今回の読書記録は、2021年3月に出版された、Tom Nixon(トム・ニクソン) 『Work with Source: Realize big ideas, organize for emergence and work artfully with money(『ソースを活用する:大きなアイデアの実現、創発の仕組み化、そして、賢くお金を使うために) 』および、
2022年10月26日に出版された『Work with Source 』の邦訳版である『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』 、
以上の二冊を読み比べてみての記録です。
本書の著者であるトム・ニクソン(以下、トム)は、フレデリック・ラルー(以下、フレデリック)の『Reinventing Organizations』 に共鳴している起業家・コーチであり、フレデリックとも対話を重ねてきた人物です。
『Work with Source』 は、ピーター・カーニック(Peter Koenig) 氏の提唱した『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理) 』というコンセプトを、トム自身の経営者としての実際的な視点も踏まえつつ体系的に書籍としてまとめ、2021年3月に出版されました。
『Work with Source』 で紹介されている『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』 は、近年では『ティール組織』 という組織経営に触れ、探求・実践されている方々の間で、少しずつ話題になりつつある概念であり、
フレデリック・ラルー自身も2016年出版のイラスト解説版『Reinventing Organizations』の注釈部分で記載している他、
『新しい組織におけるリーダーの役割』 と題した動画内で、この『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』 について言及しています。
今回、私が『Work with Source 』と『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』 を取り上げるきっかけとなったのは、『ティール組織』 を探求してきた人々の中で『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』をめぐるムーブメントが現れ始めたことです。
私自身、ティール組織解説者・嘉村賢州が代表を務めるhome's vi という組織において新しい組織運営、あるいは組織経営のあり方について探求し、国内外の現場で実践してきた中で、『ティール組織』、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』 に出会いました。
その後、JUNKANグローバル探求コミュニティ という自然の営みに触れながら組織や経営を探求するコミュニティに参加する中で、トムやピーターとの対話と共通体験を重ね、今に至ります。
まずは『ティール組織』、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』 がどのように国内に紹介され、広がりつつあるのかを見ていき、その後『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』 について紹介していきたいと思います。
本記事の読み方 今回の記事は67000字を超える長文です。これを一度に読むことが難しい、という方もいらっしゃるかもしれません。そんな方は、以下の前編・中編・後編と分けて読まれるか、
目次から読んでみたい項目へ飛ぶことを推奨します。
ティール組織と『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』 『ティール組織』ムーブメントを概観する 2014年にフレデリック・ラルー(Frederic Laloux) によって発表された『Reinventing Organizations』 。
日本では2018年に『ティール組織』 という邦題で出版され、500ページを超える大作でありながら、現在では10万部を超えるベストセラーとなりました。
『ティール組織』 は500ページを超える大作でありながら、2023年現在では10万部を超えるベストセラーとなりました。
『ティール組織』 では、人類がこれまで辿ってきた進化の道筋とその過程で生まれてきた組織形態の説明と、現在、世界で現れつつある新しい組織形態『ティール組織』のエッセンスが3つのブレイクスルーとして紹介されています。
フレデリック・ラルー氏の調査によって浮かび上がってきた先進的な企業のあり方を基に3つのブレイクスルーが体系化されており、
全体性(Wholeness) 自主経営(Self-management )存在目的(Evolutionary Purpose)
以上の3つが、『ティール組織』と見ることができる組織の特徴として紹介されました。 そして、この3つのブレイクスルーを実践するために、いくつかの関連書籍も出版されました。
また、ラルーは人類誕生以来の組織構造の変化の歴史を、思想家ケン・ウィルバー(Ken Wilber) の意識の発達理論・インテグラル理論(Integral Theory) を用いて説明したためか、『ティール組織』出版以降、国内ではケン・ウィルバーの絶版本が再度出版される、新たな邦訳本が出版される等、発達理論および意識の変容に関する書籍が相次いで出版されました。
私自身も、『ティール組織』の事例として取り上げられた『ホラクラシー(Holacracy)』 という組織経営法の体得のため、オランダにファシリテーターとしてのトレーニングに向かう等、より良い組織運営および組織経営の方法の探求 と国内における普及、実践 に取り組んできました。
また、国外に目を転じてみれば、『Enlivening Edge』 という次世代型組織に関する事例を調査・研究し、寄稿する情報プラットフォームや、
現在は年に一回程度の頻度で開催されるイベント、『Teal Around The World』 といった取り組みが存在しています。
さらに、2022年の夏時点では、国内のビジネス書コーナーでは『パーパス(Purpose)』 が一つのバズ・ワードとなっています。
『パーパス経営』、『パーパス・マネジメント』『パーパス・ブランディング』、『パーパス・ドリブン』『パーパス・モデル』 といった具合に、『パーパス〇〇』 が次々と生み出されています。
これらの『パーパス(Purpose)』 という用語の用法については、既存のミッション、ビジョン、バリューとの棲み分け、位置付けが示されたり、あるいは同一視されることもある等、若干の混乱は見られますが、組織の『パーパス』を意識したビジネス、経営に注目が集まっています。
上記のように、『ティール組織』の出版は、新たな組織像や働き方を実践していくための、ある種のムーブメントを生み出したと言えるでしょう。
※ラルー自身が、『Purpose』 をどのように捉えているのかについては、以下の記事も参考になるかもしれません。
『ソース(Source)』の概念が国内で初めて語られたのは、いつか? 上記のように国内の『ティール組織』出版に端を発するムーブメントの中、2020年に著者であるフレデリック・ラルー氏の来日イベント『Teal Journey Campus』 が開催されました。
『Teal Journey Campus』のエンディング風景 また、『Teal Journey Campus』開催後も、小規模なプログラムが開催され、その中で『ソース(Source)』 についての概念がフレデリック・ラルーから語られたと言います。
その時の記録は、『ティール組織』解説者である嘉村賢州のブログに残されていました。
上記のブログ記事から、『ソース(Source)』 に言及されている部分を参照してみましょう。
フレデリックが一つ大事にしている考え方にソース というものがある プロジェクトや組織には必ず一人は存在するというそのソース は 要は存在目的から呼びかけられるラジオのような声を一番近くで聞くような 立場だ。誰にでも聞こえるはずだがソース の役割はそのセンスが強い。 決してトップダウンの権力は持たないが、組織には必要な役割だという。 良く事業継承などを行う際、このソース の引継ぎがうまくいかないことが 多いという。その引継ぎをうまくいかせる方法について彼はいった。 儀式をする必要があると。きちっと明け渡す方も終わりの儀式をし そして受け取る方も新たな始まりを祝福する。そして周りもそれを 見届ける。そんな儀式が必要だというのだ。 (中略) 最終日の最後の最後、少人数でこの5日間を振りかえる少人数のダイアログ。「この2日間を儀式として、日本におけるティール組織のソースを 賢州に引き渡します。」 どこかで確信はあったけど、フレデリックの口からその言葉を聞けて素直にうれしかった。
【フレデリック・ラルーとの回想録①~一番忘れたくないもの 嘉村賢州】 私の探した限り、『ティール組織』探求の文脈の中で『ソース(Source)』 について言及されたのは、この時が初めてのように思います。
トム・ニクソンとフレデリック・ラルーの議論 なお、『ソース(Source) 』の概念および、その生みの親であるピーター・カーニック(Peter Koenig) とラルーが出会ったのは、『Reinventing Organzations』出版以降であり、2014年出版の書籍には反映されていません。
もし私が事前に知っていたら、必ず『ティール組織』で紹介していた。 byフレデリック・ラルー
トム・ニクソン『すべては1人から始まる』の帯に寄せられたメッセージより しかし、ラルーは後に『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』 というアイデアを自らの考え方の中に取り入れ、
2016年出版のイラスト解説版『Reinventing Organizations』の注釈部分で説明している他、
彼が手掛けたビデオシリーズにおいて『ソース(Source)』 について言及しています。
※詳しくは、以下の動画『新しい組織におけるリーダーの役割』をご覧ください。
この背景には、『Work with Source』 著者であるトム・ニクソン(Tom Nixon) と『Reinventing Organizations(邦題「ティール組織」)』著者であるフレデリック・ラルーの議論、対話も影響しているようです。
2015年、トムはフレデリックの唱えた『Reinventing Organizations』に対して、『 Resolving the awkward paradox in Frederic Laloux’s Reinventing Organisations(フレデリック・ラルー著『組織の再発明』における厄介なパラドックスを解決する) 』 と題した寄稿を発表しました。
この際トムは、ピーター・カーニック(Peter Koenig ) による長年の企業研究によって得られた考え方(Source Principle) と照らし合わせるような形で『Reinventing Organizations』にパラドックス(逆説)が説かれている事を指摘したのです。
※当記事を翻訳したものはこちら。ご参考までに↓
以前からフレデリックとの対話を重ねていたトムによる寄稿に、さらにフレデリックがコメントを寄せるという議論も加わる中で、フレデリックはこのように述べています。
ピーター・カーニックの考え方 に出会ったことで、私が「場を保持する(holding the space)」と呼んでいた、組織の目的にチャネリングすることを含む、より良い言葉が得られました。 Now that I’ve encountered Peter Koenig’s thinking, I have better words for what I called “holding the space”, which includes channeling the organization’s purpose.
Resolving the awkward paradox in Frederic Laloux’s Reinventing Organisations 以降、フレデリックは自説の中に『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』 を取り入れ、自身の手掛けた動画シリーズの中で紹介することにつながったようです。
以上、前置きが長くなりましたが、『ティール組織』 と『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』 がどのような関係の中で紹介されつつあるのかについて見てきました。
ここからはトム・ニクソン著『すべては1人から始まる(Work with Source)』の内容に入っていきたいと思います。
ソース(Source)とは何か? あらゆる人々がソース(Source)である ソース(Source) とは、あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、最初の無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割 を意味しています。
The role emerges naturally when the first individual takes the first vulnerable step to invest herself in the realisation of an idea.
Tom Nixon「Work with Source」p20 また、本書中の用語解説では、『脆弱なリスクを取って、ビジョンの実現に向けて自らを投資することで、率先して行動する個人のこと 』と説明されています。
An individual who takes the initiative by taking a vulnerable risk to invest herself in the realisation of a vision.
Tom Nixon「Work with Source」p249 私たちが生活の中で、人と一緒にアイデアを実現するとなった時、それは様々な形を取って現実に表現されます。プロジェクト、会社、社会運動、芸術作品等もそうでしょう。
そういった取り組みは、本書中においては、アイデアを実現するための展開プロセス である「イニシアティブ(initiative) 」と呼ばれます。
ちなみに、イニシアティブ(initiative)は何か大きな取り組みに限ったことではありません。
私たちは日々、大小さまざまなニーズに応えるために、取り組みを始めたり、参加したりしています。お腹が空いたのでサンドウィッチを作ることから、ゼロカーボン経済への移行に至るまで、私たちは様々なアイデアを実現するためにイニシアティブを取ったり、参加したりしています。
This applies not only to the major initiatives that are our life’s work. Every day we start or join initiatives to meet our needs, big and small.[…]Whether it’s making a sandwich or transitioning to a zero-carbon economy, we start or join initiatives to realise ideas.
Tom Nixon「Work with Source」p30 このような意味で、ソース(Source) は特権階級だけのものではありません。ソース(Source) は世界のあらゆる場所に存在し、富裕層から貧困層まで、あらゆる階層の人々がソース(Source) として存在しています。
This is not only a luxury for the privileged. Sources are everywhere in the world, from all walks of life, rich and poor.
Tom Nixon「Work with Source」p14 なお、本書中で活用される「ビジョン(vision)」とは、『世の中に何かを生み出したり、変えたりするための、個人の心の中にあるアイデアのこと 』を意味しています。
An idea, held in the mind of an individual, that involves creating or changing something in the world.
Tom Nixon「Work with Source」p249 ここまでの用語も踏まえつつ、ソース(Source) について簡単に整理してみましょう。
ソース(Source) は、何かアイデアを実現するために、ある個人がリスクを取った時に自然と生まれる役割であり、そのアイデアの実現のために継続的なプロセスであるイニシアティブ(initiative) を展開し、参画、推進していきます。
イニシアティブ(initiative)はプロジェクト、会社、社会運動、芸術作品、ゼロカーボン経済への移行、サンドウィッチを作ることといった大小様々な形で展開されるものであり、ソース(Source) は世界のあらゆる場所に存在し、富裕層から貧困層まで、あらゆる階層の人々がソース(Source) として存在しています。
明確さ(Clarity)と疑い(Doubt)の間で なお、ソース(Source) は、ソース(Source) がめざしてしているビジョン(vision)と深く、個人的に、身体的につながっているものの、イニシアティブ(initiative)がどのように進むのかを正確に知ることはできません。
Think of the source as having a deep, personal, embodied connection to a future she is working towards. It could be a picture of something specific she imagines creating or changing in the world, a picture that may not be very clear yet. Or she may be sensing a potential for something new or better that might be possible – a question to answer more than a picture to paint. Often it’s something she is uniquely positioned to address. She won’t know exactly how things will go, since the future is always uncertain and many questions are too large and complex for any one person to fathom. Whatever the degree of clarity may be, I refer to all of this as her vision.
Tom Nixon「Work with Source」p37 トム自身、何年も前、最初の会社のソース(Source) が自分であることに気づいて悩んでいたとき、ピーター・カーニックは「ソース(Source)の慢性的な状態は確信ではなく、疑いである 」と説明してくれたことがあったと言います。
Many years ago, while I was grappling with the realisation that I was the source of my first company, Peter Koenig explained to me that the chronic state of a source is not certainty, but doubt.
Tom Nixon「Work with Source」p75 進むべき方向性が明確になるまでの待っている間、ソース(Source) の責任は聞き続けることです。これは、ソース(Source)自身 の創造的なニーズに耳を傾け、自身が利用できる多くの情報源に耳を傾けることを意味します。ソース(Source) の創造的な精神は 、これらの情報を計り知れない方法で処理し、準備が整ったときに明確になります。
Patiently listen While she’s waiting, the source’s responsibility is to continue listening. This means listening inwardly to her creative needs and outwardly to the many sources of information available to her. The source’s creative mind will be processing this information in unfathomable ways, and clarity will come when it’s ready.
Tom Nixon「Work with Source」p76 この聞き続けることとは、問い続けること、とも言えるかもしれません。
『ソース(Source)は未来を想像し、それを現実のものとします。毎日、彼らは問いかけます。「次のステップは何だろう?」「今、自分にできることは何だろう?」そして、何があっても、必ず次のステップがあることを知っているのです。』
Sources imagine the future and make it real. Every day they ask: what’s the next step? What can I do, right now, to inch closer? And they know there’s always a next step, no matter what.
Tom Nixon「Work with Source」p14 そして、疑い(doubt)の中で明確な判断は、意外な瞬間に訪れるものです。いつ、明確な決断ができるかは、カレンダーに書き込んだり計画することはできないようです。
トム自身もまた以下のように述べています。
『ある日、シャワーを浴びているとき、ランニングをしているとき、朝起きたときなどに、ようやくわかったのです。それは、頭だけでなく、心や腸も含めて、体で感じるような明快さです。ピーター・カーニックが言うように、「知っているときは、本当に知っている」 のです。』
Clarity often arrives at surprising moments. You can’t schedule a time in your calendar for when you’ll reach a clear decision. […]and then one day, perhaps in the shower, out running, or when you woke up one morning, you finally just knew. It’s the kind of clarity you feel in your body: clarity not only in your mind but in your heart and gut too. As Peter Koenig says: when you know, you really know.
Tom Nixon「Work with Source」p76 なお、このような提案もありました。
『明確になる瞬間が来るまでは、大きな一歩を踏み出さないでください。それはほとんどの場合、後で痛みと、コストのかかる修正を伴うでしょう。』
Until your moment of clarity comes, don’t commit to a significant step. It’ll almost always involve a painful, costly correction later.
Tom Nixon「Work with Source」p76 ソース(Source)とオーサーシップ(authorship) ソース(Source) とは「あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、最初の無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割」 であり、「脆弱なリスクを取って、ビジョンの実現に向けて自らを投資することで、率先して行動する個人のこと」 と紹介しました。
このような経緯から、ソース(Source) は、私たちがよく知っているような組織の正式な役職や役割とは異なります。誰がその役割を担うかを任命して決めることはできません。それは、最初に何が起こったかを語るときに気づかされ、 認識される、出現する役割です。
It’s not a formal organisational role, like CEO; it’s a naturally emerging role to which a person cannot simply be appointed through a formal process.
Tom Nixon「Work with Source」p19 The role of source is not like the official job titles or roles in organisations we might be more familiar with. It is not possible to decide who gets it. It’s an emergent role that’s noticed and acknowledged when we tell the story of what happened at the start.
Tom Nixon「Work with Source」p33 ソース(Source) は、ビジョンを実現することを目的とした継続的なプロセスであるイニシアティブ(initiative) と密接な個人的なつながりがあるため、イニシアティブ(initiative) が必要とするものを直感でき、自然なオーサーシップ(authorship:著者・原作者であること、そのことによる権威) を持つことができます。
この自然なオーサーシップ(authorship) は 、ソース(Source:源) に結果として起こることに対する自然で、完全な責任を与えます。
The source has a natural authorship of and connection to her initiative, born out of the personal risk she took by starting it. Nobody else will feel it quite the way she does. This natural authorship also gives the source a natural and full responsibility for what happens as a result.
Tom Nixon「Work with Source」p33 また、自然なオーサーシップ(authorship) について、トム・ニクソンのパートナーでもあるチャールズ・デイヴィス(Charles Davies) は、これをクリエイティブ・オーソリティ(創造的権威:creative authority) とも呼んでいます。これは、伝統的な組織で使われているような、公的な職位に基づく権威ではありません。これは、author-ship のようなauthor-ity であり、この2つの言葉は同じ語源を持っているのです。
Since a vision is personal, only the source can ever truly know what is needed to realise it. Others can make suggestions, guess, or say what they would prefer, but the source has a natural authorship of her vision. Charles Davies calls this creative authority. It’s not the kind of authority we are used to in traditional organisations based on official job titles. This is author-ity, as in author-ship. The two words have the same root. This natural creative authority goes hand in hand with the responsibility you have as a source.
p74 この普段、聴き慣れないオーサーシップ(authorship:著者・原作者であること、そのことによる権威) という概念について、トムは本書の冒頭、物語る力、ストーリーテリングの力について力強く語っています。
『人間の心は、ストーリーを語ることで世界を理解するようにできています。私たちが作り、信じ、共有する物語は、私たちの行動のほとんどすべてに影響を与えます』
The human mind is wired to make sense of the world through storytelling. The stories we create, believe in, and share impact almost everything we do.
Tom Nixon「Work with Source」p11 『私たちのストーリーは、私たちが過去を理解し、共有された現実を創造し、他の人々を私たちと共に巻き込んでいくのに役立っています。ですから、私たちのストーリーは重要です。これは、多くの人々が関わる世界で、目的を持ったアイデアを実現するために必要な創造性に関して、特に言えることでしょう。私たちが力を合わせてこそ、人間の持つ創造的な潜在能力を最大限に発揮することができるのです。』
Our stories help us make sense of the past, create a shared reality, and bring others along with us. So our stories matter, and this is especially true when it comes to the creativity needed to realise purposeful ideas in the world involving many people. We can only realise the full creative potential of humans if we work together.
Tom Nixon「Work with Source」p11-12 『私たちは皆、ストーリーを創造し、貢献する能力を生まれながらに持っています。世界に何がもたらされるかを想像したり、何かを実現するためのプロセスを開始したり、他の人が始めた試みに参加したりすることができます。これこそが、ストーリーテリングの実現なのです。』
All of us have an innate capability to create and contribute to stories. We can imagine what might be brought into the world, set in motion a process to make something happen, or join others in the endeavours they have started. This is storytelling made manifest.
Tom Nixon「Work with Source」p12 『多くの人が関わる大きな事業では、会社や社会運動などの創設者の最初の一歩の物語が、参加者の間で語り継がれています。物語である以上、最初に何が起こったのかは、人によって様々な物語があるはずです。多様で曖昧な物語は、人間の文化の豊かな部分ですが、アイデアを実現するためには、明確であることが非常に重要だと思います。[…]言い換えれば、自分が参加するストーリーを理解していれば、より完全に、そして適切に参加することができるのです。[…]重要なのは、客観的に真実の物語を見つけることよりも、価値あるアイデアを実現するための条件を整えるために最も役立つ物語を見つけることです。』
When it comes to significant endeavours involving many people, the stories of how founders take the very first steps to create their companies, social movements, and other initiatives become part of the folklore of those taking part. Since they’re stories, there can be many narratives of what happened at the beginning that vary from person to person. Diverse, ambiguous stories are a rich part of human culture, yet when it comes to making ideas hap- pen, I suggest that clarity helps enormously.[…]In other words, if we understand the story we are joining, we can participate more fully and appropriately.[…]What is important is not so much finding the objectively true story as finding the most useful story for creating the conditions for a worthwhile idea to be realised.
Tom Nixon「Work with Source」p31-32 しかし、このようなソース(Source) のビジョンやストーリーも、それが重要なものであればあるほど、一人で実現することが難しくなります。
その際、ビジョンの共有およびオーサーシップ(authorship) の共有が必要です。
この時、集団や組織について考えることになりますが、これらのテーマについては以降のクリエイティブ・フィールド(creative field) の章にて扱います。
ソース(Source)とクリエイティブ・フィールド(creative field) 既存の組織構造のさらに深い側面:クリエイティブ・フィールド(creative field) 『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』のレンズで会社組織を眺めた場合、会社組織もまた、ソース(Source) である個人が、アイデアを実現するためにリスクを取って一歩を踏み出して始めた「イニシアティブ(initiative) 」の一つの形と考えられます。
イニシアティブ(initiative)はプロジェクト、会社、社会運動、芸術作品、ゼロカーボン経済への移行、サンドウィッチを作ることといった大小様々な形で展開されるものであり、ソース(Source) は世界のあらゆる場所に存在し、富裕層から貧困層まで、あらゆる階層の人々がソース(Source) として存在しています。
Yuki Omori【読書記録】前編:Work with Source また、アイデアの実現に関しては、組織のより深い側面 、つまり、ビジョンを実現するための基本的なプロセスを推進する基盤となる層を見ることができます。『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』ではこれを「クリエイティブ ・フィールド(creative field) 」と呼んでいます。
Yet when it comes to idea realisation, we can learn to see a deeper dimension of our organisations, a foundational layer that drives the underlying process of realising a vision. We call this the creative field.
Tom Nixon「Work with Source」p47 「クリエイティブ・フィールド(creative field) 」とは、『ビジョンを実現するために必要な人やその他のリソースを引き寄せ 、努力を束ねることで一貫性を生み出す魅力的なフィールドのことを指し、ソース(Source) がイニシアティブ(initiative) を取ることで確立されるものです』
Creative field The field of attraction that draws in the people and other resources needed to realise a vision and creates coherence by binding an effort together. Established when a source takes the initiative.
Tom Nixon「Work with Source」p249 すべての組織およびイニシアティブ(initiative)の根底には、「クリエイティブ・フィールド(creative field) 」が存在し、「クリエイティブ・フィールド(creative field) 」はビジョンを実現するために必要な人材やリソースを引き寄せ、努力を束ねて一貫性を生み出す重力場と、ビジョンの実現に向けて人々が一緒に行動できる草原のような物理的な空間の両方の性質が備わっています。
Underpinning all organisations there is something we’ll call a creative field. Think of this as being analogous to both a gravitational field that attracts the people and resources needed to realise a vision, and that creates coherence by binding an effort together; and a physical space, like a meadow, where people can be together as they work on realising a vision.
Tom Nixon「Work with Source」p21 オーサーシップ(authorship)の共有と、クリエイティブ・フィールド(creative field) ソース(Source) の目線から、グループや組織が形づくられていく様子については、以下のような表現も為されています。
いずれの場合も、前述のクリエイティブ・フィールド(creative field) が重要な役割を果たしていることが見て取れます。
しかし、重要なビジョンは、一人の人間だけで実現できるものではありません。 一旦、あるソース(Source) がイニシアティブ(initiative)を開始するために自己投資すると、ソース(Source) のビジョンとそれに対するエネルギーは、磁石のように他の人々を引きつけることができます。』
その中には、当然ながらビジョンの特定の部分を担当する人もいるので、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』はその人たちを「スペシフィック・ソース(specific sources) 」と呼んでいます。
HOW SOURCE IS SHARED Every human initiative has one overall source, yet a significant vision cannot be realised by one person alone. Others join the initiative to play a part in realising the vision.Once a source has invested herself in starting an initiative, her vision and the energy she has for it can attract other people like a magnet. Some of these people will naturally take responsibility for specific parts of the vision, so we call them specific sources.
Tom Nixon「Work with Source」p39 あるソース(Source) は、ビジョンのオーサーシップ(authorship) を共有すると、他の人はビジョン全体の一部のスペシフィック・ソース(specific sources) となります。ソース(Source) は、その特定の領域内でソース(Source) と全く同じ役割を担うことで、スペシフィック・ソース(specific sources) に好きに動いてもらうことができます。
そして、スペシフィック・ソース(specific sources) は、ソース(Source) に従属するのではなく、自分自身の人生における天命(personal calling in life)を生きています。
これにより、従来の中央集権と分権化の間の争いから、中央集権(centralisation)と分権化(decentralisation)を同時に包含する、より活力に満ちた実用的な組織方法へと移行することができます。
A source can share the authorship of the vision and get out of the way as others become specific sources for parts of the whole, taking on the exact same role of source within that specific domain. Far from being subservient to the source, specific sources are also living their own personal calling in life; they merely choose to express this calling within someone else’s broader initiative. This helps us move on from the traditional struggle between central and decentralised control to a more energised and practical way of organising that embraces centralisation and decentralisation at once.
Tom Nixon「Work with Source」p20 クリエイティブ・フィールド(creative field)に関する簡潔なまとめ ここまでで一度、クリエイティブ・フィールド(creative field)、ソース(Source)、オーサーシップ(authorship)、スペシフィック・ソース(specific sources) の関係について、まとめてみましょう。
ソース(Source) は、何かアイデアを実現するために、ある個人がリスクを取った時に自然と生まれる役割であり、そのアイデアの実現のために継続的なプロセスであるイニシアティブ(initiative) を展開し、参画、推進していきます。
イニシアティブ(initiative) はプロジェクト、会社、社会運動、芸術作品、ゼロカーボン経済への移行、サンドウィッチを作ることといった大小様々な形で展開されるものであり、ソース(Source) は世界のあらゆる場所に存在し、富裕層から貧困層まで、あらゆる階層の人々がソース(Source) として存在しています。
ソース(Source) は、リスクを取ってアイデアを実現するためのイニシアティブ(initiative)を始めたが故に、自然なオーサーシップ(authorship) およびクリエイティブ・オーソリティ(創造的権威:creative authority)を持ちます。オーサーシップ(authorship) は 、ソース(Source) に結果として起こることに対する自然で、完全な責任(a natural and full responsibility)を与えます。
しかし、重要なイニシアティブ(initiative) であるほど、ソース(Source) は一人でビジョンを実現することが難しくなります。
他方、ソース(Source) がイニシアティブ(initiative)を取ることでクリエイティブ・フィールド(creative field) 確立され、また、ソース(Source) のビジョンに対する情熱は、協力者をまるで磁石のように引き寄せます。
この時、ソース(Source) はオーサーシップ(authorship) を他の人に共有し、その人が全体のビジョンの一部を担当することがあります。この時、その人はソース(Source) に対して、ある特定部分を担うことからスペシフィック・ソース(specific sources) と呼ばれます。
スペシフィック・ソース(specific sources) は、ソース(Source) に従属するのではなく、スペシフィック・ソース(specific sources) もまた、自分自身の人生における天命(personal calling in life)を生きています。
なお、ソース(Source) に適用されるすべての原則は、その特定の領域内のスペシフィック・ソース(specific sources) にも適用されます。つまり、その部分のビジョンを明確にするために耳を傾け、次のステップを察知し、決定して行動し、サブ・イニシアティブ(sub-initiatives) の境界を維持する、というソース(Source) としての責任が含まれます。イニシアティブ(initiative) が成長し、よりスペシフィック・ソース(specific sources) がその部分に対して責任を持つようになると、さらにイニシアティブ(initiative) の入れ子が出現し、何段階ものスペシフィック・ソース(specific sources) が存在するようになります。
これは、ソースのイニシアティブの中にあるクリエイティブ・ヒエラルキー(creative hierarchy:創造性の階層構造) です。ある人間が他の人間に対して正式な権力を持つことがないため、従来の組織に見られる管理階層(management hierarchies) とは非常に異なります。
Creative hierarchy All of the principles that apply to sources also apply to specific sources within their specific domains. These include the responsibilities of being a source: listening for clarity about the vision for that part; sensing the next step, deciding and acting on it; and maintaining the boundary of their sub-initiatives. As an initiative grows, and more specific sources take responsibility for their parts of it, a further nesting of initiatives can emerge, with many levels of specific sources. […] It’s a creative hierarchy within the source’s initiative; it’s very different from the management hierarchies we see in traditional organisations, as it does not involve one human having formal power over another.
Tom Nixon「Work with Source」p40 なお、別の人を自身のビジョンの実現に招待するということで、ソース(Source) はイニシアティブ(initiative) のエッジ(edge) を守り、完全性を維持する他、イニシアティブ(initiative) のエッジ(edge) が何であるかを明確にするために耳を傾け、その取り組み全体にとって何が範囲内で何が範囲外なのか を判断する責任も発生します。
WHAT THE SOURCE DOES The source’s authorship of her initiative means that she alone is naturally responsible for the whole, so her primary tasks are to: 1.listen for clarity about what the edge of the initiative is: what’s in and out of scope for the endeavour as a whole 2.maintain the integrity of the initiative by guarding its edge 3.sense the next step for the initiative as a whole, decide upon it, and act 4.share the creative field with specific sources. For such a short list, being a source is a surprisingly large undertaking.
Tom Nixon「Work with Source」p39 もし、ソース(Source) が、自分に合わないとわかっているものを入り込ませてしまったら、ゆっくりと、しかし確実に、クリエイティブ・フィールド(creative field) はまとまりを失ってしまうでしょう。そうなると、ソース(Source) のエネルギーが衰え、ビジョンに取り組む全員の活力が失われていくことが予想されます。
If a source allows things to creep in that she knows don’t fit, then slowly but surely the creative field will lose all coherence. If this happens, we can expect the source’s energy to wane and the feeling of vitality among everyone working on the vision to weaken.
Tom Nixon「Work with Source」p77 ビジョンに対するソース(Source) のエネルギーや情熱はイニシアティブの燃料のようなものであり、ソース(Source) はそのエネルギーを維持することも重要です。
そのためソース(Source) は、自分がエネルギーを持つビジョンにつながり続け、自分の肉体的・精神的な健康と、自分自身の成長・発展に気を配らなければなりません。
なぜなら、ソース(Source) の内面的な状態は、参加するすべての人が感じる活力やエネルギーの感覚と直接的に関係しているためです。
The source’s energy, or passion, for the vision is like the fuel for the endeavour. A vision without sufficient energy powering it will never get off the ground.The source’s energy for her vision must be strong enough to create an imperative to act and stick it out. It is also vital that her energy is maintained. Everybody else is drawn in by it, and if it wanes, then gradually the energy level in the whole endeavour will drop, sometimes with tragic consequences. This is why it’s vital for the source to stay connected to the vision for which she has energy and not veer off-track. The source must look after her physical and mental health and her own growth and development. Her inner state will directly correlate with the vitality and feeling of energy felt by everyone else who participates.
Tom Nixon「Work with Source」p37-38 しかし、エッジ(edge) を守るために、専制的なリーダーに期待されるような力強さや威厳が必要とされることはほとんどありません。ソース(Source) が明確で究極の愛に満ちた場所から行動するとき、物事は自然に現れます。
強い抵抗が起こる多くの場合、ソース(Source) が十分に聞いていないか、無意識のバイアスや自分では気づいていない精神の別の部分から行動していることを示しています。解決策としては、無理に押し通すのではなく、もっと耳を傾け、自分自身に働きかけて無意識を可視化することです。
しかし、それでもなお、ソース(Source) は必要に応じてトップダウンで行動する準備をしておかなければなりません。
Yet guarding the edge very rarely requires the kind of forcefulness or violence that we expect from tyrannical leaders. When a source acts from a clear and ultimately loving place, things emerge naturally. Strong resistance is often a sign the source is not listening well enough, or that she is acting from an unconscious bias or another part of her psyche of which she is not aware. The solution is not to force her way through but to listen more and to work on herself to make the unconscious visible.Yet, all the same, a source must still be ready to act in a top-down fashion when appropriate.
Tom Nixon「Work with Source」p78 クリエイティブ・フィールド(creative field)のライフサイクル クリエイティブ・フィールド(creative field) は、ソース(Source) の継承のプロセス(succession processes)を通じて継承されるか、あるいは閉じられる独自の方法を持っています。
このような移行の瞬間は、ソース(Source) が旅の中で自然な変曲点(natural inflection point)に達したとき、つまり、自分がやり遂げたという強い体感を得たときに始まります。例えば、次のようなことです。
問題が生じるのは、この変曲点を超えてソース(Source) が自分のクリエイティブ・フィールド(creative field)を保持し続けようとするときです。ソース(Source) のビジョンとエネルギーがなければ、その努力の活力が失われることが予想されるからです。
変曲点に気づいたソース(Source) は、自分のクリエイティブ・フィールド(creative field) を閉じて、自分自身と創造された資源や資産を自由にして、新しいことを追求するか、あるいはソース(Source) の役割を後継者(successor) に引き継ぐことができます。
THE LIFECYCLE OF CREATIVE FIELDS Since a creative field is separate from the formal aspects of an organisation, like its status as a legal entity, even if the legal entity goes bankrupt or is otherwise wound up, the creative field does not disappear, and the source will still occupy her role. In the same way, if a family home burns down but everyone survives, the family is fundamentally intact. Creative fields have their own ways of closing and being passed on through succession processes. These moments of transition begin when the source reaches a natural inflection point in her journey: when she has a strong, embodied sense that she’s done. For example: • Her vision has been fully manifested to her satisfaction. • She no longer has sufficient energy to put into her vision. • She realises she’s committed to something that isn’t her path after all. Problems emerge when a source tries to continue holding her creative field beyond this inflection point. Without the vision and energy of the source, we can expect the vitality of the endeavour to wane. When the source notices the inflection point has arrived, she can either close her creative field, freeing up herself and the resources and assets created to pursue something new, or, alternatively, she can pass the role of source on to a successor.
Tom Nixon「Work with Source」p55-56 ソース(Source)の継承(succession) クリエイティブ・フィールド(creative field) のライフサイクルについて紹介する中で、ソース(Source) の役割の継承(succession) というテーマが出てきました。
これについて、トムは以下のように語っています。
『私は、ソース(Source) という役割が常に存在していることを理解してもらうよう勧めています。誰が最初にリスクを取ったかには注意を払わないことにしてもいいのですが、ソース(Source) の役割から得られる視点は、権力闘争、混乱、責任の欠如、長期にわたる創造的ビジョンの水増しなど、人間の努力に現れうる厄介な問題を新たに明確にしてくれるのです。』 『また、創業者が事業から離れたとき、その創業者がソース(Source) であるかどうかを知ることは非常に重要です。継承のプロセスに適切な配慮がなされないまま創業者が去った場合、イニシアティブは予測可能な方法で崩壊する可能性があります。同様に、イニシアチブが何らかの形で統合される場合、ソース(Source) の役割に注意を払うことで、物事がスムーズに進み、イニシアティブ(initiative)が予測可能な別の一連の問題を回避するのに役立ちます。』
I encourage them to see how the role of source is always present. We can choose not to pay attention to who took the first risk, but the perspective offered by the role of source brings new clarity to the gnarly problems that can emerge in human endeavours, like power struggles, confusion, a lack of responsibility, and the watering down of a creative vision over the long term.[…] This acknowledgement also matters a great deal because, when a founder leaves an endeavour, it is important to know whether that founder is the source. Initiatives can unravel, in predictable ways, if a source leaves without the right care going into a succession process. Similarly, when initiatives merge in some way, paying attention to the role of source can help things to go smoothly and can help the initiative to avoid another set of predictable problems.
Tom Nixon「Work with Source」p36 さらに、ソース(Source) の継承について、トム自身の体験からくる以下のような教訓もあります。
『最初の会社を設立してから10年後、私は株式の大半を売却し、取締役を辞任し、組織におけるさまざまな役割を引き継ぎました。私たちはパーティーでお祝いをし、みんな私が永久に去ったと思っていました。 それから2年後、その会社は破綻し始めていました。権力闘争が始まり、会社のビジョンもはっきりしません。この2つの問題を「ソース(Source) 」という観点から見てみると、どちらも「ソース(Source) 」が本来の役割を果たせなかったことに起因していることがわかります。会社は末期的な状態にあり、毎月多額の赤字を出していました。その結果、誰もが不満と苦痛を感じていました。優秀な人材の潜在能力が引き出されていないのです。 このような状況を外から見ていて、私は、自分が組織を離れても、ソース(Source) の役割が継承されていないため、クリエイティブ・フィールド(creative field) を担当する人がいないことに気がつきました。そして、私は自分が「ソース(Source) 」であることを認めたくないという気持ちを抑え、会社を立て直すために、再び会社に戻ってきたのです。』
Ten years after founding my first company, I sold most of my shares, resigned from the board, and handed over my various roles in the organisation. We had a party to celebrate, and we all thought I’d left for good. Fast forward two years, and the company had begun to fail. Power struggles had developed, and there was a real lack of clarity over the vision for the company. If we examine these two problems through the lens of source, we can see they both point to the lack of a source fulfilling her natural responsibilities. The company was in a terminal decline, and it was losing a large amount of money every month. Everyone was frustrated and suffering as a result. The potential of the brilliant people who worked there was not being unleashed. Watching all of this unfold from outside, I realised that, while I’d left the formal organisation, the role of source had not been passed on, so there was no one to tend to the creative field. After getting over my reluctance to acknowledge that I was still the source, I found myself drawn back to the company to see if we could turn it around.
Tom Nixon「Work with Source」p71 『数年前、私自身の会社でカーニック(Koenig)の原理(Source Principle)を実践したところ、急速な財務状況の好転に始まり、会社全体を吹き飛ばして多くの新しい試みへの道を切り開くという、信じられないような旅を経験しました。この話は、ビジネスの失敗としても、素晴らしい創造性の爆発としても語ることができます。』
Putting Koenig’s principles to work in my own company years ago led to an incredible journey, beginning with a rapid financial turnaround and ending with blowing the entire company apart, clearing the way for a raft of new endeavours to emerge. That particular story can be told either as a business failure or as an incredible creative explosion.
Tom Nixon「Work with Source」p7 実際に会社の立て直しの最中のプロセスの記述に関しては省略しますが、ソース(Source) の継承やソース(Source) の自覚が、どのようにイニシアティブ(initiative)全体の創造性に繋がるかが伺えるエピソードです。
組織のパーパス(Purpose)とソース(source) このクリエイティブ・フィールド(creative field) に関する章以降、組織それ自体を実体と捉え、名詞化されたOrganizationとして見る視点と、ソース(Source) という個人によるイニシアティブ(initiative) が結果として組織を形づくるという、動詞(Organize)として捉える視点があることを見てきました。
トムは、西洋文化では組織は名詞化されており、独立した存在を持つものと考えられている、と説きます。
イニシアティブ(initiative) を法人化することで、人間の個人とほぼ同じように法律で扱うことができる。私たちは、組織が財産を所有し、法的な契約や紛争を締結し、人々を雇用・解雇し、意思決定を行い、組織を設立・運営している人々とは別に法律上の責任を負うことができる、と考えているというのです。
ORGANISATIONS ARE EMERGENT PHENOMENA In Western culture, organisations have become nouns; they are considered to be things that have an independent existence. We’ve written laws to make this idea feel concrete. By turning an initiative into a legal entity, it can be treated in law in much the same way as a human individual. We go along with the idea that an organisation can own property, enter into legal contracts and disputes, hire and fire people, make decisions, and be held accountable in law separately from the people who started and run the organisation.
Tom Nixon「Work with Source」p46 また、近年の組織論の世界では、組織は世界に独立した存在として存在するだけでなく、独自の魂(Organisational Souls あるいはEvolutionary Purpose )を持っているという考え方があります。
この考え方は、フレデリック・ラルーの著書『Reinventing Organizations』で広まりました。
ORGANISATIONAL SOULS A recent idea in the world of organisational thinking is that organisations not only exist as separate entities in the world but have souls of their own.The idea was popularised in Frederic Laloux’s book Reinventing Organizations.
Tom Nixon「Work with Source」p50 しかし、このような組織のパーパス(Purpose) という考え方と、ある個人の創造性から始まるソース(Source) の考え方とは、一線を画します。
トムは、組織のパーパス(Purpose) 、あるいは組織がひとつの存在、実態であるという考えに固執しすぎると、ビジョンを実現するという根本的な創造的プロセスから注意をそらすことになり、ビジョンの水増し、責任の回避、協力ではなく強制、権力闘争の発生などの問題を引き起こすことになるとして、警鐘を鳴らしています。
Getting too attached to this idea can pull our attention away from the underlying creative process of realising a vision and leads to problems such as the watering down of a vision, the avoidance of responsibility, forcing rather than collaborating, and the emergence of power struggles.
Tom Nixon「Work with Source」p21 『組織や、企業における役員は、独立した存在として何かを決定したり、行動したり、発言したりするものではありません。行動を起こすのは人間であり、意見や感情、ニーズを持つのも人間であり、発言するのも人間であり、責任を負うべきなのも人間なのです。さもなければ、私たちは知らず知らずのうちに自分の力を幻のようなものに委ねてしまうことになります』
と言うのです。
Organisations and boards do not decide anything, act, or speak for themselves as independent entities. It’s humans who take action; humans who have opinions, feelings, and needs; humans who speak; and humans who should be held to account. We need to pay attention to that; otherwise we can unwittingly give up our power to a phantom, an illusion.
Tom Nixon「Work with Source」p47 また、『ティール組織(Reinventing Organizations)』で紹介されているような参加型の組織は、ソース(Source) が去ったり、より洗練された組織のあり方に全責任を負えなくなったりすると、より伝統的なパラダイムに逆戻りすることがあります。
『ティール組織(Reinventing Organizations)』の代表的な企業であるFAVI社でも、ソース(Source) のジャン・フランソワ・ゾブリスト(Jean-François Zobrist)が去った後、同じことが起こったようです。
There’s evidence that highly participatory organisations like those featured in Reinventing Organizations can regress back to more traditional paradigms when the source either leaves or fails to take full responsibility for the more sophisticated ways of organising. This is a compelling explanation for why two of the organisations that served as case studies in the book did not maintain their special ways of working. Since the book’s publication, the same appears to have happened at the Reinventing Organizations poster-child company, FAVI, after the source, Jean-François Zobrist, left.
Tom Nixon「Work with Source」p51 以上のような理由から、トムは『組織とは、私たちの想像力の産物であり、客観的な現実に存在する実体ではなく、物語 』と捉え、
『だからこそ、その概念を軽く捉えておくことが有効なのです。組織を尊重するあまり、個人のビジョンやニーズが抑えられてしまうと、個人が自分のニーズやビジョンを「組織」という概念に投影(project) してしまうことになります』
と語っています。
An organisation is a construct of our imaginations; it is a story rather than an entity that exists in an objective reality. So it’s useful to hold on to the concept more lightly. If individual vision and needs are suppressed because of deference to the organisation, individuals will naturally project their own needs and visions on to the concept of “the organisation”.
Tom Nixon「Work with Source」p51 これは、たとえ目的意識の高い活動であっても、混乱やフラストレーション、権力闘争の原因となります。表面的には、組織は人々によって管理されているというストーリーがありますが、実際には、人々は個人的なビジョンを実現し、個人的なニーズを満たすために無意識のうちに競争しています。
This can cause confusion, frustration, and power struggles, even in highly purpose-driven endeavours. There can be a surface-level story according to which the organisation is being stewarded by the people, while they are actually unconsciously competing to realise their personal visions and meet their individual needs.
Tom Nixon「Work with Source」p51 一方、すべての従業員を満足させるために、すべてを最小公倍数にしてしまうことで、イニシアティブ(initiative) からエネルギーを奪ってしまうこともあります。
上記のように、組織のパーパスに基づくパラダイムでは 、全員が組織に従属することを期待され、集団的な取り組みに参加する中で、個々の人生における意義ある使命を果たす方法を見失ってしまう危険性があるとトムは強調しています。
Alternatively, the group may reduce everything to the lowest common denominator to satisfy all the employees, draining the energy from the initiative.There is a risk with this paradigm that everyone will be expected to be subservient to the organisation and may miss out on finding ways to live their individual, meaningful callings in life as they engage with the collective endeavour.
Tom Nixon「Work with Source」p51 また、トムは、組織の魂のパラダイム(the organisational soul paradigm) は「Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 」のレンズで統合することで、改善できると話しています。
Despite these risks, I do not suggest rejecting the organisational soul paradigm altogether. I believe we can improve it by integrating it with the lens of the Source Principles.
Tom Nixon「Work with Source」p52 もし、FAVIのように、トップダウンの組織運営に逆戻りしてしまった組織において、ソース(Source) の役割を担っていた人たちが、自分たちのユニークな役割を認識していたならば、彼らが去る前にソース(Source) の継承を促し、私たちが目にしたような残念な結果を避けることができたかもしれない、と考えられるためです。
If those individuals in the role of source of the endeavours like FAVI which regressed back to more topdown ways of organising had acknowledged their unique roles, they could have instigated a succession of source before they left and potentially avoided the disappointing results we saw.
Tom Nixon「Work with Source」p52 『ティール組織(Reinventing Organizations)』の出版後、フレデリック・ラルーもまた自説の中にソース(Source) の視点を自説の中に取り入れるようになりますが、トムもその経緯を振り返りながら以下のように書いています。
In the years following the publication of Reinventing Organizations, as I and others highlighted some of these issues, Frederic Laloux also came to recognise that Peter Koenig’s source perspective is extremely useful for building next-generation, highly participatory organisations. Laloux has since spoken about this in a video series, and many of his followers are now integrating source into their mental models too.
Tom Nixon「Work with Source」p52 Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)をどう扱うか? Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の活用は、個人の選択に委ねられている 以上、組織の魂(Organisational Souls)とソース(Source) についても見てきましたが、トムはソース(Source) を活用することは、個人的な選択であり、自分の推論、経験、本能が、このレンズを使って物事を見ることが理にかなっていると言うなら、それを使えばいいというスタンスです。
世界がどのように機能しているかについて、人々がまったく同じメンタルモデルを採用することは健全ではなく、現実的にも不可能であるし、もし実現したとしても、それは実用的な概念や原則ではなく、教義(a dogma) となってしまうと考えるためです。
It’s not healthy, and not even practically possible, to get a group of people to adopt exactly the same mental model about how the world works. Such a model becomes a dogma rather than a working set of concepts and principles.[…]So working with source is a personal choice. If your own reasoning, experience, and instincts tell you that looking at things through this particular lens makes sense, then use it.
Tom Nixon「Work with Source」p24 Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)は常に更新の可能性を持つ また、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) の提唱者であるピーターもトムも、その可能性を感じつつもSource Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) が絶対的な自然の法則(laws of nature) とは表現していません。
Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) が更新されうる、より良いモデルが出てきた場合には、それを採用する準備と意思を持つことの重要性を説いています。
Attempting to impose the Source Principles on a group is highly likely to fail, since nobody can say with any ultimate authority that the principles are fundamentally true. Even Peter Koenig stopped short of describing his principles as laws of nature. They have been continually refined as new evidence has emerged, and we must be ready and willing to adopt a better model, should one come along.
Tom Nixon「Work with Source」p24 Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)に至るまでの、それぞれの旅路の違いを尊重する そして、トムの経験によれば、ソース(Source) に最も馴染みやすい人にはいくつかの特徴があるそうです。
彼らは、以前に何か重要なことでソース(Source) の役割を担ったことがあり、原理原則が説明する複雑なダイナミクスの一部を直接経験したことがある、また、彼らはしばしば他のさまざまなメンタルモデルや組織的パラダイム(トップダウンとボトムアップの両方)を使って状況を理解し、何かが欠けていたりうまくいっていないこと経験してきた場合が多い。
In my experience, the people who click most easily with source share some characteristics. They have often been in the role of source for some- thing significant previously and directly experienced some of the complex dynamics the principles help to explain. They have also often used a variety of other mental models and organisational paradigms - both top down and bottom up - to make sense of their situations and found something missing or not working. So when they learn about the Source Principles, they finally have a language and concepts which explain something they have felt yet not been able to articulate.
Tom Nixon「Work with Source」24-25 また、人によっては過去の経験から、ソース(Source) の新しい視点が何か強い感情を引き起こす可能性があります。
この新しい視点を受け入れる準備ができるまでには、個人的な癒しの旅が必要かもしれません。そして、そのことについて誰も診断や治療(cure)を強制することはできませんし、すべきではないのです。
Introducing the Source Principles can be contentious. Some people have been so wounded by their past experiences in top-down endeavours that they react by strongly favouring highly collectivist approaches. The new perspective of source can trigger strong emotions for them, as working with source acknowledges the virtue in both top-down and bottom-up models and at- tempts to integrate and transcend them. There may be a personal journey of healing needed before they are ready for this new perspective, and nobody can or should force a diagnosis or cure on them.
Tom Nixon「Work with Source」p25 反対思考(opposable thinking)のすすめ 同様に、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)とは異なる別の見方があるかもしれませんが、 どちらがより妥当かを客観的に証明することはできません。
しかし、視点の違いは反対思考(opposable thinking) の能力を向上させるチャンスと言えます。
反対思考(opposable thinking)は、 AかBかという二極化(polarisation) を断ち切り、同じ方向に向かって引っ張ることで、より大きな意味を生み出す可能性を見出すことができるのです。
この思考法は、複雑な環境の中でグループが無数の対立する視点(opposing viewpoints)やアイデアを同時に保持することや、ますます偏った意見(polarised views)で定義されるようになった世界を解決するためにも役立ちます。
Equally, there may be other ways of seeing things which are at odds with the Source Principles, but it may simply not be possible to objectively prove which is the more valid. Rather than seeing that as a problem, as I once did, I’ve learned that differences in perspective offer an opportunity to improve our abilities in opposable thinking. We can find ways to cut through polarisation, pull in the same direction, and create the potential for greater meaning to emerge. Opposable thinking can also help groups hold countless other opposing viewpoints and ideas at the same time as they navigate a complex environment. It’s a key part of the solution to a world increasingly defined by polarised views, so I’ve included some useful approaches for opposable thinking in the Appendix if you’d like to explore this further.
Tom Nixon「Work with Source」p25 すべては愛/IT’S ALL ABOUT LOVE 以上、ソース(Source) およびソース(Source)の生み出すクリエイティブ・フィールド(Creative Field) 、そしてソース(Source) と組織のパーパス(Purpose)に対する考え方の違いを見てきました。
以上を踏まえつつ、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) を体系化してきたピーター・カーニック(Peter Koenig) はどのような価値観を持っているのでしょうか?
ピーター・カーニック(Peter Koenig) は、ビジネスにおいて愛を創造することが人生の目的だと言っています。
Peter Koenig says his personal purpose in life is to create love in business, and I’ve also come to believe that working with source is a wonderful way to show up and act with love. But what is love?
Tom Nixon「Work with Source」p26 トムもまた、ソース(Source) を活用することは、愛を持って現れ、行動するための素晴らしい方法だと考えています。
そして、トムにとっての愛とは、ロマンチックな愛よりも範囲が広く、結合(union)であると言います。
『私にとっては、最終的にはすべての人とすべてがつながっていて、宇宙のあらゆるものの間に根本的な隔たりはなく、私の苦しみはあなたの苦しみであることを受け入れることです。
私たちはこの理解を携えて、自分自身や他人、そして周囲の世界に優しい思いやりをもって関わることができるのです。』
My personal interpretation of this kind of love, which is broader in scope than romantic love, is that it is a union. To me, it’s the acceptance that ultimately everyone and everything is connected, that there is no fundamental separation between anything in the Universe, and that my suffering is your suffering. We can carry this understanding with us as we relate to ourselves, others, and the world around us with a tender compassion.
Tom Nixon「Work with Source」p26-27 ソース(Source)の創造性とお金との関係 『Work with Source(すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力 )』のPart 3では、お金の本質とソース(Source)であることに関して取り扱います。
これまで、本書の読書記録のまとめにおいても、ソース(Source)がビジョンを実現するという外向きのクリエイティブなプロセスに焦点を当ててきました。
しかし、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』は、ソース(Source)が外向きのクリエイティブなプロセスだけではなく、内向きの自己開発(self development)に取り組む重要性を強調しています。
自分のソース(Source)に踏み込むということは、世界の物事を創造したり変化させたりするプロセスだけではなく、自分の偏見や盲点、過去が現在の現実に及ぼす影響などを意識し、自己認識を深める内面の旅でもあるのです。
Stepping into our own source is not just the process of creating or changing things in the world but also the inner journey of becoming more self- aware and conscious of our biases and blind spots and the effects of our pasts on our present-day realities.
Tom Nixon「Work with Source」p22 そして、創造性とは個人の歴史や欲求の表れ であり、自分自身を完全に解放するためには、自分の内面に目を向けなければならない、と考えているためです。
Creativity is a manifestation of our personal histories and drives, so to unleash ourselves fully, we must tend to our inner world. This is vital for unlocking our creative potential and for working mindfully with the mischievous gremlins lurking in the shadows of our personalities (another thing I learned the hard way during my own journey as a founder).
Tom Nixon「Work with Source」p7 そして、この内面の旅には、お金との関わりから入っていくことができるのです。なぜなら、好むと好まざるとにかかわらず、どんな実体のあるビジョンでも、お金がなければ適切な流れにはならないためです。
お金とは鏡のようなもので、私たちが無意識のうちに固執したり拒絶したりする自分自身の側面を映し出します。また、私たちの過去は、お金との関係を形成しています。
私たちは内面の旅において、お金による条件付けを超えることで、お金と上手に付き合い、創造的なビジョンを実現することができます。この条件付けを超越するプロセスはお金との関係を変えるだけでなく、個人的にも深い変化をもたらすことができるのです。
Like it or not, most visions of any substance require money to flow appropriately: we must neither chase money for its own sake nor push it away.The fundamental nature of money is like a mirror, reflecting back to us aspects of ourselves that we cling to or reject, often unconsciously. Our past shapes our relationship to money, yet by transcending our conditioning we can work artfully with money to realise a creative vision. This process of transcending our conditioning not only changes our relationship to money but can effect a deep personal transformation.
Tom Nixon「Work with Source」p8 ところで、本書を読み進めていくとトムに『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』を伝え、時に導いたピーター・カーニック(Peter Koenig) という人物の名前が出てきました。 それは、本書のPart 3。これ以降扱うソース(Source)の創造性とお金との関係 の章においては顕著で、
邦訳版『すべては1人から始まる』 においては翻訳・監修の一人である青野英明さん によってピーター およびマネーワーク(人とお金の関係を見直し、ソースの創造性を取り戻すインナーワーク) に関するコラムが設けられているほどです。
ソース(Source)とお金の関わりについて探求するにあたり、
そもそもどのように『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』が生まれてきたのか?
開発者であるピーター・カーニック氏(Peter Koenig:以下、ピーター)はどのような旅路を経て、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』を作り上げるに至ったのか?
について捉えなければ、その本質が見えてきません。
いわば、「ソース(Source)の役割」と「お金と人の関わり」に関して人に伝え、ビジネスに愛をもたらそう( Create Love in Business ) というイニシアティブのソース(Source)はピーターであるためです。
ここからは、トムに『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』を伝えた、ピーター自身について見ていきたいと思います。
Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の提唱者:ピーター・カーニック(Peter Koenig) ピーターは、現在75歳。イギリスのロンドンに生まれ、20代半ば以降はスイスのチューリッヒを活動の拠点としているとのことですが、今なお、お金と人との関わり、お金をきっかけとした内面の変容、歴史的・文化的・社会的・精神的に深くシステムとして根付いたお金そのものに関する探求を続け、人々にその知見を提供しています。
彼自身の言葉によれば、彼は『お金が大好き 』。
それは、小さい頃からずっとそうであり、幼い頃から学生時代、そして学生時代以降にも多くのお金を稼ぎ、若くして経済的な成功を収めたビジネスマンでした。
しかし、33歳の時に転機が訪れます。
これ以上稼いでも、自分のためにも、健康のためにも、周りの人のためにもならないと思い、これまでの働き方・あり方に大きな疑問符がついたと言います。それ以降、彼のお金と人との関係についての研究が始まりました。
その後の約7年の間に、彼はいくつかの重要な結論、特に、自由について重要な結論に達しました。
それは、人は、お金があってもなくても自由なのだ。そして、自由はお金の多寡とは関係ない 、というものです。
このことは、彼の仕事における極めて重要なコア・メッセージとなりました。
ピーターは1980年代に経営コンサルタントとしての仕事を始め、ビジョン作成および組織変革プロセスに取り組むほか、1994年には初のお金に関するセミナーの開催、1999年にはマネー&ビジネスパートナーシップに関する新たな国際カンファレンス を開始しました。
この活動の中、何百人もの人々と出会う中で、なぜ組織の変革プロジェクトが失敗することが多いのか、なぜ創業者のビジョンが実現しないことが多いのかに興味を持つようになりました。
Through his work as a management consultant beginning in the 1980’s, Peter Koenig became curious about why organisational change projects so often fail, and why the vision of the founder of an endeavour so often fails to materialise.
https://workwithsource.com/what-is-source/introduction/ また、これらの活動の中で創業者や起業家たちのビジョンや取り組みについて、何十回も小規模なワークショップを重ね、組織の中における「ソース(Source)の役割」を意識し始めます。さらに、「マネーワーク('moneywork') 」という、お金との関わりを起点にソース(Source)の内面の変容を促すワークを開発し、人々に提供するようになりました。
これらの知見をもとに人とお金との関わりに関しての書籍をまとめ、
2009年からは、500人以上の起業家や創業者を対象としたリサーチにより、ソースに関するアイデアを精緻化し始め、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』へとまとめ上げていきました。
Peter has studied the phenomenology of money since the early 1980s, giving presentations and performing original research with small groups. Following an MBA in Geneva, Peter ran a business providing management training, leadership and strategic development processes for companies. In 1987 he became an independent financial and organizational consultant to companies and non-profit organizations. In 1994 he launched his first public Money Seminar and in 1999 initiated a new international conference series on Money & Business Partnership. In 2009 he started elaborating his ideas on source, with his research involving over 500 entrepreneurs and founders.
https://createlovein.business/ ここまでの一連の流れとイニシアティブを貫いている、ピーターの人生の目的が「ビジネスに愛をもたらす(create love in business) 」です。
IT’S ALL ABOUT LOVE Peter Koenig says his personal purpose in life is to create love in business,
Tom Nixon「Work with Source」p26 また、2023年6月にはピーターへのインタビュー記事がForbes Japanに掲載されています。よろしければこちらもご覧ください。
以上のように『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』は膨大な実践と研究に裏打ちされています。
しかし中編でも書いたように、ピーターは自身の見出した『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』が自然の法則(laws of nature)である、とは断言していません。
検証による、モデルのさらなる発展を期待しており、更新の可能性があることを認めています。
Attempting to impose the Source Principles on a group is highly likely to fail, since nobody can say with any ultimate authority that the principles are fundamentally true. Even Peter Koenig stopped short of describing his principles as laws of nature. They have been continually refined as new evidence has emerged, and we must be ready and willing to adopt a better model, should one come along.
Tom Nixon「Work with Source」p24 Koenig doesn’t claim that his research is scientific. A scientific approach to testing the principles by an interested party would be welcomed to further the research.
https://workwithsource.com/what-is-source/introduction/ さらに、後述する『JUNKANグローバル探究コミュニティ』 の吉原史郎 氏もまた、ピーターやトムに直接インタビューを申し出て、なぜ理論(Theory)ではなくプリンシプル(Principle)としたのか?についてを紹介してくれています。
2022年。Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の現在 上記のような変遷を経て、現在、ピーターおよび『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』はどのような状況にあるのでしょうか。
まず、ピーターのウェブサイト(ブログ)は、以下のものです。ここでは、彼の知見が記事として更新されている他、彼の関連するイニシアティブへのリンク等も充実しています。
また、マネー&ビジネスパートナーシップおよび、カンファレンスについては以下のサイトで運営されています。
そして、ピーター自らソース(Source)について語る動画は、以下のようなものがあります。
Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の書籍化
『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』書籍化については、彼のパートナーたちが担うことで実現されてきました。 一冊は、2020年に出版された、ステファン・メルケルバッハ(Stefan Merckelbach) による『 A little red book about source 』 (未邦訳)。
もう一冊が、2021年に出版された、トム・ニクソン(Tom Nixon) による『Work with Source』 です。
英語サイトにはなりますが、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』に関する情報サイトは現在、2つ運営されています。
『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』とReinventing Organizations(ティール組織) 以降、『ティール組織」ムーブメントについて触れた記述と重複しますが、
ここ近年では、Reinventing Organizations(ティール組織)著者であるフレデリック・ラルーが、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』の考え方を自身のモデルの中に引用し、日本国内でも紹介した他、
2016年出版のイラスト解説版『Reinventing Organizations』の注釈部分にも反映し、
さらに、以下の動画で紹介しています。
ピーターのイニシアティブのサブソース/sub -source(スペシフィック・ソース/specific source) であり、Reinventing Organizations(ティール組織)のコンセプトに共鳴していたトムは、組織のパーパス(Purpose)に関する見解の違いについてフレデリックと対話を重ねました。
その中でフレデリックは、このような言葉を残しています。
ピーター・カーニックの考え方 に出会ったことで、私が「場を保持する(holding the space)」と呼んでいた、組織の目的にチャネリングすることを含む、より良い言葉が得られました。 Now that I’ve encountered Peter Koenig’s thinking, I have better words for what I called “holding the space”, which includes channeling the organization’s purpose.
Resolving the awkward paradox in Frederic Laloux’s Reinventing Organisations この点に関して、トム自身も『Work with Source』の中で言及しています。
In the years following the publication of Reinventing Organizations, as I and others highlighted some of these issues, Frederic Laloux also came to recognise that Peter Koenig’s source perspective is extremely useful for building next-generation, highly participatory organisations. Laloux has since spoken about this in a video series, and many of his followers are now integrating source into their mental models too.
Tom Nixon「Work with Source」p52 ここでも、『JUNKANグローバル探究コミュニティ』 の 吉原史郎氏が、トムやピーターから直接話を伺い、パーパス(Puropose)に関しての理解を深める記事をまとめてくれています。
こうしてピーターの視点からSource Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)の展開を振り返ってみると、前編でまとめた流れとはまた違った景色が見えるかもしれませんね。
2022.夏。トム・ニクソンの来日 2022年8月。以上のような経緯を経て、トムが日本へ来日することとなりました。
現在、国内における『Source Principle(ソース・プリンシプル / ソース原理)』 探究の入り口づくりを行っているイニシアティブは、大きく2つ。
一つは、『ティール組織』解説者・嘉村賢州が参加し、また、『Work with Source』の邦訳出版プロジェクトを推進している『令三社』 。
もう一つは、「自然の畑」からの学びを組織経営に活かす『JUNKANグローバル探究コミュニティ』 です。
『JUNKANグローバル探究コミュニティ』 (吉原史郎)は、先述してきたように、トム来日前からトムやピーターと直接対話することで、その知見を紹介する記事を提供してくれていました。
また、『令三社』 は国内での公開イベントで語られたトムの知見をまとめてくれています。
以上、国内でも少しずつ広がりつつある『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) 』ですが、2022年10月に『Work with Source』邦訳書籍『すべては1人から始まる―ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』が出版されました。
そして、日本においても、『Work with Source』翻訳出版イニシアティブによってウェブサイトがオープンしています。
再び、ソース(Source)の創造性とお金との関係について 以上、改めてソース(Source)とお金が関係しているのか、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理) の開発者であるピーターのプロセスも辿りながら整理してきました。
ここで一度、ソース(Source)の働きについても振り返りたいと思います。
ここまで、ソース(Source )とは「あるアイデアを実現するために、最初の個人がリスクを取り、最初の無防備な一歩を踏み出したときに自然に生まれる役割 」であり、「脆弱なリスクを取って、ビジョンの実現に向けて自らを投資することで、率先して行動する個人のこと 」であると見てきました。
本書中においては、アイデアを実現するための継続的な展開プロセス である「イニシアティブ(initiative) 」。
ソース(Source) がイニシアティブ(initiative) を取る時、ビジョンを実現するために必要な人やその他のリソースを引き寄せ 、努力を束ねることで一貫性を生み出す魅力的なフィールド…クリエイティブ・フィールド(creative field) が確立されます。
この時、アイデアを実現するという外向きのクリエイティブなプロセス……ビジョンを描き、集ってくれたサブソース/sub -source(スペシフィック・ソース/specific source) や、また異なるイニチアティブとコラボレーションしていくなどの外向きのプロセスだけではなく、ソース(Source)自身の内面……内向きの自己開発(self development)に取り組むことが重要です。
なぜなら、自分のソース(Source)に踏み込むということは、自分の偏見や盲点、過去が現在の現実に及ぼす影響などを意識し、自己認識を深める内面の旅でもあるからです。
ビジョンに対するソース(Source) のエネルギー、つまり情熱は、努力のための燃料のようなものです。そのため、ソース(Source) は、自分の肉体的・精神的な健康と、自分がエネルギーを持つビジョンにつながり続けることに気を配らなければなりません。ソース(Source) の内面的な状態は、参加するすべての人が感じる活力やエネルギーの感覚と直接的に関係しているのです。
The source’s energy, or passion, for the vision is like the fuel for the endeavour. A vision without sufficient energy powering it will never get off the ground.The source’s energy for her vision must be strong enough to create an imperative to act and stick it out. It is also vital that her energy is maintained. Everybody else is drawn in by it, and if it wanes, then gradually the energy level in the whole endeavour will drop, sometimes with tragic consequences. This is why it’s vital for the source to stay connected to the vision for which she has energy and not veer off-track. The source must look after her physical and mental health and her own growth and development. Her inner state will directly correlate with the vitality and feeling of energy felt by everyone else who participates.
Tom Nixon「Work with Source」p37-38 もし、ソース(Source) が、自分に合わないとわかっているものを入り込ませてしまったら、ゆっくりと、しかし確実に、クリエイティブ・フィールド(creative field) はまとまりを失ってしまうでしょう。そうなると、ソース(Source) のエネルギーが衰え、ビジョンに取り組む全員の活力が失われていくことが予想されます。
If a source allows things to creep in that she knows don’t fit, then slowly but surely the creative field will lose all coherence. If this happens, we can expect the source’s energy to wane and the feeling of vitality among everyone working on the vision to weaken.
Tom Nixon「Work with Source」p77 ソース(Source)が明晰で、創造的で、究極的には愛に満ちた場所から行動するとき、私たちはその文化が活力にあふれ、可能性、つながり、行動に 満ちたものになることを期待できます。一方、ソース(Source)が無意識の影(shadow) にある病理から行動すると、文化は痛みと混乱に満ちたものになるでしょう。
When a source acts from a clear, creative, and ultimately loving place, we can expect the culture to be vital and full of potential, connection, and action. When a source acts from pathologies in her unconscious shadow, the culture will be full of pain and confusion.
Tom Nixon「Work with Source」p110 そして、この内面の旅には、お金との関わりから入っていくことができます。なぜなら、好むと好まざるとにかかわらず、どんな実体のあるビジョンでも、お金がなければ適切な流れにはならないためです。
お金とは鏡のようなもので、私たちが無意識のうちに固執したり拒絶したりする自分自身の側面を映し出します。また、私たちの過去は、お金との関係を形成しています。
私たちは内面の旅において、お金による条件付けを超えることで、お金と上手に付き合い、創造的なビジョンを実現することができます。この条件付けを超越するプロセスはお金との関係を変えるだけでなく、個人的にも深い変化をもたらすことができるのです。
Like it or not, most visions of any substance require money to flow appropriately: we must neither chase money for its own sake nor push it away.The fundamental nature of money is like a mirror, reflecting back to us aspects of ourselves that we cling to or reject, often unconsciously. Our past shapes our relationship to money, yet by transcending our conditioning we can work artfully with money to realise a creative vision. This process of transcending our conditioning not only changes our relationship to money but can effect a deep personal transformation.
Tom Nixon「Work with Source」p8 お金とアイデンティティの関係を紐解く ソース(Source)のお金との関係は、彼らのクリエイティブ・フィールド(creative field)でお金がどのように機能するか、あるいは機能しないかを決める重要なものです。興味深いことに、この関係は、ソース(Source)が創造的な可能性を発揮するために不可欠な、深い自己啓発への強力な直接のルートでもあります。
The source’s relationship to money is critical to how money works – or does not work – in her creative field. Fascinatingly, this relationship is also a powerful, direct route into the kind of deep self-development that’s essential for a source to unleash her creative potential.
Tom Nixon「Work with Source」p217 最も効果的で創造的なソース(Source)は、執着や回避を伴わないお金の扱い方を持っています。彼らは、自分のビジョンを推進するためにお金を働か せる方法を見つけます。彼らは、自分のビジョンを実現するためにお金を働かせる方法を見つけるのです。いずれにしても、自分の創造的な取り組みが美しく、驚くような形で実現するのを目の当たりにし、それが彼らの真の原動力となるのです。
The most effective, creative sources have a way with money that involves neither attachment nor aver- sion; they find ways to get money working to further their visions. Some- times they make a lot of it, and other times they make very little, yet they thrive regardless. In any case, they see their creative initiatives come to life in beautiful, surprising ways, and that’s what truly fuels them.
Tom Nixon「Work with Source」p228 部屋中の人に「お金とは何だと思いますか 」と尋ねれば、部屋中に答えが返ってくるでしょう。あなたのお金のライフストーリーのエクササイズに参加すれば、あなた自身の答えの数々が浮かび上がってくるでしょう。
THE DEFINITION OF MONEY If you ask a room full of people what they think money is, you’ll get a roomful of answers. If you played along with the your money life story exercise you’ll have surfaced a bunch of your own answers.
Tom Nixon「Work with Source」p228 あなたがお金についてどんなストーリーを持っているかによって、 あなたにとってお金がどんなものになるかが決まります。そしてそ れは、あなたがその物語に執着している限り、あなたにとって真実となります。
Whatever stories you have about money are what money becomes for you. And that will be true for you for as long as you are attached to those stories.
Tom Nixon「Work with Source」p221 お金には良いも悪いもなく、根本的な性質がありません。何かをしよう、何かになろうという意志もありません。お金は、私たちが考えた通りのものになるだけなのです。お金にまつわる物語は無限にあり、唯一の限界は人間の想像力です。 お金にまつわるストーリーは、実は自分自身にまつわるストーリーでもあります。それは、人生の舞台で演じるキャラクターのようなもので、アイデンティティと考えてください。
Money has no fundamental nature, good or bad. It has no will of its own to do or be anything. Money simply becomes, for each of us, whatever we think it is. There are no end of stories we can tell about money; the only limit is the human imagination. The stories we hold about money are actually stories about ourselves. Think of them as identities, like characters we might play in the theatre production of our lives.
Tom Nixon「Work with Source」p222 人のアイデンティティとは、その人が人生で演じるキャラクターおよび演じることに抵抗を感じるキャラクターのことです。アイデンティティは、私たちの 習慣、態度、信念、行動、視点を支える基盤であり、最終的には私た ちの人生の状況を作り出すものです。
A person’s identity is the repertoire of characters they show up as in life and the characters they resist playing. Identity is the foundation upon which our habits, attitudes, beliefs, behaviours, and perspectives rest; it is what ultimately creates the circumstances of our lives.
Tom Nixon「Work with Source」P231 ピーター・カーニックは、このことを視覚化するために、私たちのアイデンティティ全体を、何千もの小さな鏡でできた大きくてキラキラしたディスコボール と考えることができると言っています。
それぞれの小さな鏡は、安全な私、自由な私、可能な私、 面白い私など、特定の瞬間に私たちが体現するさまざまなキャラクターを表しています。ディスコボール の反対側には、それらは、カール・ユングが「影(shadow) 」と呼んだように、暗闇の中、無意識の中、抑圧された状態である不安な私、閉じ込められた私、障害のある私、退屈な私など、それぞれの個性の反対側があります。
To visualise this, Peter Koenig says we can think of our whole identity as a big, glittering disco ball, made of thousands of tiny mirrors. Each little mirror represents a differ- ent character we might embody at a particular moment: the secure me, the free me, the enabled me, the funny me, and so on. On the opposite side of the disco ball we find the opposite of each identity: the insecure me, the trapped me, the disabled me, the boring me.
Tom Nixon「Work with Source」p231 They are in the dark, unconscious, and suppressed, in what Carl Jung called the shadow.
Tom Nixon「Work with Source」p231 私たちの人生経験によって形成された、光を浴びたり隠れたりするアイデンティティのユニークな組み合わせが、私たちの総合的なアイデンティティを構成し、私たちを私たちたらしめています。このアイデンティティは、最終的に私たちの生活環境を作り出す習慣、態度 、信念、行動、視点を動かします。ソース(Source)の人生においては、彼らのトータル・アイデンティティが、ソース(Source)としてのビジョンが実現されるかどうかの最も深い原動力となります。
The unique combination of identities that are lit up or hidden away, which is shaped by our life experiences, constitutes our total identity, making us who we are. It drives the habits, attitudes, beliefs, behaviours, and perspectives which ultimately create our life circumstances. In the life of a source, her total identity is the deepest driver of whether her visions will be realised or not.
Tom Nixon「Work with Source」p232 私たちは、あるアイデンティティを完全に体現するには、その反対のものを深く知り、受け入れなければなりません。囚われていることを知らずに自由になることはできません。不安を知らずに安心することはできません。悲しみを知らずに喜び、愛されていないことを知らずに愛されることはできません。アイデンティティを取り戻すことは、全体性への道なのです。
We cannot fully embody an identity unless we deeply know and accept its opposite, […]We cannot be free without knowing what it is to be trapped; secure without knowing insecurity; joyful without knowing sorrow; or loved without knowing what it is to be unloved. Reclaiming identities is a path to wholeness.
Tom Nixon「Work with Source」p236 お金との関わりの変容を促す3つの実践法 本当の意味でお金に動かされている人はいません。人は、お金に投影(project) する力と、お金が語ると信じているストーリーによって動機づけられます。
Nobody is truly motivated by money. People are motivated by the powers they project on to money and the story they believe the money is telling.
Tom Nixon「Work with Source」p168 ピーター・カーニックは、私たちが自分のアイデンティティを広げるための練習法を開発しました。抑圧されていたアイデンティティを取り戻し、アクセスすることができます。また、安全や自由をお金に投影 (projecting)するように、自分のアイデンティティを他のものに投影 (projecting)するのをやめることもできます。
Peter Koenig developed a practice to help us to expand our identities. It enables us to reclaim and access identities that have been suppressed, and it also helps us to cease projecting our identities on to other objects, like projecting our security or freedom on to money.
Tom Nixon「Work with Source」p236 お金との付き合いの中で、罪悪感や嫉妬、不満、恥、あるいは病気のような感覚が残っていることかもしれません。また、次のステップを明確にしているにもかかわらず、足踏みしている場合もあります。あるいは、誰かの行動が引き金となって、その人を批判している自分に気づくこともあるでしょう。これらは、取り戻すべきアイデンティティがあるという有益なシグナルや、採用すべきアイデンティティに対する恐れ、躊躇に気づく一歩となります。
This may be something in our dealings with money that is leaving us with a sense of guilt, jealousy, frustration, shame, or even sickness. This is a signal that we’re projecting an identity on to money. Or perhaps we are clear about the next step for our initiative yet find ourselves stalling. Here there is an identity we need to adopt that we are afraid to become. Or it may be that we’re triggered by someone else’s behaviour and find ourselves judging this person. This is a helpful signal there’s an identity to reclaim.
Tom Nixon「Work with Source」p237 ここからは、3つのエクササイズの手順について簡潔にまとめていきたいと思います。
あなたのマネー・ライフ・ストーリー:YOUR MONEY LIFE STORY あなたが初めてお金の存在を覚えた時から現在に至るまで、お金が強力な力を発揮した人生の重要な出来事と、その際に感じた気持ちを時系列順に書き表してみましょう。 • 稼ぐ、使う、貯める、借りる、盗む、見つける、失う • 葛藤と満足の時、栄光と恥、恐怖と喜び • 罪悪感、嫉妬、不満、あるいは病気など 何が起こったかだけでなく、それぞれの瞬間にお金が何を表していたかを書き留めてください。 あなたのお金のライフストーリーが見えてくると、実はあなたの人生について非常に個人的な話をしていることに気づくでしょう。 自分の特性が長年にわたってどのように発展してきたか、そして、あなたの人生におけるお金の物語は、あなたがどのように今日のあなたになったか、という深い物語の窓であることがわかるでしょう。
特に、同じような性質、何度も現れるパターンがあれば、注意してください。これは、あなたとお金との関係を垣間見る最初の一歩です。
お金への投影の再生フレーズ:reclamation phrases 続いて、お金への投影を扱う方法です。代表的な例を挙げてみましょう。
「お金は安心だ」 “Money is security.”
という投影があります。
(安心という言葉は、あなたがお金から連想するポジティブな力…自由、成功などに置き換えてもいいでしょう)
では、これを言い換えて唱えてみるとどうなるでしょうか。
このプロセスでは、再生フレーズを声に出して唱えることで、頭だけでなく、体や神経系にもこれらのアイデンティティを処理する機会を与えます。そうすることで、知的な受容を超えて、身体的な統合感を得ることができるのです。正確に繰り返すことが大切です。
「お金があってもなくても安心だ」 I am secure, with and without money.
いかがでしたか?そのフレーズは抵抗なく通り抜けたのか、 それともどこかで遮られたのか。
声に出してフレーズを繰り返し、今度は体の感覚に注意してみましょう。
「お金があってもなくても安心だ」 I am secure, with and without money.
腸、胸、喉などに抵抗がありますか?もしかしたら、全身が抵抗して拒絶しているのを感じたかもしれません。何かを感じることができれば、あなたはうまくいっています。それを探ってみてください。
それはどのような感覚ですか?ドキドキするような感覚、 むずむずするような感覚、締め付けられるような感覚?鋭い痛みですか?その感覚は持続しているのか、それとも変化しているのでしょうか? 動いたのでしょうか? さらに、このフレーズをもう一度繰り返し、生じた身体的感覚に耳を傾けます。
「お金があってもなくても安心だ」 I am secure, with and without money.
抵抗感は同じですか、それとも変化していますか? 何かを変えようとする必要はありません。ただ気づいてください。 感覚は強くなっていますか、それとも弱くなっていますか?時間が経てば、抵抗感が消えて、このフレーズが純粋に自分のものになるかもしれません。
投影されたものを即座に取り戻せないのであれば、落胆するのは当然ですが、その必要はありません。
このフレーズは嘘だと思っていても、自分の中で一番役に立つ嘘かもしれないと思ってください。とりあえず、自分に嘘をつくことを許可して、それによって安心感やお金との関係がどう変わるかを見てみましょう。
また、別の機会にこのフレーズに戻って、何か変化があったかどうかを確認してみてください。変化が起こると、それはとても大きなものになり、あなたがアイデンティティの上に築いてきた習慣、考え方、信念なども変化することを経験するかもしれません。 私たちの中には、身体的な経験につながることが難しい人がいます。そのため、最初は不自然に感じられる方もいらっしゃると思います。
このような場合、心と体の意識を高めるための練習を始めてみることが良いかもしれません。
『Work with Source』巻末には、そのような方法への招待が記載されています。
正反対のものを取り戻す:Reclaiming the opposite 今度はその正反対の面を取り戻すことに切り替えます。
例えば、「安心」 に取り組んでいるのであれば、自分にとって「安心」の反対語は何かを考えてみてください。単なる不安なのか、それとももっと正確なのなのか。そして、次のような再生のフレーズを声に出して唱えてみてください。
私は不安ですが、それで大丈夫です。 I am insecure, and it’s okay.
もう一度言いますが、これが嘘のように感じても大丈夫です。 体のどこで、どのような抵抗があるかに気づいてください。それでもブロックが移動しない場合は、このフレーズを自分に言い聞かせるためのとても有効な嘘として扱うことを自分に許してみましょう。意識を向けるだけで、力強い一歩となります。 何度かフレーズを繰り返し、身体の感覚に同調したら、再生の段階に戻ります。自分のアイデンティティを取り戻したら、それをさらに高めていきましょう。
私は不安ですが、それで大丈夫です。 I am insecure, and it’s okay.
から、
私は不安ですが、それが良い。 “I am insecure, and it’s good.”
さらに、
私は不安ですが、それを愛しています。 “I am insecure, and I love it.”
もしさらに上げていけたなら、
私はヨーロッパで一番不安な人で、それが大好きでたまらない! "I am the most insecure woman in Europe, and I fucking love it!"
というような、大袈裟な表現まで行ってみましょう。
ここまでたどり着いた時、これらの長い間閉じ込められていた自分自身の一部は、今では彼らの人格に統合されています。それらはそこにあることを認められているのです。
あらゆる人々がソース(Source)である 自らの内面を豊かにしていくことは、人生における創造性と充実感を高めることにつながります。
一方で、私たちは皆、性別、肌の色、学歴、出生地など、自分ではコントロールできない状況や特性の影響を受けています。
Self-development can lead to greater creativity and fulfilment in our lives, yet we are all affected by circumstances and characteristics beyond our control, like our gender, skin colour, education, and place of birth.
Tom Nixon「Work with Source」p243 多くの人々が、欠乏や思いやりの欠如、体系的な人種差別など、 さまざまな問題に基づいて構築された社会経済システムの犠牲になっています。これらのシステムは、お金とは何かを深く理解していないリーダーや、自分自身の内面の仕事をしていないリーダーによって監督されています。これが、今日の世界を支配している植民地 ・産業システムです。
すべての人に十分な食料を生産できる世界で 、多くの人が飢えているのは、恐ろしく、不必要な悲劇です。しかし、被害を受けたからといって、被害者であるというアイデンティティに固執したり、そのアイデンティティに縛られたりする必要はありません。
Many people have been victimised by socio-economic systems built around scarcity, a lack of compassion, systemic racism, and many other problems. And these systems are overseen by leaders without a deep understanding of what money is, leaders who have not done their own inner work. This is the colonial, industrial system that dominates the world today. In a world that can produce more than enough food for everyone, it is a horrific, unnecessary tragedy that so many people go hungry. Yet the fact that one has been victimised does not require one to become attached to an identity of being a victim or to allow oneself to be constrained by this identity.
Tom Nixon「Work with Source」p243 そのような環境下で、「創造的で目的意識を持った天職に就くことは自分には向いていない 」「まずお金が必要だ」「不安や罠にかかっていて、自分ではどうしようもない外部環境を変えなければ何もできない」「本当に創造的な 人生を送れるのは恵まれた環境に生まれた人だけだ」などと言うのは 、抑圧的な考え方を助長することになります。
To tell others in similar circumstances that following a creative, purposeful calling in life is not for them, that they need money first, that they are insecure or trapped and cannot do anything about this without a change to external circumstances beyond their control, or that a really creative life is only available to those born into privilege – to say all that is to reinforce an oppressive mindset.
Tom Nixon「Work with Source」p244 お金からは何も始まりません。ビジョンを追求するソース(Source)のエネルギーがあれば、イニチアティブを始めることができます。
また、活動を継続するためにお金が必要なわけでもありません。 クリエイティブな活動には、お金があってもなくても、ビジョンの実現に向けた次のステップが必ずあります。
会社という法人が倒産しても、ビジョンとエネルギーを持つソース(Soirce)がいる限り、創造的な試みは何らかの形で継続することができます。
NOTHING STARTS WITH MONEY A source with energy to pursue a vision is all that’s needed to start an initiative.[…]Money is also not essential for an initiative to continue.[…]The legal entity of a company can go bankrupt, yet while there’s a source with a vision and energy, the creative endeavour can always continue in some form.
Tom Nixon「Work with Source」p38 もしあなたが内面の旅を経て、お金に投影していた自分自身のエネルギーを取り戻せた時、これまで以上に自分のやりたいことに創造性を発揮していくことができることでしょう。
創造的な道は誰にでも存在しています。そして、執着や嫌悪感を乗り越えて自分らしさを取り戻すことのできる人間の創造的な可能性は無限です。この再生プロセスを使えば、どんな状況にあっても、自分の天職を生きることができますし、他の人にも自分の中に源を見てもらうことができます。より多くの人がこの作業を行うことで、私たちが生きているシステムを一緒に変えることができるのです。
A creative path is available to all. There will always be external constraints, and the playing field is far from level, yet the creative potential of a human who can rise above attachments and aversions in order to reclaim her identities is unlimited. Using the reclamation process, you too can allow yourself to live your own calling in life, no matter what your circumstances are, and encourage others to see the source in themselves too. As more of us do this work, we can together change the systems we live in.
Tom Nixon「Work with Source」p244 さらなる探求のための参考リンク 大きなアイディアを実現させる創造の源「ソース原理」とは何か Forbes Japan5月号に掲載された、『すべては1人から始まる(Work with Source)』著者のトム・ニクソンと山田裕嗣さんのソース原理(Source Principle)に関する対談です。
JUNKANグローバル探究コミュニティ JUNKANコミュニティは、『すべては1人から始まる(Work with Source)』著者のトム・ニクソン氏および、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』提唱者のピーター・カーニック氏とも継続的にコミュニケーションを行い、探求を深めてきました。 JUNKANコミュニティとは、メンバー全員がJUNKAN(循環畑・循環プランター・土中環境改善等)を日々の暮らしの中で実践し、身体にJUNKANの感覚を宿しながら、組織経営とマネーについても、探究実践していくコミュニティです。多様な分野で活躍する仲間達が集っています。
ソース・プリンシプル(ソース原理)とティール組織の「慎重な比較」 『JUNKANグローバル探究コミュニティ』発起人であり、『すべては1人から始まる(Work with Source)』著者のトム・ニクソン氏、Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)提唱者ピーター・カーニック氏、『ティール組織(Reinventing Organizations)』著者フレデリック・ラルー氏とも直接対話を重ねてきた吉原史郎 さん による記事です。
海外から国内へ入ってきたSource Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)、ティール組織(Reinventing Organizations)の探究を深めるためのご自身の姿勢について、そのための具体的な問い方についてまとめてくださっています。
”マネーワーク”4日間フルバージョンを受けた感想(ピーター・カーニック「ソース原理」の原点) 私にとって恩人であり、友人でもある土屋志帆 さんが、翻訳・監修の一人であり、ピーター・カーニック(Peter Koenig)氏とも対話を重ねてきた青野英明さん によるマネーワーク('moneywork') 」を体験された際の記録です。
『すべては1人から始まる』出版記念トークイベント動画 『Work with Source』邦訳出版イニシアティブでもある、令三社による出版記念イベントの様子です。著者であるトムによる、この本に込めた思いなども語ってくれています。
終わりに:探究の旅路を振り返り 今回の読書記録は、私にとってとても印象深いものになりました。
私自身の、『人の創造性が最大限発揮される組織づくり、場づくり 』の本格的な探求の始まりは2016年に遡ります。 2016年9月19日~23日に開催された『NEXT-STAGE WORLD: AN INTERNATIONAL GATHERING OF ORGANIZATION RE-INVENTORS 』。
ギリシャのロードス島で開催されたこの国際カンファレンスは、『Reinventing Organizations』というフレデリック・ラルー氏の提唱した新しい組織運営・経営に関する世界観・実践について世界中の実践者が集う場であり、いち早く日本人として参加していた嘉村賢州 、吉原史郎 による報告会が開催されたことが発端です。
そこから私自身も海外の実践者の皆さんとの出会いと対話を重ねながら、
その実践 や知見 について国内に紹介する 役割も担ってきました。
home's vi メンバーとフレデリック・ラルー氏途中、実家の田んぼを継ぐという大きな転機も訪れましたが、こうしてまとめを書き進めることで、『人の創造性が最大限発揮される組織づくり、場づくり 』に関する探求と、『自然、土地と人との関わりから眺める場づくり、社会づくり』 という視点を3年越しに統合することができたように感じています。
また、まとめ直すことでこれまでの旅路が、今現在探究を進めている『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』 にも繋がっていることを確信することができました。
今年、2022年2月からはありがたいご縁をいただき、『Work with Source(邦訳:すべては1人から始まる)』 著者であるトム・ニクソン氏(Tom Nixon) とも対話を重ねながら、『Source Principle(ソース・プリンシプル/ソース原理)』 の探求を仲間たちと始めています 。
これまでの学びと積み重ねを、次の世代に遺していきたい。
地元の神社の鎮守の杜が何百年も地域の人々の暮らしを見守ってきたように、何世代も大事にされるような叡智を少しでも多く、次の世代へ遺し、託していきたい。
それが、今の私の願いです。
ここまで、本当に長い文章にお付き合いいただき、ありがとうございます。 この、68,000字におよぶ記録を読んでくださった皆さんとは、ぜひ一度お話ししたいです。
読んでくださる中で何か感じられたもの、湧き上がってきたものを、ぜひお聴かせ頂ければ幸いです。
そして、いつか道が交わった時に旅路をご一緒できることを楽しみにしています🌱