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1on1下手が"カウンセリング技術"で部下と信頼関係を築けた話【正しい傾聴のやり方】

こんにちは、ゆるねこです。
今回は、もともと人付き合いが苦手で1on1のやり方もわからなかった私が、カウンセリングの技術を取り入れたら上手くいったという話をしようと思います。

1on1って、結構むずかしくないですか?

1on1とは「上司と部下が定期的に対話し、信頼関係を築くための時間」のことを意味しています。いわゆる「面談」が上司による人事評価や業務確認がメインなのに対し、部下に自分の目標や課題について話をしてもらうことが目的です。

言葉の意味や目的はわかっているものの、

  • 1on1をしているのに、部下が本音を話してくれない

  • 部下の相談に対して、アドバイスが思い浮かばない

  • フィードバックの仕方がわからない

  • 1on1をやっても何かが変わっている気がしない

  • 「傾聴が大事」と言われるけど、傾聴のやり方がわからない

といった悩みはありませんか?

かくいう私も、1on1のやり方がわからずに四苦八苦していた時期があります。
得に「部下の相談にすべて答えなきゃ」と気張っていたこともあり、部下の話を最後まで聞かずに早とちりで答えてしまったり、知ったかぶりをして場をしらけさせたり・・・なんてこともありました。あの頃は浅はかで未熟だったなぁと反省しています。

そんな私ですが、1on1で「カウンセリング」の技術を取り入れたことで、部下との信頼関係を築くことができるようになりました。

具体的には、米国の臨床心理学者でカウンセリングの基礎を築いたカール・ロジャーズが提唱した「傾聴」の3つの構成要素(※)である「受容・共感・自己一致」を実践してみたのです。
※中核三条件、ロジャーズの三原則ともいいます

1on1で活きる、ロジャーズ「傾聴」の3要素

①受容(無条件の肯定的敬意)

受容とは、相手の考えや感情を否定せず、そのまま受け入れることをいいます。部下の言うことを否定しないのはもちろんですが、我々上司はとかく「アドバイス」を出したり「解決」を促したりしがちです。それをぐっとこらえて話を最後まで聞いてみるのです。

例えば、部下がお客様とのやり取りで苦戦しているとします。部下は「あのお客さん、自分で言ったことを忘れてすぐこちらのせいにしたがるんです」と話したとしましょう。
ここで、上司としては「他責思考じゃ同じことの繰り返しだ、こちらにも非がないか考えないと」や「そういうお客様には事前にメールで、確認事項を残しておかないと…」と言ってしまいがちですが、ここでは「そうなんだ」と返すのが受容のやり方。

部下「あのお客さん、自分で言ったことを忘れてすぐこちらのせいにしたがるんです」
自分「そうなんだ」
部下「昨日も、自分で『〇〇してほしい』って言ったのに、今朝になったら『なんで勝手なことするんだ』って言ってきて。」
自分「ほぉ、そんなこと言ってきたんだ」
部下「さすがにキレそうになりました」
自分「そりゃ君の立場ならキレそうになるね。状況をもう少し詳しく教えて!」

人は感情を抑制してしまうと、思考に悪影響を及ぼします。もし上司がすかさず「それは君にも落ち度はなかったの?」と言ってしまった場合、「初っ端からこっちが悪いと決めつけてる!」とか「そういうことじゃない!最後まで聞かずに言わないで」という感情が部下の心に生まれてくる可能性があります。
皆、大人なので表立って言葉や態度には出さないですが、だからこそ余計に抑制された感情は尾を引き、このあとに解決策を考える段になって冷静になれなくなる可能性もあります。

「さすがにキレそうになりました」という感情も、人間だから思ってしまうのは仕方ありません。「思ってはいけない」と蓋をすることは感情を抑制してしまうので正常に処理することを妨げる要因になり得ます。案外、さくっと口にしてしまった方がスッキリするものです。

ただし、感情を出して良いのは「上司(自分)の前だけ」というルールを事前に敷いておいた方が良いです。お客様に対して表出するのはもちろんトラブルのもとですし、同僚に話してネガティブな感情を伝播させるのはあまり良いことではありませんので。

②共感

共感とは、相手の立場になって気持ちを理解しようとすることです。

前述の部下に対して
「そりゃ君の立場ならキレそうになるね」
「普段からきっちり仕事をしている君だからこそ、それは心外だね」
「なるほど、だから君は今朝からちょっと怒ってたんだね」
といった声掛けが例にあたります。

注意事項としては「主役泥棒」にならないこと
「わかるー!私もこの間こういうことがあって…」
「私が5年前プロジェクトリーダーをしていた時には、もっとそういうお客様がたくさんいて…」

部下の話を踏み台にして隙あらば自分語りする上司は少なくありません。
特に後者の「自分はもっと辛い経験している」話をする人が多いんですよね。
本人としては「私に比べれば、君の辛さなんて大したことないって思えるだろう」「自分がやれたんだから君もがんばれ」という激励のつもりのようですが、部下からしてみたら「上司の話をよいしょしながら聞くモード」に切り替わってしまうのでストレスなのです。

「○○課長ほどすごい人でも苦労してるんだ!自分も頑張ろう!」って思ってくれる部下もたまにいます。でもそれは、その人が特別に「いい人」なだけなので、ぜひ大切にしてあげてください。

かくいう自分も、言ってないつもりで主役泥棒をしてしまっていることがあります。お恥ずかしい。上司という生き物は、どうしてこう自分自分なのかと私自身も頭が痛いです…。

一方で、「あなたのことは全部わかっているよ」という姿勢も実はNG
人間同士、100%分かり合えるなんてことは不可能です。職場で数分話を聞いただけで「わかっている」という錯覚に陥るのは、それは「過去見てきた人をパターン化して当てはめている=決めつけている」ことにすぎません。

大事なのは、「あなたと私は別の人間。だけど、少しでも良いから考え方や感情を理解したい」という姿勢でいることです。

私も「”自分も同じ気持ち”なんて言ったら失礼なんだろうけど、あなたがそういう気持ちになってしまう理由はちょっとわかるよ」という伝え方をしていました。

③自己一致

自己一致とは、自分自身を飾ることなく、感じていること・思っていることを素直に言葉や行動で示せている状態です。自己一致した状態で部下の話を聞きます。

これが一番文章で伝えるのが難しい概念なのですが、いくつか例を出すと「お世辞を言わない」といったことや「できる上司ぶらない」などでしょうか。

本当は思ってもないことを言ったり、本当の自分ではなく虚勢を張るような態度をとったりしないのが大切です。

メンタリストや心理学者など、人の嘘を態度で見抜く人たちっていますよね?逆に言えば、人は嘘をついているときに他人が見てもわかるサインを出していることになります。

メンタリストや心理学者のように「その行動が何を意味するか」までキャッチできなくても、なんとなくの「違和感」や「気持ち悪さ」を受け取る人が多いのも事実です。

そうなると「話していて居心地が悪い」と感じたり、「本当にこの人を信用して話していいのかな?」や「本心では私のことを馬鹿にしているんじゃないか?」などと猜疑心を掻き立ててしまったりします。

ですので、部下の話を聞くと決めたら、変に飾ったりせず、ありのままで話を聞くようにしましょう。

「ありのままで聞いたら、それこそ相手に嫌なことを言ってしまう」
「どうしても『なんでそんな話をするんだ』とイラついてしまう」
という方もいるかもしれません。受容と共感が自己一致とかち合うパターンですね。

その場合、自分の中に何かしらの”信念”があることを自覚した方が良いです。

例えば、

  • 人の時間を奪うこと(長々と話すetc.)は良くないことだ

  • 結論から話せない奴は仕事ができない

  • 他責思考は良くない

  • 感情的になってはいけない

など。
これらの信念により、無意識的に部下の話を良いか悪いか判断してしまっているので、苛立ちを感じてしまうのです。

私自身「上司は部下より優秀でないといけない」という信念をいつのまにか抱いてしまっていました。なので、自然と部下に対して「舐められてはいけない」と身構えており、あろうことかマウントを取るかのような言動をしてしまったこともあります(ごめんなさい)。

ですが「この会社で会ったからたまたま上司と部下という関係なのであって、一歩会社の外に出れば、上下関係はないんだ」「むしろ、自分にはない経験をたくさんしている人なんだ(年齢にかかわらず)」と信念を上書きするようにしたら、相手を素直に尊敬することができました。

それから部下にアイディアを求めては「〇〇さんのアイディアすごいですね!どうやったらそんな発想ができるんですか?」と素直に聞けるようになりました。自分の方が優秀でないといけないと思っていたら、素直に聞いたり褒めたりできませんでした。

受容・共感・自己一致を取り入れた1on1の進め方

だまされたと思って、まずは「受容・共感・自己一致」をやってみてください!・・・と言いたいところですが、本当に騙してしまったら責任を負えませんので「以下の流れを参考にしてみてください」とお伝えしておきます。

  1. アイスブレイク(雑談)

  2. 前回の1on1からの進捗を確認(あれば)

  3. 今日のテーマ(話したい事)を確認

  4. そのテーマの背景などを「傾聴(受容・共感・自己一致)」で聞く

  5. 一緒に改善策を考える

  6. 次の1on1までにやることを決める

実際にやってみるとわかるのですが「傾聴(受容・共感・自己一致)」がうまく機能すると、「5.一緒に改善策を考える」をしなくても部下自身が解決策を出してくることが多いです。

「傾聴(受容・共感・自己一致)」によって、部下も『自分を正当化しなければならない』という鎧を脱ぎ捨て、冷静に事柄を見ることができるようになります。大概の場合、部下も自分がやるべき改善策を本当はわかっていることが多いです。
しかし、トラブルの相手への怒りの感情や、話を聞いてくれない上司への失望、自分が悪いと咎められることへの不安から、思考を鈍らせていることが多いものです。

また、コーチングの質問なども、「傾聴(受容・共感・自己一致)」ができている上でやるのが望ましいです。そうでないと、詰問のように感じられ、部下を委縮させてしまうケースもありますからね。

カウンセリングの技術が学べる、おすすめの書籍紹介

1on1でカウンセリングの技術を活かすのに役立った書籍として、以下の2冊を紹介します。

なぜカウンセラーには何でも話をしてしまうのか?それは「受容・共感・自己一致」ができているから。と、どあたまから言い切ってくれて、わかりやすく説明しています。
いろんなNGパターンなども説明されています。読書に慣れている人であれば1~2時間で読み切れる易しさでありながら、実践的な内容がたくさん紹介されています。

対話の例をマンガで見せてくれるので、イメージがしやすいです。カウンセリングとコーチング、ティーチングの違いなども解説してくれています。ロジャーズやアドラーなど有名な心理学者の提唱した理論もダイジェストで教えてくれるので、入門書としておすすめの一冊です。

【まとめ】1on1が変わる3つのポイント

①受容 →部下の話を遮らず聞き、内容を受け止める
②共感 →相手の考えや感情を否定せず理解しようとする
③自己一致 →自分を取り繕ったりせずありのままで話を聞く

この3点を意識するだけで、1on1での信頼関係構築がスムーズになります。もちろん他にも1on1に必要なテクニックはありますが、この「傾聴(受容・共感・自己一致)」が前提としてできているとより機能しやすくなります。

私の経験から言うと、上司とは基本的に「人の話を聞くより自分の話を聞かせたい」哀しき生き物です(かくいう私もそうなのです)。
部下の話を最後まで聞くだけで「この上司は何か違う」というアドバンテージにもなります。上司としてアドバイスをする場面も出てくるとは思いますが、このアドバンテージがあるかないかで響くかどうかが大きく変わりますね。

すべて実践するのは難しいと感じる人は、普段の自分のやり方にプラスで1つ取り入れてみる、といった方法が良いと思います。
次の1on1で、まずは「受容」から意識してみてください!



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