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【倫理の指導案】現象学(フッサール)×ペンがあることを証明せよ
本授業のターゲット生徒
「いやいや、ソレって当たり前じゃないっすか」とかいう生徒
当たり前?本当に見えてるか?
見ないものを見ようとしてるか??
当たり前にこそ、本質ってあるんだぞ。
|授業の概要|
分野:現象学(フッサール・メルロ=ポンティ)
テーマ:ペンがあることを証明せよ。
目標:意識を意識できる。
|筆者の紹介|
この記事を書いている人:
ゆとりんり
新卒で倍率100倍の民間企業に就職後、教員に転職
教員採用試験の採用枠1枠に1発合格(働きながらの完全独学)
県に授業の研修用資料の提供や、学校の試験問題見本の作成を行う。
ブログで「ちょっと変わった授業アイデア」まとめてます。
|このページの見かた|
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\導入(アイスブレイク)/
まずはアイスブレイク。
授業冒頭で、早速ペンについて考えてみましょう。
皆さん、ペンは持ってますか?
机にペンを置いてください。
で、ペンは机の上にありますか?
生徒からすると何を言っているんだ…。という感じでしょうが関係ありません。これが今回のメインだからです。次なる発問です。
では、グループ活動を行います。グループのうち1人だけがペンを卓上におき、目を閉じてください。
その状態で目を閉じている人に質問します。机の上にペンはありますか?
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大体の人が「ある」と答えることでしょう。そこから授業を展開していきます。現象学の始まりです。
「ある」と答えた人、グループのみんなに目をつむっていたのに「ある」と断言できた理由を述べてください。
「周りの人が見てたじゃないっすか」なんてサラッと答える生徒のためにもう1発問。全員参加です。
証明できましたか?「こいつらが見てたから」とか言った人もいるでしょう。でも次は許しません。全員で目を閉じてください。さてその状態で、ペンがそこにあるということを証明してください。
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\展開(フッサール) /
「いやいや誰も触ってないからあるに決まってるっしょ」とか言われるので、状況を整理します。すると当たり前と思っていたことが不思議に思えてきます。生徒にも体感してもらいましょう。
あるに決まってるやろ。って思った人のために状況を整理します。
1.前提として「ある」と言うためには、ペンを認識する必要がある
2.人間は幽体離脱したように、意識を飛び出して認識はできない
目をつむっていて、認識できてないのに「ペンはそこにある」と言えたのはなぜでしょうか?
先の質問当たりから、生徒は答えに詰まり始めます。そこに救いの手を差し伸べるのがフッサールなのです。
さて、答えに詰まる人が出てきたところでフッサールを紹介します。この人物は現象学を唱えます。これは、意識に現れる現象を意識するというものです。
私たちは普段、現実にあるものを当然かのように受け入れてますが、一旦その判断を停止し、意識に意識を向けようというものですね。
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と、言っても難しいと思うので、今回はより詳しい解説を1枚のスライドにまとめました。このページのためだけでも利用する価値ありです。
詳しく説明します。私たちはこうやって学校で物事を習い、理解し、世界はこういうものだを作り上げています。地球が太陽の周りを回るなんて見たことなくても、そういうもんだと理解しています。
けど、結局それを理解するのは自分。信じる信じないも自分。ペンを手に持っているからペンはそこにあると理解しているのと何ら変わりません。つまり、全ての物事の本質的意味は自分の頭の中にあるのです。つまりのつまり、答えはずっと自分の意識下にあるということなのです。
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だからフッサールはいうわけです。「一回その判断を停止して、認識のあり方の方、意識を意識せよ」と。
この現象学の本質をみようという考え方には、もとになった思想があります。倫理の現象学の授業でここまでやる先生がどれほどいるかわかりませんが、合わせて確認した方が理解しやすいのでスライド入れました。不必要だったら消してください。
そもそも現象学は「本質をみよう」というものですが、かなり前の授業で似たような内容をやったと思いませんか?そう、プラトンのイデア論です。フッサールの思想はこの考え方を踏襲しています。
\展開(メルロ=ポンティ) /
でも意識を意識が難しい人のためにもう1つ思想をします。それがメルロ=ポンティです。
![](https://assets.st-note.com/img/1730563529-clu6oK1hEI2YVUpFwe3Ls8A9.png?width=1200)
フッサールが意識に意識をという思想ですが、メルロ=ポンティは身体に注目します。つまり、意識するにも知覚(身体)することが先にあり、重要視するなら最初の1歩目が先やろ!という思想ですね。
さらに興味深いのは身体は物質的な領域だけではなく、精神的な領域にも属するという考え方です。となるとフッサールの意識に意識という部分も、体に注目するだけで達成ということになってしまいます。
メルロ=ポンティの思想はよく幻影肢(げんえいし)で説明されます。普段私たちは見たり触ったりしていること以上のことを感じているということが言いたいところです。
身体が精神領域にも属するとはどういうことか説明しましょう。人間は普段、無意識に歩いたり投げたり、はたまた事物を見たりしています。それが積み重なると習慣的身体と呼ばれるように、本当に無意識下で行えるようになります。
そして、事故などで脚をなくした人が「なくした脚が痒い」と思うことがあるそうですが、それは無意識下に擦り込まれた感覚からくるものです。つまり、身体は普段の行動を通して精神領域にも何らかの影響を与えているということになるのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1730563576-MojO4ZHtKpw0GmabiWUExAIC.png?width=1200)
有名なメルロ=ポンティの言葉を紹介し、解説も入れております。思想家の考えは言葉で頭に置いておくというのも、頭の整理に有効です。
「ここは今から倫理です。」の高柳先生の授業がそんな感じですね 笑
「真の哲学とは、世界を見ることを、学び直すことである」
普段私たちは何も考えず行動してますが、何気ないその行動の中にそれ以上の情報があるのです。それを見ることができるようになるための哲学なのですね。
\まとめ(本題に帰ろうぜ)/
忘れてはダメです。今回のテーマは「ペンがあることを証明する。」です。さあ、最後に思想を活用できるように考えて終わりにしましょう。生徒からどんな答えが出てくるか楽しみですね。シンプルですが結構レベルの高い発問かなと思います。
最後にまとめて終わります。グループで意見を共有しましょう。現象学を応用して答えてください。目の前にペンを置いて、目を閉じます。そこにペンがあることを証明してください。
\余談(まとめ について)/
先の質問に対して、シンプルではありますが「人間は意識以上のことは意識できないので、私の意識下で”ある”ものは”ある”」とか答える生徒が出てきたら面白いなと思います。
倫理を通して捻くれた生徒を育成しているようで、授業のたびに複雑な気持ちにはなりますが、まあよしとしましょう。
また、以前『バガボンド』という宮本武蔵の人生を描いた漫画を考えるというnoteを書きましたが、今回の現象学はこれだと思います。
天下無双を目指す宮本武蔵が、天下無双に最も近いとされる柳生石舟斎に尋ねます。「天下無双とは何だ」と。対する柳生石舟斎は「ただの言葉である」「目を閉じよ どうじゃ お前は無限じゃろう?」とこたえます。
記事の中ではウィトゲンシュタインを出していますが、「目を閉じよ」の方は、意識下に本質が見えるという点で現象学ぽいなぁとも思います。
漫画も倫理を学ぶとより面白くなります。登場人物の考え方に目がいき、言葉一つひとつに注目できます。ぜひ倫理の魅力も併せて高校生に授業をしてみてはいかがでしょうか。まずは自分が授業を楽しんで。
余談 筆者より
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