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『THIS IS US』が描く弱さと豊かさ
ついにドラマ『THIS IS US』が終わってしまい、放心状態である。
このドラマがアメリカで始まったのは2016年9月で、私はちょうどその頃アメリカに渡った。最初はテレビなど見る余裕も設備もなかったため、実際にシーズン1をNBCの配信で一気に見たのはその約1年後、ちょうど私が主人公たちの設定年齢の36歳になったばかりの頃である。シーズン2からは毎週火曜にリアルタイムで見ていたが、2019年にシ
『愛という名の支配』
ドイツの精神学者エーリッヒ・フロムによると、愛とは「愛する者の生命と成長を積極的に気にかけること」であり、その要素は「配慮、責任、尊重、知」だという。しかし本書のタイトルにある「愛」とは、それとはまったく別物の、なんとなく幻想として漂っている概念としての「愛」である。
それは抑圧者にとっては都合のよい隠れ蓑になり、被抑圧者にとってはその立場で満足するための言い訳になり、両者にとって他人または自分
「善人」による無理解が見事に描かれた映画『82年生まれ、キム・ジヨン』
81年生まれの私が原作本を読んだのは去年の春のことだ。韓国語教室を開いている母が教材として使っていたことで、勧められたのがきっかけだった。
カルテという形式で書かれているこの本には、韓国で生きる女性が遭遇するあらゆる不条理や差別、マイクロアグレッションが淡々と描かれている。その多くは、日本に生きる女性も経験する内容だ。韓国の価値観が残る家庭でジヨン同様姉と弟に挟まれて育った私には特に共感できる部
『The Bold Type』が描く、身近な人間関係における多様性の摩擦
最近の欧米の映画やドラマを見ていると、多様性への配慮がありありとわかる。その一方で、時間的制約からか、あるいはストーリーの本筋との兼ね合いなのか、その多様性が日常レベルで起こす摩擦については描かれていないことが多い。
たとえばNetflix映画『好きだった君へのラブレター』の主人公はアジア系だ。母親が韓国系という設定で、韓国の文化を継承していることはアクセサリー的に描かれているのだが、オレゴン州