ガジュマルの樹の下で、華やぐ少女たち
INDONESIA,Semarang
KOTA LAMA歴史地区
ここに来ると、いつも期待を裏切らない〈出会い〉のようなものがある
面白い人物や出来事が、向こうからやってくるかのような錯覚を覚えるのだ
今朝はまず、この区画で映画撮影の現場に遭遇した
規制線の前にいた制服を着た警備員に訊いてみると、それはインドネシア映画で、高名な俳優が主役を務める戦争映画の大作を撮影中らしい
なるほど。近くのパーキングには映画に使われると思われるジープや、軍服が吊るされている
ここSemarangは実は日本とも所縁が深い土地でもある
第二次大戦下に進軍してきた日本兵とインドネシア人の間で大きな衝突が起こり、その為の慰霊碑がこの街の中心地にあるのだ
Lawang Sewu
もしもその当時を舞台とした戦争ドラマが撮影されているとしたら、やはり日本人も参加しているのだろうか
映画撮影も気になったが、規制線が引かれて中を覗けないのであれば仕方ない
通りを大きく迂回し、古い町並みの迷路のような路地を縫って、いつもの
〈ガジュマルの樹の裏路地〉を目指す
通りを折れ、目的地の裏路地を曲がると・・・
度肝を抜かれた
文字通りの〈黒山〉の人だかりで、少女たちの嬌声が路地に反響している
この路地ではいつも、常に100%で何かの撮影が行われているがー
プロと思しきカメラマンに訊いてみると、今日は近くの女子高の記念撮影を行っているらしい
通りは完全に塞がれていたので、わたしも隅に寄って撮影の邪魔にならないように、そして興味深く見ていたが、また悪い虫が騒ぎ出してしまい、カメラマンに訊いてみた
ー”わたしも撮影してもいいでしょうか?”
するといつも通りカメラマンはあっさりと
ー”Okayですよ”
日本でプロカメラマンの現場に立ち会ったことはないが、どこか印象としてピリピリしたものだという誤った認識のようなものを強く抱いている
しかし、これまでに偶然会ったインドネシアのプロたちの寛容さはいったいどうしたことだろう
かれらもまた、いつも自然体なのだ
では遠慮なく、と日本語で呟いて撮影開始
一時間ほどで全ての撮影が終わり、木陰でミネラルウォーターを飲んでいると、最前の彼女たちのひとりに、こう話しかけられた
ー”カムサハムニダ!!”
そして彼女たちは全員ぎゃはははと大爆笑しはじめた
どうやらわたしの事を韓国人と勘違いしているらしい・・・
日本人だよ、と返そうと一瞬思ったが、このまま韓国人を演じてみるのも面白いかもしれない
わたしはいった
ー”カムサハムニダ!!”
しかし、その後に激しく後悔した
なぜなら彼女たちの中に韓国語がペラペラな女の子がひとりいて、マシンガンのようにわたしに韓国語で話しかけてきたのだ
わたしは慌てて手を振り
ー”Saya orang Jepang!!”(わたしは日本人です)
と言い直す
すると彼女たちは、いったい何がそんなに面白いのか、またゲラゲラと笑いはじめて今度は
ー”アリガトー!!アリガトー!!
わたしもなんだか可笑しくなってきて気持ちよく、インドネシア語で
ーSama Sama!!(どういたしまして!!)
そして大きく手を振って路地をあとにする
ちょうどお昼どきで日差しもきつくなってきていたが、朝から元気な彼女たちの撮影に立ち会わせてもらったせいだろうか、気分が高揚していたこともあり、カメラを片手に久しぶりに地区内をくまなく散歩することに
充足して、エネルギーをもらった六月の日曜日
明日からまた一週間頑張るか!!