいる時代・地域にめちゃめちゃ影響されてるよね。だから別の時代・地域に属する人ごとに世界の見え方って全然違うよね。」という考え方である。
実は、構造主義とは現代の常識である。
『寝ながら学べる構造主義』?
構造主義が何かを大まかに理解すれば、次は構造主義の原型となった思想の解説が続く。詳しくは割愛するが、どうやらマルクスの人間観は構造主義の源流の一つらしい。このおじさんは本当に偉大だな。
そうして前史の話が終わればいよいよ主役が登場。構造主義の思想家達である。フーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカン(注5)、etc…。どうやらいろんな学者がいろんな分野で構造主義の考え方を用い、学界でブイブイ言わせていたらしい。
そうやって読み進めていくうちに、構造主義について一つわかったことがある。それはズバリこうだ。
構造主義は、寝ながら学べない。
残念である。しかし当然でもある。だって難しいんだもん。正直ほとんど眼球を活字に合わせて上下運動させているだけの時間帯もあった。知識が増えるどころか、視力が下がった。不本意だ。
エクリチュール、政治的身体、鏡像段階、反対給付、etc….。何ですかそれは。初めましてにもほどがある。聞いたことのない難解単語のオンパレードで、思考回路はショート寸前だ。ただ僕は哲学書を読んでカッコつけたかっただけなのに.....。
しかし読者の皆さんは思うかもしれない。ちょっと待てよ、ではほとんど本の内容を理解せず、こんな長ったらしく文章を書いているのか?、と。ふざけるな、時間を返せ、と。俺の時給は貴様みたいなよくわからん学生風情より何倍も高いんだぞ、と。殴るぞ、と。
まあまあ落ち着いてくれ。僕も一応は文系学生。自慢じゃないが、センター試験の倫理も一マチかそこらだった。全くの哲学オンチってわけじゃない。そして何よりこの本、主題は難解と言えど、初学者向けに非常にわかりやすく書かれている。構造主義は寝ながら学べない。実は意味は一つじゃないのだ。
この本は毎晩寝る前に読むことにしていた。だいたい30分くらい読んだら、眠くなって夜の1時には寝れるかな。そう思って0時30分くらいから読み始める。しかしどういうことだろう。気が付くと時計は毎晩、3時を回っていた。
そう、確かに構造主義は寝ながら学べるほど簡単ではない。しかし一方でこうも言えるのだ。構造主義は寝ながら学べるほど退屈でもない。難しい言葉遣いや論理展開に悪戦苦闘しながらも、なるほどこれはおもしろい!と目を見開くような発見が随所にあるのである。
ということでここからは少し、僕が感じた構造主義の面白さをいくつか紹介したいと思う。難しくても面白い、学問の大変さと楽しさが詰まった思想の数々をぜひ堪能していただきたい。
と言いたいところだったが、皆さんもお気づきのようにこの記事、ずいぶん長くなっている。既に4,000文字を超えているらしい。限られた文字数の中に伝えたい事を書き収める(就活のESとか)のはすごく苦手な分、無駄な事はいつまでもダラダラと書いてしまう。残念だが、僕に俳句は無理そうだ。
てなわけで本書の中でも、僕が一番面白い、と感じた部分を一つ、次の記事でとりあげようと思う。いやまだ書くのかよ。と思った方もいるだろうが、別にいいだろう。ここまで読んでるってことは、どうせ暇なんだから。
まとめ
構造主義は寝ながら学べない
構造主義は寝ながら学べない(2回目)
注釈
内容は理解していない。
かわいいから。
先述したように本書は上梓されたのが2002年。筆者の指す”現代”は20年以上前ということになるが、ここで指す”常識”が現在とそう変わらないため、ここでは言及しない。
今から50年ほど前。
筆者は彼ら4人を「構造主義の四銃士」として紹介しているが、この呼び方が筆者独自のものなのかどうかは不明。
参考文献
内田 樹著 寝ながら学べる構造主義 (文春新書) kindle版
Wikipedia『構造主義』